思わぬミス
夢を見た。
とても暗いところで、黒野くんが膝を抱えて、泣いていた。
いつも無愛想で、なんにも欲しがらない黒野くんが、何かをとても欲しがるように、泣いている。
「早苗ちゃん……」
膝の間に顔を埋めて、言った。
「俺、本当は寂しいんだ。君に会えなくて……」
とっても黒野くんらしくないと思った。別人かと思ったけど黒野くんだった。髪を撫でて、ぎゅっとしてあげた。
「早く俺のところに来てくれよ」
顔は上げずに、黒野くんが言った。
「早く、届いてくれよ、俺のところに」
はっとして目を覚ました。隣を見ると、黒野くんによく似た顔の女の人が、口をぱかーと開けて眠っていた。
空はまだ暗かった。
昨夜は結局お姉さんに食べられた。
「おはよう。納豆たまごご飯、食べる?」
目を開けるとお姉さんが笑っていた。
豆腐と油揚げのお味噌汁と一緒にそれを頂くと、お姉さんが言った。
「さて、ご飯が済んだらリボンを巻いてあげよう」
あたしが元々巻いていた幅の太いリボンよりも随分細かった。まるで広いところのひとつもない紐水着だ。
「こ、これはさすがに……」
「よし、じゃあパンツだけ穿きな」
お姉さんのピンクの紐パンを貸してもらった。
「可愛いちくびは出しとこうか」
ふざけてお姉さんがちくびをリボンの隙間から出して巻こうとしたので、止めた。
「ち、ちくびの上を通して!」
あははっとお姉さんの明るい声が響いた。
段ボール箱は新しいのもあったけど、ずっと入っていたみかん箱が身体にしっくりきてたので、引き続きそれに入った。ボロボロだったけど、まるで自分の分身のようだ。
「じゃ、宅急便に取りに来てもらうね?」
そこまで準備して、お姉さんがそう言ってから、あたしはようやく気づいた。
あれ?
今まで確か……
荷物を出して、届いたのは……
次の日だった。
……。
春休み、今日までなんですけど!?




