お姉さんといっしょ
「山田早苗ちゃんかあ……。クラシカルでいい名前!」
地味とはよく言われるが、クラシカルと言われたのは初めてだった。
シャワーの音が響くバスルームで、あたしとお姉さんは素っ裸で触れ合った。
「お、お仕事休んじゃってもよかったんですか?」
「あー、大丈夫、大丈夫」
お姉さんがすっごい笑顔で頭を洗ってくれる。
「代わり、いくらでもいるから」
胸がとてもデカいお姉さんだった。いちいち背中にそれが触れて来て、同性どうしなのに顔が赤くなってしまう。
何の仕事をしているかは聞かなかったし、お姉さんも言わなかった。なんとなくだけど、聞いたら答えにくいお仕事のような気がして。
「ねー、今夜は泊まりなよ」
お風呂を上がり、あたしの髪を乾かしてくれながら、お姉さんが言う。
「春休み、明日まであるんでしょ?」
そうだ。
春休みは明日まで。
明日黒野くんに会えなければ、計画は中途挫折で終わってしまう。
でも、お姉さんなんだから、大丈夫だよね? 間違いなく、明日には黒野くんのところにあたし、届くんだよね?
「あたし、ルームシェアしてるんだよね」
お姉さんが言った。
「いつもは貝原サオリちゃんって子と2人暮らしなんだけど、彼女が今、実家に帰っててさー、寂しかったんだ」
「ああー」
なるほど、と思った。お父さんが節約のために一緒のアパートに住めとか言いそうなのに、なんで姉弟で離れて暮らしてるんだろうと思ってたら、そういうことか。
「一緒にごはん食べて、一緒に寝て?」
お姉さんは人懐っこい。弟とえらい違いだ。
「そんで一緒にオサムの話しましょ?」
お姉さんも黒野くんのことが大好きなのかな? それともあたしの口から弟に対する想いを聞いて面白がりたいだけ?
あたしは、こくんとうなずいた。
「わーい」
スキンシップの積極的なひとだ。抱きつかれちゃった。
「そういえばまだ名前言ってなかったね。あたしはオサムのお姉ちゃんで、黒野ミサキ。よろしくね、早苗ちゃん!」




