お姉さん
段ボールを開けて、出て来たあたしを見た途端、お姉さんは悲鳴を上げた。
「ひいっ!?」
「ごめんなさい」
あたしはショボンとしながら謝った。
「送り先をまた間違えました」
「な、ななな……なんなの、あなた!?」
二十歳ぐらいの綺麗なお姉さんだった。仕事に行く前だったのか、ばっちり化粧して、ベージュの春コートに身を包んでいた。
あたしはぺこりと謝った。
「出て行きますので……お構いなく」
「ちょ……、ちょっと待ちなさいよ。そんな格好で外に出るつもり?」
仰る通りだった。全裸にピンクのリボンを巻いただけのこの姿で外に出るのはとても恥ずかしい。でも、ここにいるのも同じぐらい恥ずかしかった。
「えっと……。じゃあ、黒いゴミ袋とかあったら、貸していただけますか」
あたしは遠慮がちにそう言った。
「話してみて?」
お姉さんのつけまつ毛で飾られた目が、好奇心たっぷりにあたしを見つめる。
「どういうこと? なんであなたが宅急便の中に入ってたの?」
仕事前っぽいので迷惑にならないよう、あたしは手短に話した。彼氏に自分をプレゼントしようと思って宅急便の荷物となり、旅をして来たこと。何度も違う住所に送られてしまい、色んな優しい人と会って来たこと。
「なるほどね」
お姉さんは同情してくれた。
「それで? あなたの彼氏、名前は?」
「……黒野オサムくんです」
「ああ!」
お姉さんがぽん!と手を叩いた。
「それ、あたしの弟!」




