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確かに黒野さん宅に届けられる

「覚えておけ、嬢ちゃん。良いものにはそれに見合った値段がつくものなんだ」


 あたしを段ボールに入れてくれながら、サンジさんは言った。


「それが現代では価格競争でどんどん良いものの値段が下がっている。だが、俺は良いものにはそれ相応の銭を払う」


 ガムテープで封をしてくれる音と、サンジさんの声が同時に聞こえた。


「嬢ちゃんは俺の作家生命を20年伸ばしてくれた。30万でも安いもんさ。ありがとな」


「ありがとう、サンジさん」

 あたしは段ボールの中から言った。

「今度サンジさんの小説、読んでみるね」


「おう。死ぬまで小説書き続けるからな」






 サンジさんは黒野くんの住所に心当たりがあると言ってた。その住所にあたしは送られた。


 ローラーの上を転がされるのはもう何回目になるだろう。トラックの荷台に投げ込まれるのはこれで何回目だろう。







「黒野さーん、お荷物届けに来ましたー」

 宅急便のお兄さんがあたしの入った段ボール箱を抱えて言った。


「はーい」とインターフォンから声がした途端、あたしは箱の中で溜め息をついた。


「ご苦労さま」

「これ重いッスねー。60kgぐらいあります?」

「サインしまーす。ここね?」

「ありやとやっしたー!」


 宅急便のお兄さんが帰って行き、あたしは暖房の程よく効いた部屋の空気を感じた。


 箱の取っ手の穴から覗く。間違いない、この部屋は──


「誰からかなぁ? えー? 聞いたことない差出人だなぁ?」


 その声と、穴から見えた景色で、あたしは確信した。いや、確信するまでもなかった。


 女性の声で、女性の部屋だった。


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