お姉さんに食べられるっ!
「ひゃあっ!?」
耳に吐息を吹き込まれ、ぞくぞくして、あたしは思わずのけぞってしまった。
「あたし……。女の子が好きなの」
お姉さんの告白がヤバい。
「早苗ちゃん、可愛い……♡」
「だめっ! だめですっ!」
あたしは一生懸命、目をぎゅっと瞑って抵抗した。
「あたしの初めては、黒野くんに……っ!」
ケラケラケラと笑い声が聞こえた。
目を開けて見ると、お姉さんが『ドッキリ大成功』の札を持って笑っている。
「聞かせて? オサムのどんなとこが好きなの?」
オレンジ色の豆電球の下で、あたしとミサキさんは同じベッドの中、向かい合ってお喋りした。
「黒野くんて、すっっごく無愛想だけど、誰も見てないところではすっっっごく! 優しいんですよ〜」
「素直じゃないからね〜、アイツは。昔っから」
「デートの時、一人でスタスタ前を歩いて行くから、寂しくなって、わざとコケるふりしたら、サッと手を繋いでくれて……」
「やるね〜、オサム!」
「その後、サッとまた手を離して……」
「離すなよ、オサム!」
「とにかくあたし……、黒野くんのことが……大好きなんです。でも……」
「ん?」
「プレゼント……、黒野くん、喜んでくれるかな……。迷惑がれたり、変態だって思われて、嫌われたりしたらどうしよう……」
ミサキさんが頭をナデナデしてくれた。そして、言ってくれた。
「オサム絶対喜ぶよ。だって、こんなに可愛いプレゼント他にないもん」
「あ、ありがと……」
「それにさー、ここまで3軒だっけ? 知らない人のところに届けられて来たんでしょ?」
「はい」
「その人達さー、もしかして、喜んでなかった?」
「え……」
思い出してみた。みんな最初はさすがにびっくりしてたけど、別れる時にはみんな笑顔だった。
お爺ちゃんとお婆ちゃんはすごく楽しそうに笑ってくれて、別れる時には孫娘を見送るようにしてくれた。
オベヤさんは好きなものをあたしに見てもらって喜んでた。あたしのために頑張ってくれて、最後には仲良しになった。
サンジさんは怖かったけど、あたしのお陰で小説家生命が伸びたと言ってくれ、喜びの対価として30万円をくれた。
「早苗ちゃんはみんなが喜ぶプレゼントなんだよ」
ミサキさんがほっぺにキスしてきた。
「寂しいところにいきなり、こんな可愛いプレゼント届いて、喜ばない人はいないって!」
「そ、そうかな……」
あたしは目をキョドキョド動かした。
「黒野くんも、喜んでくれるのかな……」
「絶対! 喜ぶ! あたしが保証する!」
そう言うと、お姉さんはあたしの耳たぶに噛みついてきた。
「あー、もー! 可愛すぎて食べちゃいたい!♡」
「みっ……、ミサキさん……! はあんっ!♡」
「オサムと結婚しろ! あたしの妹になってくれ!」
「ああっ! ら、らめえっ……!」




