暗室
「宅急便でぇ〜す」
着いた!
今度は間違いなく黒野くんの部屋だ!
再びあの苦難のローラーの上とトラックの荷台の中を乗り越えて、遂に到着だ!
空気穴から覗くと暗くてじめっとしたような、いかにも一人暮らしの男の人な感じの汚い部屋が見えた。
「まです」
『ご苦労さまです』の最後のほうだけしか聞こえなかったけど、聞き間違えようのない黒野くんの声だった。
「重いッスね〜、これ。60kgぐらいあります?」
またそれを言われた。前とは別のお兄さんただろうのに、それを言えと会社から指示されてでもいるのか!?
宅急便のお兄さんが出て行くと、あたしは待った。
すふー、すふー、と黒野くんの荒い鼻息が聞こえた。あれ? なんでだろう、なんか、怖い。
ばりりりりっ! と、お爺ちゃんが貼ってくれたガムテープが剥がされる音。
彼が開けるよりも早く、あたしはフタを頭で押し開けて、立ち上がった。
「呼ばれて飛び出て、ジャジャジャジャーン!」
みかん箱から飛び出した、ピンク色のリボンを全裸に巻きつけた、すっごい笑顔の女子高生の登場に、黒縁メガネをかけた40歳ぐらいの太めのおじさんが、腰を抜かしていた。
あれ……?
また住所間違えた……?