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第二章 ミノリとショウ 10

       10

「あれ?」布団(ふとん)らしきものへ横になった状態で目を開いたミノリは、あたりが真っ暗闇であることに気がついた。確か首長とヒマリに連れられて三人で屋敷へと跳んできたはずである。これはなんの冗談なのか? それともなにかを試されているのか? しかし、早めに切りあげてほしいものである。板垣ヨウスケの家族に会いにいかねばならないのだ。そんなことを思いつつ手さぐりで立ちあがろうとしたミノリは、コテンと転倒してしまった。そして、え!?っと悲鳴に近い声をあげた。複雑骨折はしていたがなおりかけていた右足の感覚がまるでないのである。あわてて手のひらを太ももから下へとはわせたミノリは、暗さでなにも見えていない目を見開いた。なんとひざから下がなかった。驚きと恐怖にふるえつつ手をのばすが、ひざの先に触れるものは冷えきったコンクリートらしき床だけであった。今度こそ大音量の叫び声をあげたミノリは、パニック発作に襲われたように土間をはいずりまわる。「足、足、ボクの足! 誰か! 首長さん! ヒマリさん!」

 かなり広い部屋であるようで、いくら動きまわっても壁につきあたることはなかった。泣きながら途方に暮れ、左足のみのひざかかえたミノリには、もはや元いた布団の位置ですらわからなくなっていた。

「くそ!」やけっぱちのように観念動力をはなってみる! どこかにぶちあたれば室外の光がさしこむかもしれない。しかし炸裂音だけは聞こえるのであるが、なにかがくずれたり、壊れたりしている様子はない。めくらめっぽうに何度も思念を撃ってみたが、結果は同じであった。「首長さん! ヒマリさん!」もう一度、ふたりの名前を呼んでみるが、やはり返事はなかった。どうなっている? なにがなんだかわからない! しかしミノリはここで一度、開きなおることにした。冷静になるべきだと判断することができた。ひとつ深呼吸をして、瞳を閉じて考えてみる。そして自身の頬に触れて、また仰天した。どうしたことか無精ひげがかなり長くのびている。しかもこののびかたは二日や三日、そり忘れたていどのさわぎではない。もともとひげは濃くないし、コロニー内では歯みがきとともに毎日アズがきれいにあたってくれていた。だからミノリには見当もつかなかったが、少なくとも十日はそっていないのではないだろうか? 十日? そんなに長くボクはどうしていたんだ? なにがおこっているんだ? もしかしたら0番街からでていこうとしたことで、首長の怒りをかったのかもしれない。そして片足を奪われ、監禁された? 五番街のデモから何日たったのか? 板垣さんの家族は無事なのか? ミノリは腹立ちまぎれに床へこぶしをたたきつけた。ボン!と音がしてコンクリートがはじけとぶ。もう首長もクソもない! こんなことでボクを閉じこめたつもりか!? 瞬間移動で逃げればすむ話なのだ。ミノリは閉じていた瞳をくわっと開いた。ところがである。周囲の様子が見えるのだ。灯りがともったわけではない。以前、透視ができたときのように暗闇の中の光景が直接、脳へと送られてきていることを感じた。そこは、ただいたずらに広いコンクリートの塊のような空間であった。遠くに彼が寝ていたと思われる布団と、かたわらにおかれた点滴スタンドやカテーテルらしき医療器具が見えた。おそらくあれによってむざむざと生かされていたのであろうが、足をなくすくらいなら殺されたほうがましだったと彼は思った。そして視界が開けたことであらためて自身の右足、(ひざ)から下がないことを再認識したミノリの中に怒りがこみあげてくる。

「ようやく目がさめましたか?」女の声がした。

「誰だ?」念動力で体をうかせ回転し、声の主を確認するミノリ。女はヒマリであった。「ヒマリさん! どういうことだ! なんでボクの足を奪った! どういうことなんだ!」ミノリは跳び、一瞬にしてヒマリの眼前に迫り、彼女の首に手をかけた。

「エム、いえ、あなたにはこういった方がしっくりくるでしょうね。ミュート狩りです」表情を変えずに、顔をあげたヒマリがいった。

「ミュート狩り!?」

「我々が赤津カズヨの病院からもどるなり、ジョエルの屋敷がクサナギ区画より飛来した戦闘ヘリによる爆撃をうけ、ミノリは意識をうしない、片足をなくしました」

「……嘘でしょ?」ずるりとヒマリの首から腕を落とすミノリ。

「…………」ヒマリはこたえず、ただ首を横にふった。

「首長さんは?」

「ジョエルは……救いきれませんでした。私の失態です」

「信じられない」

「意識を外部へとむけてみなさい。ミノリには聞こえませんか?」

「外……」

「ずっと上、地上で今、おこっていることを感じられませんか?」

「地上? ここは地下室なんですか?」

「感じなさい、ミノリ」

「はい。でも……」地下から地上を? そんな力などミノリは持ちあわせていない。

「見えませんか?」

 ミノリは天井を見あげ懸命に目を凝らし、耳をすますが、なにひとつ感じることができない。

「ミノリ!」別の女性の声が地下室の壁に反響した。「生きかえったか! このゾンビ!」

「あ、はは。カズヨ先生!」思わず医師カズヨに抱きついてしまったミノリは、恥ずかしそうに体をはなして頭をさげた。「先生がまたボクを助けてくれたんですね……」

「うん。でも、ごめんね。その足……」

「いえ。ちょっとびっくりしたけど、もう大丈夫です」ミノリはふたたびカズヨに一礼し、ヒマリを見た。無表情をよそおってはいるが、首長をうしない、彼女も相当なダメージを受けているであろうことは想像に(かた)くない。「だけどなんで、首長の屋敷を連合警察が襲撃したんでしょう? いくらなんでも唐突すぎませんか?」

「爆撃はこの屋敷だけにおこなわれたわけではありません」ヒマリがいった。

「はぁ?」

「今や0番街そのものが壊滅状態なのです」

「えっ!」

「とんでもないエム狩り……とんでもないじゅうたん爆撃だった。私ら政府やコロニーになんの迷惑もかけてない! なんでほうっておいてくれないのかしらね!」カズヨが涙をこらえて叫んだ!

「カズヨ先生……ショウは!? ショウは無事ですよね?」

「わからない。行方不明です」

「行方不明……」

「今、生き残った住民の力を総動員してさがしているけど、行方不明者があまりにも多すぎて……」

「ショウ……ショウ! ショウ!」感情がぐちゃぐちゃになったミノリの脳にクラーラ・アインホルンの尊大な顔がうかび、消えていくアズ、死にゆくアヤメ、タマミ、ヨウスケ、そしてショウの恐怖の表情、そのイメージが交錯した。そしてフラッシュバックにも似た鮮明なヴィジョンがあふれかえった。崩壊し、黒煙があちこちでたちのぼっている市街。建築物や電柱。燃えている港に近いショウとシュンの家。血にまみれ、あるいは焼け焦げて無造作に積み重なっている0番街住人の姿。シュンの見舞いにきていた青年のひとりがK109の群れに銃撃され、木っ端微塵の肉片にされる光景が──。上空にはうるさいハエのように飛びかう多数の戦闘ヘリ。「うわぁぁ! なんなんだ!」頭をかかえて、ミノリはその場に倒れふした。

「感じられましたか? ミノリ、それが現実なのです」両手をかたく組み、声をふるわせるヒマリ。

「あああ……」ミノリは泣いていた。

「これはエムとしてではなく、私の人としての直感ですが……」

「…………」ただ泣きはらしているミノリ。

「おそらく手引きしたのは、コロニーとつながっている水上カンゴだと思います」

「……なぜそんなことを、あの人が?」ミノリは少し顔をあげてヒマリを見た。

「さあ、ただの直感です。あの男の考えていることなど私には読めません」

「……ボクのせいか? あのときボクが仲間になるといえばよかったのか?」

「かもしれませんし、違うかもしれません。それはのちに検証すればよいこと、何日間ものほほんと寝ていたあなたが今、なすべきことはなんですか?」

「ショウを見つける」片足をうしなったのだからのほほんと寝ていたわけではないのであるが、今やこの街では命が助かっただけでましであると、ヒマリにそういわれているような気がミノリはした。「なんとしてでもショウをさがします」

「それが今、ミノリのなすべきことですか?」

「違うのかもしれませんけど、ボクはショウを助けたいんです!」

「わかりました。死んでいるのなら亡骸(なきがら)を、生きているのならここへ、私たちのもとへと彼女を連れてきなさい。必要とあらば、戦いなさい! 壊しなさい! 殺しなさい! 怪物(モンスター)になりなさい」

「怪物……」涙をふいたミノリは片足で立ちあがった。「ボク、なれますか?」

「さあ。あなたの未来はマル甲といわれたジョエル首長にも見えませんでした。私にわかるはずがありません。ただ、今はショウのことだけを想うのです。それだけでいいと私は思いますが?」

「……はい!」決意を秘めた瞳を一度、ヒマリとカズヨにむけたミノリは、特大の風切り音を残して跳びたった!

       

 荒れはて、炎たち昇る焼け野原と化した市街地におりたったミノリは、自身のすべてをとぎすまして、ショウの思念を追う。ショウの姿を求める。が、当然のように生き残りのミュートを探索しているK109と戦闘ヘリの銃撃がはじまった。しかし全神経が末端まですみずみまでむきだしになったような今のミノリに、正確すぎるロボットの撃ちだす弾丸などあたるはずはなかった。予知、観念動力、瞬間移動とともに次の攻撃、攻撃、攻撃、攻撃! 片足のみで跳びまわるミノリ! パターン化した戦闘の理屈など彼にはない。ただ無意識下に眠っていた本能のみで攻撃ヘリを撃ちおとし、K109をたたき壊していた。ショウを見つけるまでは死ぬわけにはいかないという思いだけが彼の集中力をささえていた。ところが、倒しても倒しても、アリのように、コバエのように続々と現れる機械の援軍。本当であれば、なにもここまで戦いつづける必要がないことを彼はわかっていなかった。跳んで逃げればすむ話なのである。怒り、ショウの街を破壊した人工物への怒りに我を忘れていた。そしてわずかの時間で学習したマシンたちは単機での戦いをやめて援軍の到着を待ち、ミノリを輪のように十重二十重に取りかこみ、同士打ちもいとわずに一斉掃射する方法を取りはじめた。

「な、なに!」ミノリは悲鳴をあげた! 援軍としてやってきた戦闘ヘリの内部にロボット警官だけではなく、人間が多数押しこまれているのだ。そして、その中には板垣ヨウスケの妻ワカコと、双子の子どもたちユウスケとケイ。さらには山中タマミの亭主の姿もあった。狼狽(ろうばい)するミノリ目がけて一斉射撃がはじまる。逃げまわるしかないミノリ。もはや防戦一方になるかと思われたが、あっけなく敵の作戦はくずれさった。壮絶な銃撃の嵐が人質たちをことごとく死なせてしまったのである。怒りくるい、涙をほとばしらせたミノリはマシン軍団のすべてを一瞬にしてガラクタにしてみせた。彼のはなった観念動力が吹きとばした大地には、水上カンゴがあけた大穴に迫るサイズの衝突クレーターがいくつもできていた。

 こうしてクサナギ区画から送りこまれてきたAI搭載のヘリとロボットをせん滅したらしいミノリはほっとため息をつき、ガレキの中へと倒れこんだ。疲れはてた彼の五感と六感が、いったんは敵がいなくなったことを教えてくれたのだ。しかし達成感などもちろんなかった。むしろ自分に腹が立った。ヒマリのいった通りである、十日間ものほほんと寝ていなければ、もしかしたら街もショウも守ることができたかもしれないのである。そしてもちろん、板垣ヨウスケの家族も。


“兄さん……ミノリ! 助けて……”


 ショウの声が聞こえた。か細く消え入るような声であったが、素早く全方位を見わたしたミノリは“今いく! ショウ!”と叫んで、ショウの思念にむけて跳躍した。

 彼女の助けを呼ぶ声が発せられたらしきあたりに跳んだミノリ。そこは市街地からはかなりはずれた山林の中であった。さすがに人里はなれた山にまでは戦闘ヘリも爆撃をかけなかったようで、鳥のさえずりや小川のせせらぎが聞こえ、平和そのものといった風景であった。しかし自身の感覚だけで跳んできたため、そこにショウがいるという根拠はまるでない。そういえばきたことのない未知の場所へと瞬間移動できたのは初めてかもしれないとミノリは思ったが、今はそれどころではない。確信はないが、ここは自分自身の直感にしたがいショウの捜索をミノリははじめた。できるかぎり広範囲に脳のアンテナを伸ばすイメージをする。なんでこんな山奥に? 熊にでも襲われた? 考えても意味がない雑念を払い、集中しつつ森へわけいっていくミノリは松葉杖を忘れてきたことに気づいたが、こんな道なき道ではかえってじゃまになったに違いない。いずれにしても体をうかせて進むのだから、もはや杖など必要がないのだ。

「なにもない……いや、なんだ?」なにか聞こえた気がした。正確には聞こえたのではなく、猥雑で無秩序なビジョンと息づかい、非常にいやな感じが脳をかすめたのである。ミノリは山歩きをあきらめて宙へと舞いあがった。ずんずん高度をあげてやがて背の高い樹木の葉を見おろろせるところまで体をもちあげる。初めからそうしなかったのは高空からでは木々の中の細かな動きを把握できないと考えたせいであったが、実はミノリが自身のエムとしての力の使い方に不なれであっただけである。今やミノリは透視や暗視、千里眼すら身につけていた。はるか上空からでも森林の奥深くを見とおせるのだ。

「あ!」沈みかけている夕日を受けて宙にういていたミノリは樹木の中に人工的な光を見た。そして目を凝らすと頭の中に見えたのは、豪奢な別荘というか山荘、元はホテルかなにかであったかもしれない建物であった。光はその建物の窓からもれていた。つまり人がいるということである。そして近づいていくたびごとに、あのいやな感じが強くなっていく。それがなにかはわからないながらも悪い予感につつまれていくミノリ。どうしてだか恐怖心までがめばえはじめた。しかし躊躇(ちゅうちょ)しているときではない、もしあの山荘にショウがいたら! 

 恐れる気持ちを押さえこみ、心の壁をさらに高く積みあげたミノリはやわらかく建物の近くにおりたった。見はりなのか、外部には数人の男女若者がたむろしている。中にはガソリンを街に売りにきていた者の顔もあった。ユウマとかいう少年がいたらシュンの仇をとってやりたい気持ちもあったが、要するにこの山荘は水上カンゴの屋敷であるということだ。彼らと交戦したりすれば、生き残った0番街の住人に多大な迷惑をかけることになるだろう。そしてアサコという名の少女の姿はあったが、ユウマはそこにいなかった。ミノリは木のかげに身をひそめながら山荘内の透視をはじめた。しかし集中しきれない。恐怖心の正体はこれであった。中に水上カンゴがいるせいだ。彼ほどのマル甲ならば、自分が近くにいることくらい察知しているかもしれない。ミノリは懸命に精神統一につとめるが、どうしても怖気(おじけ)づいてしまっている自分を払拭(ふっしょく)しきれない。ミノリが顔をさげ、舌うちしたそのとき、顔面を殴打されたような強烈なビジョンが脳にたたきつけられた。


 コロニーにいたころにアーカイブで見た高級ホテルのロビーのような場所であった。にへらにへらと笑う半裸の男たちが何人もいる。その中央に人形のように死んだ目をした女がひとり横たわっていた。全裸の彼女は顔も全身も鞭うたれたように()らしており、そして大きく開かれた状態の下腹部からは出血をしていた。


「──ショウ!」頭のタガがはずれたミノリは、怒りとともにショウの元へと跳んだ!


 ロビーに風を巻いて立ったミノリは、無意識に観念動力をまき散らして数人の男たちを一気にはね飛ばした! さらなる怒気がうねりとなり、周囲にいた下半身むきだしの男どもを巻きこみ、十数人、そのすべてを天井へたたきつけ、左右の壁へとはじいた! ふうふうと肩で息をしながら、彼女を正視できないミノリ。だが、意識をうしなっている彼女はここにいて、ミノリに助けを求めていたのだ。ミノリは涙を落としながら彼女の方へと片足跳びで進んでいく……。

「ようミノリ君」背後から声がした。ミノリにはまったく気配すら感じさせなかった水上カンゴが木製の椅子に腰かけ、薄笑いをうかべていた。「なにをしていたんだ? あんまり遅いから、こっちから俺の見た目のイメージをキミの頭に送っちゃったじゃないか」

「お前……」ミノリはかみ砕かんばかりに歯をくいしばった。

「お前って? ひとつだけどさ、ああ、俺、誕生日近いからふたつかな? 年上にむかってお前はないだろ? どんな教育受けたの、ミノリ君よ」

「お前だけは絶対、許さない……」

「はいはい、怖い怖い。けど、カッコつけるなよ」

「なんだと?」

「本当はミノリ君だって、ショウの初めてをいただきたかったんじゃないの? 最初の男になり──」

「黙れ!」

「ははは……あれ? あれれ?」カンゴがミノリの背後へとわざとらしく視線を移した。

「し、ショウ……」

「ミノリ……ミノリ……なの?」顔だけをわずかにおこしたショウの悲痛な表情。

「ショウ!」カンゴへ完全に背をむけてショウへと跳ぶミノリ!

「こないで!」ショウの観念動力がミノリをこばみ、押しもどした。しかし、その力は驚くほどに弱かった。「こないで……見ないで!」細く引きしまった筋肉質の足を閉じ、両腕で薄い胸元をかくすショウ。

「ショウ……」ショウに近よることができず、動けないミノリ。

「どうした? ボロ雑巾みたいな女の力に抵抗もできないのか? 敵対する相手に簡単に背中をむけるってどういうことだい? そんなんで俺を許さないって、それありなの? やっぱ、カエサルのあとを継げるのは俺だけなんだなぁ!」高笑いするカンゴ。「そうそう、ショウは意識をなくしてなんかいなかったんだよ。俺の精神攻撃、いや精神飽和かな? あれで、服従させていただけだからね。ショウは喜んで俺たちを何人も受け入れてくれたんだ。で、俺は一番ね。もちろん気絶なんかさせなかったよ。彼女は全部、何十本もおぼえてる。ヴァージン・ショウのあそこもついにボロ雑巾になってしまったなぁ。ああ残念、残念。残念至極、なぁミノリ──」

「うわぁあ!」突然、ショウが叫び、自らの右手、手刀の先端を首筋にあてる! そして彼女の首がボン、と吹き飛んだ! その力の衝撃波で、どごんと床に倒れる首のないショウの死体。

「ショオー!」鮮血をはらむ目を見開いたショウの首が、ゴロんゴロんとフローリング敷きの床に転がった。受けとめたミノリは胸にかき抱き、その血まみれた短い黒髪に指を埋めた。

「はぁ……」大きくため息をつくカンゴ。「これは想定外だったな。驚いた。やはりJ州民てのは女も誇り高いってことらしい……」

「嘘をつけ……」うずくまったミノリは、ショウの首を抱きしめたままいった。

「はぁ?」あからさまにおちょくるような表情をするカンゴ。

「……おまえなら、マル甲のおまえにならとめられたんだろ? ボクにはできなかったけど、おまえにならショウの自殺をとめられたんだろ!? なぜとめなかった!」歯どめのきかない怒りの炎を目の奥底からふきあげてカンゴをにらむミノリ。

「ミノリ君さぁ、J州の古い言葉だが、武士の情けってのを知らないのか? いや、もったいないことをしたと実は後悔しているんだ。ショウは貧乳美人だからな。も少し心を壊してやればコロニーのロリコンじじぃに高く売れ──」

「がぁぁぁあ!」左腕にショウの生首を抱いたミノリがカンゴに襲いかかった。しかしカンゴは音もなく消え、ミノリからはるか遠くの右前方、クロークルームあたりに悠然と立っていた。

「やってみなよー、おもしろいな。え、ミノリ君!」

「……殺してやる!」期せずして、ミノリの手のひらから紅蓮の火焔(かえん)が噴きだした!

                          (つづく)


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当サイトにて、二作品を公開中です。お読みいただければ幸いでございます。


『ゴースト・キス ~死人しびとの口吸い~ (改)』 

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『ときに、たまにはショート・ストーリーなどを』

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