第一章 ミノとアズ 6
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この数週間、ミノリは行動や発言に細心の注意をはらいつつ日常業務を粛々と
こなしつづけた。一時は彼に疑念を抱いていたらしいリーダー、山中タマミをはじめとする調整部の面々も、八月になるころには疑いもったことすら忘れたようであった。集中力を要する実務の過酷さがさいわいしたらしい。少しでも気をぬけば給金が減額されるのだから無理もないことだろう。小堺リョウジなどは区営中央公園内で開催される夏祭りに、稲地アヤメを誘うついでにミノリにまで声をかけてきたほどである。
「次の日曜、小久保もいこうぜ。若手調整部員の親睦を深める意味でさ」
「小堺さんとアヤメさんのおじゃまではないかと」最近、リョウジはアヤメにアプローチをかけはじめたようだ。ポトコン活動がうまくいかなくて、手近な女性にターゲットをしぼったのかもしれない。
「小久保さん、なにをいってるんですか!? そんなんじゃありませんから!」即座に否定するアヤメ。
「アヤメちゃん、なにもそんないい方しなくてもさ」リョウジは少しムッとしたような表情をする。「どうしてくれるんだ? 小久保」
「はあ?」目をまるくするミノリ。「ボクは人ごみが苦手で──」
『ミノ、あまりかたくなですと、いらぬ誤解が再浮上する恐れがありますよ』アズが素早く耳の奥でささやいた。
「それ何度も聞いた! いいからこいよ。小久保、上司命令だからな」
「はあ……」正確にいえばリョウジは上司ではなく先輩なだけであるが、結局ミノリも夏祭りに参加することとなった。
J州では近年、殺人や政府転覆テロのような重大事件はおきていない。ミュートによる小規模な食料の略奪、殺処分寸前のミュート奪還襲撃などがたまにあるていどである。そして、たいていの場合、ロボット警官K109と攻撃ドローンが急行し、大事にいたる前に封じこめることができた。一般州民のおこす事件はといえば若者による交通事故と性犯罪がこれまで大多数を占めていたが、警備と罰則、運転免許証習得時の精神鑑定の強化、そしてクルワと名づけられた州営風俗店の解禁で、これらも減少の一途をたどっている。これはJ州が元来、温厚な農耕民族であることや、基本的に勤勉でマナーがいいこと、宗教観が希薄なこと、横ならび意識や協調性が高いことなどが原因ではないかという自説を唱える学者もいる。この気質がJ州のミュートの中にも脈々と受け継がれているのではないかと彼はいうのだが、むろんこの説を連合政府は一蹴した。二千年以上にわたる歴史と帝室、ミカドを冠するJ州人民の性格傾向と、新興異分子であるミュートとの関連は極めて低
く、根本的に別物だからである。しかしU州クーデター未遂事件をはじめとして、B州思念波爆発テロ、F州議会破砕テロなど、はぐれミュート集団による事件が頻繁に発生している海外他州とくらべればJ州の治安は比較的、安定していて、世界一安全な州であるといわれはじめていることも事実である。昨年度などは連合政府議会から第一回目にあたる平和表彰盾まで授与されたほどだ。世界各州ではいまだに大規模なイベントや集会の開催は禁じられているのであるが、この治安維持への取りくみ実績が認められ、特例としてJ州三区画での夏祭り開催が一日限
定、二時間の枠組みの中で許可された。ある意味、東方の小さな州が復興事業の実験場として最適だったせいかもしれない。
夏祭り当日、クサナギ区営中央公園、午後五時五十分。この日に限り、早引けを許可されたリョウジ、ミノリ、アヤメの三人は一度、帰宅したあと、おのおの着がえをすませたのち、乗車率一四〇パーセントとも思える満員電車にゆられ、人、人、人であふれかえる夏祭り会場へとひいひいいいながらやってきた。こうした大規模イベントは何十年かぶりのことである。中央公園内はクサナギ区民全員が集合したかのような熱気につつまれていた。若い三人は画像でしか見たことのない焼きそばやリンゴ飴、セルロイドのお面、水風船がならんだ屋台がところせましと軒を連ねている。とはいっても、昔なつかしい屋台風につくられたサードアイ用センサーを備えたプラスチックボックスなのであるが。はるか遠くに見えている野外ステージでは本日の目玉、ロックライブがおこなわれる予定である。どのバンドも通常はネットでの配信ばかりだったので、人前での演奏は初めてのことらしい。特別ゲストとしてB州からも有名女性歌手が登壇する。客前でどうしても歌ってみたいとの本人たっての願いで実現したのだそうだ。十数基ある巨大光学ディスプレイには、ヤタ区画、ヤサカニ区画の様子が投影されていた。どの区画も同じくごった返しているようだ。これはまさにJ州あげてのお祭りさわぎなのである。そしてこの特例イベントはもちろん世界全州にライブ配信されている。当然、警備も厳重で上空には無数のドローンが飛びまわり、大量のK109と連合警察官が配備されていた。
「こりゃあ予想以上に集まったな。アヤメちゃん、はぐれんなよ」人波に押されるように歩きつつリョウジがいった。
「はい。こんなの着てくるんじゃなかったわ、歩きにくい!」アヤメはかわいらしい金魚の柄の浴衣に硬質ウレタン製のゲタばきといういでたちであったが、もうすでに着くずれしはじめている。
「アヤメちゃん、すごく似合ってるけど、よく浴衣なんて持ってたね?」周囲にも着ている人がちらほらとはいるが一番街か二番街、いわゆる高級住宅地に住んでいる州民に違いない。和装は需要が少ないため大量生産されていない。いわゆる贅沢品の部類にあたるのである。
「J州の祭りは昔から浴衣に決まってるって、お父さんが無理して手に入れてくれたんです。だから断れなくて」
「いいお父さんだね」人ごみぎらいを公言しているミノリが、目を白黒させながらいう。彼は予防接種のとき以外で、これほど人が集まるのを見るのは初めてのことであった。
「昔かたぎの堅物ですけど」そうこたえて笑うアヤメ。
「お父さん、怖いの?」顔色をくもらせるリョウジ。
「超怖いですよ」
「あ、そう……」リョウジは早くも結婚の挨拶のことを考えていたのかもしれない。どうにも先ばしりすぎである。
そうこうしているうちに夏祭り開催時刻の午後六時となった。まだ、日は高いのであるが、ドーム天蓋の一部が暗くなり、ドーンという大きな音とともに花火が盛大に打ちあげられた。むろん本物ではないことは誰もがわかっているが、それでも人々は歓喜の声をあげている。光学ディスプレイのすべてに連合政府最高議長であるU州人、マクガファン・スナイダーの姿がうつる。彼はカタコトのJ州語でサマーフェスティバル開催の祝辞を述べた。そしてJ州以外の州民に対しては、ミュート犯罪の減少が見込まれればこうしたイベントはどの州でも開催できる、長らく中止されているオリンピックですら夢ではないと語り、ミュート撲滅こそ全人類の英知を結集するべき悲願であると力強くうったえた。さらにはJ州総督、坂東トウジがスナイダー最高議長への答辞と短い挨拶をおこなった。するとここで、J州歌がおごそかに流れ、州旗の掲揚があり、なんとJ州民の精神的根幹といわれているミカドの姿がうつしだされた。かの方は海外ではJ州シンボル・エンペラーと呼ばれている。そしてミカドは大祭の開催を心より喜んでおりますと述べられ、全州民に対しやわらかな微笑みをおくられた。このサプライズに観客たちの中からバンザイ、バンザイと声があがり、やがてうねりとなって、大合唱となった。これは三区画すべてでおこった他州の者から見れば数奇な現象であった。反ミカドを主張する者も中には相当数いたはずであるが、大多数のJ州民はミカドに敬意の念をいだいているのであろう。熱狂する観衆の中にあって、やはりバンザイをとなえていたミノリの耳の奥でアズがささやく。
『J州は独特ですね。ほかの州では見られない光景です』
「そうか? B州にも王室はあるじゃないか」小声で返事をかえすミノリ。
『それはそうですが、J州における現実的なミカドの存在意義を理解できないのです』
「いてくださるだけでありがたいお方なんだよ。J州人の背骨みたいな方なんだ」
『彼は神なのですか?』
「違うよ。でもJ州と世界の平和を代々、二千年以上も神に祈りつづけてくださってる方なんだそうだ。そんなに長くひとつの王朝が存続した州はほかにないだろ? ほかの州の人には理解できないと思うよ」
『そのような記述は教科書にもなかったはずです。私のデータにもありません』
「ひろってきた本で読んだんだ。もういいだろ? アズ」
『やはり理解しかねます』
「しつこいなアズ。ボクは思うんだ、J州があるかぎり、世界がおわらないってさ」
『なぜでしょう?』
「J州には王として君臨してはいない、象徴として存在しているミカドがいる。どんなときでも、ボクらや世界のしあわせを祈ってくださる存在がこのJ州にいるんだ。だから夏祭りも開けたんじゃないか」
『なるほど。メモリーにきざんでおきます』
「うん、そうしておいて。本当いうと、ボクもよくわかってないんだ。アズがきちんと解明してよ」
『了解です』
「いつかまた、ミカドの件はゆっくり話そう」アズとのひそひそ話を打ちきったミノリは、大画面の光学ディスプレイにむかって一礼した。
こうして超能力者削除法施行後、世界初となる夏の大イベントがはじまったのである。簡単なやぐらが組まれたステージで盆踊りに興じる者もいれば、すさまじい大音量のロックライブにノリノリの者もいる。そうかと思えばお笑い芸人がコントを披露していたりもする。さまざまな音が交錯しているのであるが、これはバングルフォンの補聴機能によって調整が可能だ。音声の取捨選択があるていどの範囲でならば可能なのである。ミノリたちはあちらこちらの屋台を冷やかしつつ買い食いを楽しんでいたが、リョウジがトイレにいきたいといいだした。当然といえば当然
の話であるが、各所に設置されている簡易トイレには長蛇の列ができている。とくに女性用などはへたをすると一時間待ちになりかねない勢いである。
「あ、ボク、駅ですませてきたので」ミノリがいった。
「私もです」アヤメもこたえる。「小堺さん、どうぞいってきてください。待ってますから」
「なんだよ小久保、男は連れションて昔から決まってるじゃないか!」リョウジはミノリにそういってから「アヤメちゃん、悪いね。待っててね」と手をあわせて、走っていった。
「小堺さん、要領悪いですね。あんなに合成ビールを飲んで、トイレが近くなるのも当然ですけど」どうやらアヤメのリョウジに対する評価はだださがりのようだ。
「まあ、たまの祭りだから」焼きトウモロコシをかじりながら笑うミノリ。
「それに私は女同士の方が連れ……連れだって、おトイレにいくもんだと思ってます」
「へえ、そうなの?」
「たぶんですけど」
「ふうん」
ここでふたりの会話が途ぎれた。これまで三人の輪の中心にいた男がいなくなったせいであろう。気まずい沈黙が流れる。ミノリはアズに助けをこいたくなった。
「あの、小久保さん……」先にアヤメが切りだしてくれた。
「はい」
「この間は、ごめんなさい」そういってミノリに頭をさげるアヤメ。
「なにが?」
「えーと、誰にもいわないでくださいね」ここで声をひそめるアヤメ。
「うん」
「あれからよく考えたんですけど、いくら、その、あの人たちだからって、殺されるのを見ながら平気でお昼ご飯を食べられるのって、おかしいですよね」
「え?」周囲に目をくばるミノリ。補聴機能がそこかしこで使用されているのだ、どこで誰に聞かれているかわからないのである。「いいんだ、アヤメさん、あれは忘れて」
「でも、どうしてもいいたくて。私、感覚がどうかなっちゃってるのかもしれません」
「そんなことないよ」アズの言葉をかりれば、政府の反ミュート政策の教育成果にすぎない。
「私、自分が怖くなっちゃって。小久保さん、あのとき私のこと醜いって思いませんでした?」
「思ってないよ」
「本当ですか?」
「もちろん」
「よかった……」心底ほっとしたように両手を組みあわせて、ため息をもらすアヤメ。
「アヤメさん、とてもきれいだと思うよ」ミノリは心が美しいというつもりでいったのであるが、アヤメはかあっと頬を染めてうつむいた。「あれ? アヤメさん?」
「じ、じゃあ小久保さん……」もじもじと組みあわせた手をこねくりまわすアヤメ。
「うん」
「今度、デートに誘ってくださいよ」
「──はぁ!?」
「待ってますから……」照れたように笑顔を見せるアヤメ。
「あ、いやぁ、でも、浴衣をプレゼントしてくれたアヤメさんのお父さん、ボクも怖いから」
「えへへ、あれは、小堺さん用のこたえです」
「へ?」
「私のお父さん、本当はとっても気さくでやさしい人なんですよ。昔かたぎなのは本当ですけど」
『やはりミノの直感は正しかったのですね。稲地アヤメの心は渦がまわっていました』いきなりアズがささやいたが、ミノリは無視した。
「だけど……」ではお父さんはいいとして、今の会話をバングルフォンでリョウジに聞かれていたら大惨事になりかねない。以前とは違った意味で工場にいられなくなる!
──そのとき、近くに設置されていたダストボックスが火を噴いた! 爆発したのだ!
「アヤメさん!」叫んだミノリは瞬間、宙をかけた。そして爆風と火の粉から彼女を守った。ところが中央公園のあちこちから次々と爆発がはじまった。リョウジがならんでいた簡易トイレも炸裂し、吹きとんだ! 「小堺さん!」
「なに? なんなの!? ミュート?」悲鳴するアヤメ。
「かもしれない! ここにいて。小堺さんを見てくる!」アヤメをその場において、ミノリは簡易トイレがあった付近へとかけだした。
パニック状態におちいった人々の上空でけたたましいサイレン音を響かせながら攻撃体勢に移行したドローンが飛びかい、警備についていたK109が発砲こそしてはいないが州民に銃をむけ、現状位置からの移動を制限しはじめた。
「皆さん、落ち着いてください! 我々の誘導に従って避難してください!」連合警察官も拳銃をかまえながら右往左往する州民を威嚇する。
全世界にむけ三元中継でつながれ配信されていたJ州三区画の夏祭りであるが、ヤタ区画、ヤサカニ区画でも同様の爆破が繰りかえされていた。どのコロニー都市でも催事場のそこかしこが炎につつまれている様子が光学ディスプレイにうつしだされている。
「小堺さん、どこだ!」半狂乱の群衆とK109の間をかいくぐりリョウジをさがして走るミノリ、その背後でさらなる爆発があった! ミノリは感じた、稲地アヤメの断末魔を、血まみれた肉塊と化す寸前の彼女を感じた。「アヤメさん!」
『いけない、ミノ』アズの声。
「うるさい、アズ!」ミノリは──。
「きみ、勝手に動くんじゃないといってるだろ!」警官がミノリの足もとに威嚇射撃した。パン!と跳ねあがる土塊。動けないミノリ。そこかしこで発砲音が鳴り響いていた。K109や警察官が本格的に統制活動をはじめたのだ。装甲パトカーが中央公園内に続々と乗りこんできて、さらなるロボット警官の増援部隊が逃げようとする人々を強引に押しもどす。そんなさなか、また爆発が! 立ちならぶ屋台の一角が吹きとばされたのだ。
ミュートだ! ミュートがきた! どこにも逃げ場はないぞ! 殺されるぞ! 誰かのひと言が州民の中で伝播し、恐怖が拡散していく。
『J州時刻、午後七時三十分をもちましてJ州三区画すべてに非常事態宣言が発令されました。今後、連合警察官の指示に従わない者はたとえ一般州民であっても実力を行使します。繰りかえします──』ミノリだけでなくJ州民全員の耳の中で坂東トウジ総督の言葉が強制的に響く。バングルフォンの補聴機能にこんな性能があることは誰も知らなかったに違いない。総督の通達がおわると別の声に切りかわった。
『州民のみなさん、J州連合警察長官の矢住です。今、お聞きになられたとおり非常事態宣言がだされました。夏祭り催事場以外の場所で外出されている方はすみやかに帰宅、もしくは宿泊施設などへ退避してください。外出禁止時刻をこえて出歩いた方は即座に射殺されます。逮捕ではありません、射殺です。そして現状、夏祭り催事場内にいる方々は、手を頭のうしろで組み、その場に膝をついてください。これは勧告ではありません、命令です。従わない場合は、これを即座に射殺します。以上』群衆の中には、どよめきやため息が渦を巻いている。
『今、聞いたとおりだ! すみやかに手を頭のうしろへ! そして膝をつきなさい!』どなり声が各自の耳の中で響く。いつの間にか連合警察官の姿は消え、場を制圧しているのはロボット警官K109だけになっていた。もちろんミュート対策である。人々は互いに顔を見あわせながらもひとり、またひとりと命令に従い、膝を土につけていく。
「自分らばっか逃げやがって! 警察、卑怯だろ! 横暴だろ!」そんな中、ひとりの男がK109をけとばし、食ってかかった。
「はっ!」ミノリは息をのんだ。彼は一瞬にしてなぐり倒されたのである。J州のK109は通常、警告なしで一般州民に手をあげたりすることはまずない。やはり、いつもとは状況が違うのだ。周囲の人々が一斉に膝をつきはじめる。ミノリもこれに従うよりほかなかった。
その後、土間にひざをつかされたままの州民たちは五十人ごとのグループに分けられ、流れ作業のようにK109によってサードアイをサーチされていった。そして問題なしと判断された者から解放され、装甲パトカーに包囲された公園出口の方へと誘導されていった。逆に瞬時に拘束、取り押さえられる者もいた。
「なにがおこってるんだ? アズ」ミノリが小声でたずねる。
『監視ドローンやカメラがとらえていた録画データを元に、爆発現場付近で怪しい動きをした者を特定しているのです。即時射殺をしないのは一般州民による犯行であった場合、人権侵害にあたるからです』
「逆らっただけでなぐるくせに、人権?」
『見せしめというものでしょう。戦時下レベルの非常事態宣言のようです』
「あ、そう。それにしてもばかにスムーズに検査がおわるじゃないか?」
『サードアイの個人情報はつねにヒュペルコンピューター「アガサ」の管理下にあります。監視カメラのデータと照合することなど瞬時に完了です。そのための「アガサ」なのです』
『そこの方、非常時です。RA2075型との交信はつつしんでください』合成音声を発したK109がミノリに銃をむけてきた。強制補聴機能によりアズとの会話も聞かれているのだ。
「すみません」手を頭のうしろで組んだままロボット警官に頭をさげるミノリ。しかし、と思う。二度目はアズにとめられたかたちとなったが、最初に稲地アヤメを救ったとき、彼は一メートルほどのごく短い距離ではあったが瞬間移動能力を使ってしまった。もしあれがカメラにとらえられていたら……。今はアズに相談することもできない。ミノリは額から流れ落ち、目に入る汗をぬぐいたかった。
『次の方』K109がいい、彼のサードアイをサーチした。ミノリは心の中で、母さん、ごめん。やっぱりボク、長生きできそうにないよ。そうつぶやいた。
(つづく)
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