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汚部屋さん

 あたしは出された座布団を持って部屋の隅っこに移動すると、そこで正座した。


 あたしの格好をじろじろと粘っこい目で眺め回すと、太めで黒縁メガネのおじさんは、にちゃっと音を立てながら口を開いた。


「で?」


 どうやらあたしがみかん箱に入って送り届けられて来た理由について聞いているようだ。


 あたしはタバコのヤニで汚れたオレンジ色のカーテンを見つめながら、説明した。


「あのですね。彼氏に自分をプレゼントしようと思って、宅急便で届けてもらおうと思ったら、住所を間違ってたらしくて。それで」


「ほど」

 おじさんは『なる』を省略してうなずいた。

「で、僕のところへ?」


「ごめんなさい。すぐ出て行きますから。たぶん彼の部屋、隣とかそんなだと思うし……」


「帰さないよ」


「ひぇっ?」 


「僕のところに送られて来たんだから、君はもう僕のものだ」


「いっ……、いえいえっ! 間違いですからっ! 正しい住所に送り直す必要があっ!」


「僕の名前は織部矢おべや

 おじさんはあたしの言葉は聞かずに自己紹介を始めた。

「君は?」


「み……、みぃ」

 老夫婦に名づけられた名前をあたしは口にした。


「みぃちゃんかあ」

 オベヤさんは興奮したように鼻を鳴らした。

「かわいいねぇ」


 ひゃあっ! と悲鳴を上げて、あたしが玄関に向かって駆け出すと、オベヤさんにタックルされた。ぬるっとした畳で足がすべって背中からどーん!と転ぶ。


「まあまあ。ゆっくりして行きなよ」

 オベヤさんはゆっくりした動きで紙コップをそのへんから取り出すと、畳の上に置いていたスポーツドリンクを注いでくれた。

「とり。寂しい僕の話相手になろう。義務」




 

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