ヤンキーくん異世界に転生する!
「ふん、異世界転生ね…」
「なんだよ、それ?」
「俺らの貯金箱くんがよんでる小説さ。ちらっと見えたんだ」
「おもしろいのか?」
「いや、なにがいいのか俺にはわからん」
異世界転生……。
現実世界でのダメ人間が異世界に転生し、スーパーパワーで大活躍!
その力に複数の女の子たちに言い寄られる…!
………ってのが、おもなストーリーらしい。
「気弱なオタクくんには、こうゆうのがウケるんだろ…」
「…でもよ? 俺たちが異世界にいったら…最強じゃね?」
「なんで?」
「だって、気弱なオタクくんが強くなるんだろ?現実で充分強い俺たちが転生したら…?」
「ははは、ちげぇねぇ」
俺は…世間でいうとこのクズだ。
カツアゲ、万引き、いじめ…気に入らないヤツを病院送り…
ひと通りの悪行はしてきた。…でも、なんか物足りない。満たされない。
「そうだな、なんかおもしれ―ことねーかなぁ…?」
時刻は夕方…。
「暗くなるのが早くなってきた。…俺んちで格ゲーでもするか!?」
「そうだな、行くか…」
重い腰を上げ、俺たちは歩き出す!
キキィィィィ!
「あ、おいあぶねぇぞ!」
「う、うわあああぁぁぁ!」
オレの背中から大きなトラックが……!
一瞬痛みを感じたが…そのあとは覚えていない。
「………ん? ここは」
「あら?気が付きましたか? ここは天界です。あなたは死にました」
美人な羽の生えたお姉ちゃんが説明してくれた。
「…おいおい。冗談だろ?」
「冗談じゃありません。現実です」
「あれだろ?オレは手ちがいで死んで、その代わりにスーパーパワーをもらえるんだろ?」
「生前の行いによりま」
「いよっしゃああああああぁ!」
オレは雄たけびを上げた。ねーちゃんは呆れていた。
「…って聴いてないですね。そんなに異世界に行きたいのですか…?」
「とうぜん。現実世界には飽き飽きしててさ」
「じゃあ、特別に願いをかなえてあげましょう…!」
「よっしゃああああぁぁぁ!」
これで…オレは異世界で成り上がってやる! やるぞぁ!
キモオタが成り上がれんだ。ちょっとがんばれば俺だってイケる!!
そうしてオレは金髪の女神さまに異世界に飛ばしてもらった。
「…ん? ここは…?」
オレは…異世界のスラム街にいた。においはひどく、周りにいるヤツらは
身なりも汚い。オマケに覇気がない…。
オレはというと…。
10歳くらいのガキで、体は骨と皮で思うように動かない…。
髪はボサボサ。体中にハエが寄ってくる。
「おいテメェ…な~に見てやがんだ?」
ひとりの男が寄ってくる。ガタイはかなりいい。
ドゴ! バキ! ゴッ………
オレはボコボコにされた。
「あ~スッキリした。ま、テメェが死んでもだれも悲しまねーよ!」
ハッハッハ…。男は笑いながら去っていった。
薄れゆく意識の中で…女神の声が聞こえた。
「言ったでしょ? 生前の行い次第だって…。バカね」