第三章 ミノリとショウとJ州 9
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「どういうつもりだ!」ミノリは対連合政府作戦室へと跳んだ。数で圧倒してきているのは間違いないが、いまだに砲撃をしてこないのである。
「ミノリ君、すまない! なんなんだ、この数は!」やはり作戦室にきたタツトがいった。
「降伏をうながしているのでしょうか?」
「私がミュートの数について、いいかげんなことをいったせいです! 陛下の御前で! 私は陛下に嘘をついてしまった!」トモロウが頭をかかえながら、走りでていった。
「木川田さん! あなたのせいじゃない!」声をかけるミノリをとめるタツト。
「ほっとけ。それよりどんどんふえているぞ、政府はどこから、どうやってこれだけのエムを集めたんだ!」
「これは勝てないよ……」
「なぶり殺しだ。公開処刑だ!」
憶測が飛びかう。作戦室は混乱をきわめていた。そんな中、跳んで現れたコリン。
「ミノリ! スクランブルをかけた! 精神感応部隊と観念動力部隊は配置についた! いつでも攻撃できるぞ!」
「待って! コリンさん、様子を見ましょう」コリンを制するミノリ。この数を相手にすれば全滅はまぬがれない。降伏を迫ってくれたら、それに乗るしかない状況である。
「これがヒマリさんが予知した風景か……」ショウとともにかけつけたシュンがいった。
「ミノリ、子供や丁種の避難をすすめている! いつもの地下シェルターだ、いいよな?」
「ありがとう、ショウ」
「丁種武装部隊も配備をおえたぞ」シュンの言葉に青くなるミノリ。
「シュンさん、間違っても発砲させないでください! 絶対だ!」
「わかった! ミノリ首長の命令を待つ! 死ぬなよ、ショウ!」シュンはミノリとショウの肩をたたいて、室内からでていった。
「作戦もクソもなくなったな……今、ざっと数えたがロボット、ドローンあわせて五万機はいるぜ……なんだか、やる気になってきた」カンゴは嬉しそうに体をうかせている。
「カンゴさん、瞬間移動できない人を大量搬送する係りをお願いします」
「ミノリ君、俺は人助けより、人殺しの方が性にあうタイプ──」
「お願いします!」
「どうするかな。ところで、ミカドは大丈夫か?」
「ジョーイたちが守ってるよ」コリンがカンゴをにらむ。「カンゴ、たのむからミノリの命令を守ってくれ」
「命令ね……へいへい、いったんは承知したよ、首長」カンゴは音もなく消えた。
「ヒマリさんもいないし、カンゴなしでは大きな戦力減だぞ」コリンがいう。
「はい、でも人命が優先です……タツトさん、どうですか?」
「わからない。パイロットのエムは完全に洗脳されていて、思考も感情もないんだ」
「ボクも読めません。戦う気があるのか、ないのか!」
「まずいな。連中が動きはじめないと、精神感応部隊が攻撃できない!」
「──もうエムでも人でもないってことだ。やっぱり使いすての実験動物か、くそ!」吐きすてるようにうなるショウ。「ミノリ、敵が動かない以上、もう住民の搬送をはじめた方がいいんじゃないか?」
「ヘタに動いたら、かっこうの的になる! やつらも瞬間移動するんだぞ! 千里眼使いがいたらどうする! バレバレだぞ!」どなるコリン。
「コリン、だけどこれ、地獄だよ!」
「わかってる! だが、あんたは首長のカミさんだろ! どっしりとかまえとけ! ヒマリさんみたくよ!」
「わかったよ!」ショウはどっかりとイスに腰をおとした。
空を埋めつくした戦闘ドローンのサーチライトが街を照らし、昼間のようにあかるい。じりじりとひりつくようなにらみあいは一時間をすぎようとしていた。市街のそこかしこで待機するエム部隊、そしてシュンが指揮をとる丁種の武装部隊。誰もがかたずをのんで、ミノリの攻撃命令を待っている。そして、ミノリの住む屋敷の地下室に続々と退避していく人々。入りきれない者は爆撃をものともしないといわれる厚さ九十cmの鉄筋コンクリートに守られた、もとU州駐屯基地の地下格納庫へと誘導されていった。その場に身をおいていたミカドが、避難民の受けいれ場所として解放することを要請したからである。逃げこんできた多くの者が、ジョーイらエムにガードされているミカドの存在に希望を見いだしていたに違いない。
そのときであった。ミノリらの作戦室の照明、市街地のあかりが突然、消えたりついたりと点滅をはじめ、そして──。
「なんだ、あれは!」叫ぶミノリ!
「あの、バカ!」タツトが悲鳴をあげた!
都市部から少しはなれた原野の中からウォータジェットを思わせる水流のような一筋の光が、恐ろしく早い速度で上空へと伸びあがっていく。そしてホバリングしていた戦闘ドローンの真っ只中に跳びこみ、一度に数百機が大爆発をおこした! さらには、この輝きが磁場に影響をもたらしたのか、やはり百機近いK109がバタバタと倒れる!
「タツトさん! 今のは!」
「トモロウだ! 荷電粒子砲だ! あいつ撃ちやがった!」頭をかかえて、その場にくずれるタツト。
「荷電……でもタツトさん、電気は? どこから電気をもってきたんです?」
「二十一世紀に廃棄された太陽光発電衛星からだ。トモロウは衛星軌道に残っていたのをコロニー時代に見つけていたんだよ……」
「でも勝てるんじゃないか? これがあれば!」ショウがタツトを引きおこす。
「そうだ! ミノリ! 一気にいくか!」バチンと手のひらと、こぶしをたたきつけるコリン。
「バカいうな! 一発撃ったら充電に二時間はかかるんだよ! こんなの敵をただ怒らせただけだ! あのバカ野郎が、緊張感にたえられなかったのかよ!」タツトは悲痛な声で泣きくるう。
「…………」言葉をうしなう作戦室の面々。タツトは自身の監督ふゆきとどきを責め、くやしさに悶絶していた。
ややあって、どこからともなく声明が流れはじめた。その声はU州語だけでなく、J州語やG州語など、世界各州の言葉が同時通訳されて聞こえてきた。どうやら中継ドローンを通じて、全世界へとアナウンスされているらしい。
『全世界の州民のみなさま、こんにちは。私は連合政府最高議長マクガファン・スナイダーであります。こたびのJ州における、悪らつなるミュートと結託した暴動、反政府活動、暴虐に深く憂慮しておりました。しかるに本日、話しあいの場をもうけるためにJ州の王であるミカドのおわす本拠地まで足を運びましたが、結果は見ての通りです。ミカドは宣戦を布告することもなく、卑怯にも突然、連合警察へと攻撃をくわえてきたのです! この反逆行為は三十六年前、世界中にPEウィルスをばらまいたあげく、その機に乗じて他州の侵略をはじめたC州に匹敵するものと私は考えます。みなさまご存じの通り、C州はわれわれ連合政府の手によって粛清され、地図上からその名は消えさりました。私はここに宣言いたします。世界の平和を維持していくために、ミュートと共謀し反旗をひるがえしたJ州と悪逆なるミカドを遺憾ながら、葬りさりますことを! 全機、攻撃準備!』
最高議長の指令をうけ、マシンガンアームをいっせいにかまえる無数のロボット警官、そして戦闘ドローン。
「どっちが卑怯なんだよ! どうする? ミノリ!」壁をなぐるコリン!
「…………」決断を迫られるミノリ! 戦うのか、逃げるのか。
『J州にむけて、攻撃──うっ、いぁああ!』
どうしたわけか、急に苦しむような声をあげるマクガファン・スナイダー最高議長。
『ブブブブ……ガガガガガ……議長! 最高議……ザザザザ』
突如として乱れる世界配信、中継の音声。同時通訳も意味をなさず、混乱しか伝わってこない。
「どうしたんだ? なんだよ、どうなった!」われを忘れて悲鳴をあげるショウ。
「ヒマリさんだ……」つぶやくミノリ。
「え?」硬直したようにミノリに視線をむける男女、作戦室の者たち。
「ヒマリさんが攻撃命令をとめたんだ! 最高議長の居どころをつきとめたんだ!」ミノリがほえると、顔をあげたタツトもほえた!
「だとしたら望みはあるぞ! ヒマリさんなら『アガサ』の所在地をスナイダーの脳から読みとれる!」
「そうだ! 『アガサ』をつぶせば、機械どもはまともに動けなくなるぞ!」こぶしを突きあげるショウ!
「ミノリ君!」「首長!」「ミノリ!」その場の全員が彼のこたえをもとめた!
「──戦うぞ!」
ミノリはJ連邦国、総員に号令をはなった!
(つづく)
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『ゴースト・キス ~死人しびとの口吸い~ (改)』
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『ときに、たまにはショート・ストーリーなどを』
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