ぺし子のメタモルフォーゼ。
清潔習慣を強いられ、個性の剥奪によって(私にとっての)窮屈な体験することに。「こんなことする必要あるのかな?今までやらなくても生きていけたよね?」と過去の自由に思いを馳せたり葛藤したり。でも私は負けねぇ!この壁を越えて慣れりゃこっちのもんよ!!
私は日々の暮らしをするのに「お金」と「食べ物」と「寝床」これだけでいいと思っていた。しかし周囲の人から清潔感が足りないと教えられ、この前から着古した服を少しずつ新しくする事から始めた。
朝は起きてから窓を開け、埃っぽくてカビ臭いと姉が言う私の住む部屋に適当に買ってきた安い部屋用消臭剤を吹く。カビ臭の原因になる生ゴミも入っている大量のゴミ袋をアパートのゴミ袋回収ボックスに入れに行った。
空気が綺麗になるまで毎日やらないといけないと分かっていても、何故か悲しく泣きそうになった。
(カビ臭くても埃っぽくても私は大丈夫なんだけどなぁ。いやいや、やりたくない訳でもないしマトモになるまで頑張らなきゃ。でもなんで人と違う感覚になるように生まれてきたんだ…。苦しい…。ちっくしょう!)
「あ!新しい服着てるね!髪も綺麗になって…。凄いよ!偉い!あれ?……なんでこんな当たり前のことを褒めてるんだろ。歯磨きはちゃんとしてきた??」
彼氏が呆れてため息混じりに聞いてきた。
褒められても嬉しい気持ちにはなれず…。生きる全てを否定されたような気がしてならなかった。
「忘れた…。なんでやらんといけんの!?今までせんでも生きて来れたのに!すこし汚いほうが落ち着くよ!」
「さすがにそれは我儘すぎるよ。動物と一緒よ?ぺしちゃんはそれでいいの?今まではそれで良かったかもしれん。でも周りを見て!って、聞きょん!?」
マズい!!ほじった鼻くそを外に捨てる所を見られたか!!??
「うん聞きょーる!聞きょうるよ!!」「さっき鼻ほじってなかった??」「う……ん!…ほじったよ?でも聞いとったんよ!?」
……。
「話を聞く時はじっとしてよ?頼むから…。」
下を向いてる。見るからに落胆していた!
否定されたような気持ちと、周囲の人間への痛心と矛盾した感情が襲いかかる!
(クッソ!すぐ気を抜いてしまう!ていうかもう面倒くさくなってきた。清潔感?それってそんな大事なもんなんか?あーあー、普通には生きれないんだー。へえ……。神は何を考えてこの状況を作った!?分からねぇ!自分でも何言ってるか分からねぇ!けどみんなの為に……やらなきゃ!!逃げちゃダメなんだぁっっっ!)
────マジで苦痛。
習慣化の(若干慣れて来るととついでに美意識の向上も目標に設定された。)失敗を繰り返しながら2年が経った。
その日は会社を辞めてから久しぶりに「美」が口癖の先輩と外でたまたますれ違った。
「あ!お久しぶりです!お疲れ様です!」
「え?え、え!?どしたん!ちょちょ!ぺしちゃん!?いや幾ら何でも変わり過ぎじゃろ!メイクもしてる!髪、色抜いてるし!めっちゃええよ!絶対そっちの方がいい!お姉さんになったなぁ〜!」
それは、完璧とは言えない。
しかし、確実に!明確な!絶対的で!変わっていた。
先輩が褒めてくれて、最後にほんの少しだけ残っていた抵抗感が消えた。
(こんなに人の反応変わるんだ……。なんかどっちでもよくなってきたな。めっちゃ拘ってたのに。まあいいか。あの頃あれじゃないとダメだった理由も葛藤する内に分かったし。)
ぺし子は少しだけマトモになれた気がした。
こだわりが強いと自分でも苦労します(^_^;)人とぶつかるのは昔から苦手で妥協点を探せるような事は出来なくてね。受け入れるのは簡単じゃねえけど、人とぶつかって妥協点を探すよりはそっちを選ぶかなぁ。