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甘々短編集

チョロイン無双 〜何の力も持たないで異世界に来たけど、何故か皆さん優しいです〜

作者: 衣谷強
掲載日:2023/07/28

思い付き短編です。

……思い付きの割に長くない?と言ってはいけない。いいね?


異世界転生ですが、特にチートはありません。

ぶっちゃけ観光に近いです。

ほんわかお楽しみください。

 ……ここ、どこ?

 草原……?

 わ、良い天気……。

 周りは半分くらいが森。

 森のない方には、昔のヨーロッパみたいな街……。

 あー、私、旅行してたんだっけ?

 ……違うよね!?

 課長に仕事めっちゃ振られて、徹夜で残業してたよね!?

 で、一通り終わったところで眠くなって……。

 ……あ、夢かぁ。

 ここのところ休みらしい休みがなかったから、夢に見ちゃってるんだぁ。

 なら楽しんじゃお!


「ぐるる……」


 へ?

 何かの唸り声?

 ……ら、ライオン!?

 森からライオンが出てきた!?

 さ、さすが夢……!

 な、何でもありだぁ……!

 羽生えてるし!

 尻尾が蛇だし!


「ぐわぁおう!」


 きゃあ!

 夢でも怖い!


「『烈火の槍(イグニス・ハスタ)』!」

「ぐぎゃあ!」

「ひい!?」


 真っ赤な棘みたいなのが、ライオンを刺した!

 ら、ライオンが消えた……!?


「おい、大丈夫か?」


 わ!

 森から赤い髪のイケメンが!

 さすが私の夢!

 ご都合主義万歳!


「ありがとうございます! 助かりました!」

「まぁそりゃいいが、何で武器も持たねーでキマイラのいる森に近付いたんだ? 危ねーだろ」

「キマイラ……?」


 ゲームとかで出てくる、すごく強いモンスターだよね……?


「今俺が倒した奴だよ。戦う力がないなら」

「そんな強いモンスターを一発でやっつけるなんて! 凄いですね!」

「え? そ、そうか? この辺りではそんなに強くはないんだが……」

「じゃああなたが強いんですね!」

「え、あ、そ、そうか……?」


 すごいなぁ!

 一人でモンスターをやっつけちゃうなんて!


「あ! さっきのって魔法ですよね!?」

「あぁ、そうだが、烈火の槍(イグニス・ハスタ)なんて珍しくもないだろ?」

「そんな事ないです! 凄いです!」

「……そ、そうか……」


 あれ?

 横向いちゃった……。


「と、とにかく、街まで送ってやる」

「ありがとうございます! 安心です!」

「……変な女……。お前、名前は?」

炉院ろいん千代ちよです! あなたのお名前は?」

「……レド。レド・ルベライト……」

「えっと、レドさんって呼んでいいですか?」

「……好きに呼びな。しかし女でロインって珍しいな」

「あ、炉院は苗字です。千代が名前です」

「へぇ、名前と苗字が逆なのか。外国の生まれか?」

「まぁそんな感じです」

「……じゃあチヨって呼ぶな」

「はい!」


 こうして私は、レドさんと一緒に街に向かった。

 街の入り口に着くと、緑の髪の眼鏡のイケメンが!

 私達に気付くと本を閉じて、にっこり笑った。


「おや? レド。どうしたんだい? 狩りじゃなくてナンパをしに行ったのかい?」

「なっ……! ちげーよグリン! 草原でキマイラに襲われかけてたから助けたんだよ!」


 慌てるレドさんを、眼鏡の人は笑って流す。


「あはは。わかってるわかってる。レドは真面目だもんね。で、お嬢さんお名前は?」

「炉院千代です!」

「よろしくチヨさん。僕はグリン・ジャスパー。この街の門番をやってるんだ。グリンって呼んでね」

「あ、グリン。チヨが名前らしいぞ」


 レドさんの言葉に、グリンさんが青ざめた。


「ご、ごめん! 女性を許可もなく名前で呼んでしまった……! あの、馴れ馴れしくするつもりはなくて……!」

「いえ! 全然平気です! 気にしないでください! 何なら呼び捨てでもいいですよ!」

「……え? あ、ありがとう……。じゃあ僕も呼び捨てで呼んでほしいな」

「はい! よろしくグリン!」

「じゃあお近づきの印にこれ」


 ? 何だろう?

 石の板?


「その魔導板に話しかけると、僕の魔導板に文字として浮かび上がるんだ。何かあったらそれで知らせて」


 え、じゃあこれ、魔法のスマホって感じ!?


「凄い! ありがとうございます! でもこういうのって高いんじゃ……」

「いや、僕が自作したからね。大した事はないよ」


 スマホ作ったの!? 凄い!


「自分で作れるなんて凄いですね! 感動しました!」

「そ、そう……!? 大した事はないと思うけど……」

「いえいえ! 凄いですって!」

「……ははっ、ありがとう。じゃあ気軽に連絡してね。……きっとだよ」


 笑顔のグリンに見送られ、私は街に入った。


「……なぁチヨ。俺も……」

「? 何? レドさん」

「……何でもねーよ。それよりチヨはどこか行くあてあるのか?」

「うーん、ないです!」


 どうせ夢だし、適当なところで目を覚ますと思うから。


「じゃあこのまま真っ直ぐ行って、突き当たりの教会で俺の紹介で来たって言え。そうしたら司祭のブル・アウインって奴が上手い事やってくれるから」

「はい! ありがとうレドさん!」

「……ギルドに報告したら行くから、そこで待ってろよ」


 レドさんに言われた通り真っ直ぐ行くと、大きな教会があった。

 門で掃除をしている人に話しかける。

 青く長い髪で背の高いイケメン!


「あの、すみません!」

「はいはい。何かお困りですかな?」

「レドさんに、行くところがないならここに来るように言われたんですけど」

「そうですか。簡単な食事と寝床だけで、教会の仕事も少し手伝ってもらいますが、それでもよろしければご滞在ください」

「ありがとうございます!」

「私はここの司祭のブル・アウインと申します」

「私は炉院……、えっと、千代、炉院です!」

「チヨさんですね。よろしくお願いいたします」


 わぁ、落ち着いた大人の男の人って感じ……。

 最高の夢だけど、寝たらきっと覚めちゃうよね。

 せめてご飯食べるまでは夢のままがいいなぁ。


「ブル様!」

「おや、どうしました?」

「娘が熱を出して、苦しんでおります!」


 わ! 大変だ!

 男の人が抱っこしてる五歳くらいの女の子が、真っ赤な顔でふうふう言ってる!


「……神よ、あなたのお力で、この子を苦痛から救いたまえ。『治癒(サーノ)』」


 ブルさんの手が光った!

 あ! 女の子の顔色が良くなっていく!


「……おとうさん?」

「お、おぉ……! だ、大丈夫か!? どこも痛くないか!?」

「うん! もうあたまいたくないよ! くるしくないよ!」

「良かった……! 良かった……! ブル様! ありがとうございます!」

「良かったですね。でも今日一日は安静にしていてください」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「しさいさま、ありがとう!」


 うわぁ! 凄い凄い凄い!


「ブルさん! 凄いです! 病気を一瞬で治しちゃうなんて!」

「いや、これは神の恩寵です。私が凄いわけでは……」

「でも神様がブルさんに、神様の力を使っていいよって言ってくれたんですよね? それって凄いじゃないですか!」

「……! そう、でしょうか……。もし、そうだったら、私はもっと胸を張って……」


 あ、何か嬉しそう。

 病気の子を治して、お父さんから凄くお礼言われてたもんね。


「……ありがとうございますチヨさん。あなたが滞在する間、当教会のもてる最高のおもてなしを約束いたします」

「いえいえ! そんなのいいですよ! 普通のでお願いします!」

「いえ、それでは……」

「じゃあご飯美味しいのお願いします!」


 夢の中とはいえ、何でも良くしてもらっちゃうのは気が引ける。

 だから美味しいご飯くらいが丁度いい。

 うーん、私ってつくづく庶民だなぁ。


「では料理人に声をかけておきますね」

「ありがとうございます!」


 夢の中のご飯!

 期待しちゃう!

 きっとめっちゃ美味しいんだろうなぁ……!

 ……かぶりついた途端に覚めて、自分の腕噛んでたとかじゃないといいけど……。


「お! 君がブル様が最高のおもてなしをしろって言ったチヨさん?」

「え!? 違います!」


 金髪の男の子の言葉に、私は思わず否定する。

 あー、でも合ってる、のかな?


「いえ、その方であっていますよイエロ。君の腕を存分に振るってください」

「合点!」


 ブルさんの言葉に、イエロって呼ばれた男の子は建物に走って行った。


「な、何だかすみません……」

「いえ、彼は料理が大好きなので、思い切り腕を振るって良いと聞いて、喜んでいます」

「それなら良かったです……」

「それに私も……」

「え?」

「……いえ、何でもないです」


 何だろう?

 お手伝いがあるなら言ってほしいなぁ。


「チヨさーん! とりあえずお腹空いてると思うんで、間に合わせですけどどうぞー!」


 あ、イエロ君が呼んでる。

 うん、夢の中なのにお腹空いてきてる!

 よーし、目が覚める前に食べちゃおう!


「レドの兄貴が狩って来たロック鳥の肝を、香草で臭みを取って焼いたんだ!」


 ……つまり、鳥のレバー?

 苦手なんだけどな……。

 いや、夢の中でまで好き嫌い言ってても仕方ない!

 私は目の前に出された串にかぶりついた!


「ん〜〜〜!」

「ど、どう!?」

「めちゃくちゃ美味しい! 表面は歯ごたえがあるのに中は柔らかくて、濃厚な味なのに全然くどくない!」

「そ、そう……? そんなに言ってもらえるの嬉しいな……」

「天才だよ天才! 苦手だと思ってたのに、これまでの人生観がひっくり返ったよ!」

「え、えへへ、嬉しいな……!」


 あぁ幸せ!

 これは夢から覚めても絶対忘れない!


「ようチヨ。ちゃんと来たな。キマイラ討伐の報酬で、良い肉買って来たぞ!」

「あ、レドさん!」

「やぁチヨ。仕事上がったから、お菓子持って来ちゃったよ」

「グリン! ありがとう!」

「ではチヨさん。先にお風呂をどうぞ。さっぱりしたところで夕食にしましょう」

「ありがとうございます、ブルさん!」

「わ! レドの兄貴! 凄え奮発したな! よーし! 腕によりをかけるぜ!」

「楽しみにしてるね! イエロ君!」


 優しいイケメンに囲まれて、とっても優しくしてもらって、私乙女ゲームの主人公!?

 ならもっともっと楽しんじゃおう!


「……チヨ」

「チヨ!」

「チヨさん」

「チヨさーん!」


 ……これで本当は異世界転生で、全部夢じゃなくて現実だったらもう最高なんだけどなぁ……。

読了ありがとうございます。


ヒント:タグ


まぁブラックに戻るよりはきっと幸せ。

今後も異世界の素敵さに喜ぶ千代を、みんなで喜ばせようとわちゃわちゃする事でしょう。

そんな異世界転生があってもいい。それが自由だ(震え声)。


お楽しみいただけましたら幸いです。

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