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ディアというのは死の神様の名前だ。

この神は、嫌われ者の神様だった。いや、最初から嫌われていたという訳では無い。

ディアは、平等に死の価値を見定めていた。善か、悪かを正確に見定め、魂の輪廻の法則を守ってきた。


ディアは平等な神様だ。平等なゆえ、人々からも愛された。それが、いけなかったのかもしれない。


本来、遠くにあるべきはずの"死"が近づきすぎてしまった。それを、よく思わなかったのが神の創造主である、運命神だ。

運命神はディアに対する、人々の感情を操作し、ディアから人々を遠ざけた。


ここまでが、神話に伝わるお話。

私達が住んでいるレイラーナ王国は、運命神が創造したとされる神に守護されている国だ。

6の神に守護されており、公爵家と王族はそれぞれの神に、祝福を受けている。


四季の神 ユーリはレイラーナ王族に祝福を

大地の神 フムスはヴォイド公爵家に祝福を


海の神 シェナはイゼシノ公爵家に祝福を


空の神 アテノはヒューイ公爵家に祝福を


死の神 ディアはルーラ公爵家に祝福を


万物の神 ルアはフェリシト公爵家に祝福を


そして、運命神 ミュラテア


これらの神達によってこの国の基盤が出来上がったとされている。

神話においてディアに祝福を受けた、ルーラ公爵家が運命神のことを、複雑には思うのは当然だろう。

すると、ここまで黙っていたカリクスが口を開く。


「…フェリシト、お前は運命に抗えると思うか?」


まさかの言葉に拍子抜けする。どういう事だ、さっきまでは、私たちの婚約って運命みたいだね〜!って話をしてて、そして…この質問、嫌がらせ?


「そんなに私との婚約、嫌なの」

「……」

「無言になるな!無言に!」


その無言は、ほとんど肯定じゃないか。そんなに嫌なのか私との婚約。私も嫌だけど、直接言えよ!遠回しに言うな!余計煽りに聞こえるじゃん!


「そんなことどうでもいいから、質問に答えろ」


そう、怒り気味にカリクスが言う。怒るなんて理不尽とは思いつつ、質問を思い返す。

思い返してて思った。運命に抗えない人生なんてつまらないだろうな、と。結果的に抗えなくても、抗っている過程が全て悪いことでは無いはずだ。


「抗えると思う。」


私がそう返すと、カリクスが目を見開く。そして、声を上げて笑い出した。


「あははは、ははっ、そうだな。お前はそうだよな。」


今、笑う要素あったか?それと、目の前にいるの…誰だ?カリクスは私に、そんな顔しないだろ。そんな、愛おしいものを見るかのような顔は。やっぱり今日のカリクス、変だな。


「心配するな」

「ん?」


私がそう疑問に思っていたとき、カリクスがボソッと何かをつぶやく。あまりにも小さすぎて聞き取れなかったが、何かを呟いていた。


「今、なにか言った?」

「いや…何も言ってねぇけど」

「あっ戻った」

「何言ってんだ?」


いつものカリクスに戻ったな。さっきの表情は何だったんだ?絶対に私には向けないような表情は。

レノアも見ていただろうか、後で聞いてみよう。

ここで、カリクス本人に聞くのは流石に恥ずかしい。


「それじゃ、当初の話に戻るぞ。設定を考えなきゃいけない」

「分かった。どうする?」

「神話になぞらえるのが、一番だが…ディアとルアは正反対の神様だしな。」


この国で、神話は絶対的な存在だ。何をやるにしても、神話が関わってくる。だから、神話になぞらえば信憑性も高まるのだが、問題はディアとルアが正反対の神様というところにある。

死の神であるディアと万物の神であるルア、この双方は神話において絡みが少ない神様同士だ。


「俺とフェリシトの仲が悪いのは信憑性があるが、婚約となると…どう説明する…」

「うーん…」


黙ってしまった私達を見て、レノアが口を開く。


「恐れながら申し上げますが、設定を考える必要は無いのではありませんか?」

「「え?」」

「いくら設定を考えようと、態度がなっていなければ信憑性も薄まるでしょう。」


実際のところその通りだ。だけど、私達の場合、設定にある程度頼らないと相思相愛のふりは出来ない気がする。カリクスもそうだろうなと思い、カリクスの方を見ると、どうやら…違うらしい。


「一理、あるな」

「えぇ?」


そう一言呟くと、何かをブツブツと唱えはじめた。

態度を改めることできないでしょ。何が一理あるだよ!ないよ!今まで、散々仲が悪かったくせに、いきなり態度を改めるのは無理だろ。 


「フェリシト、来週空いてるか?」

「まあ、空いてるけど」


私が心の中で悪態をついていた時に、カリクスが聞いてくる。来週は、暇だからスレンでも呼んでお茶会にしようと思っていたところだ。そんなことを聞いてどうするんだ?と思っていると、爆弾発言をしてくる。


「それじゃ、来週出かけるぞ。」

「は?」

「レノアさんの言う通りだ。設定をつくるにしろ、態度を改めるにしろ、俺たちはお互いのことは知らない。興味も無かったしな。」


カリクスということには大いに納得する。お互いに興味がなかったから、知ろうとしてこなかった。これから先、婚約者として生活するなら、お互いのことは知らなければならない。それはそうだ。ただ、あのカリクスがこんなことを言ってくるなんて、成長…なのか?


「まずは、お互いを知るべきだ。話はそれからでも遅くはないだろう。休みは後、一月あるしな。」

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