第二章 ミノリとショウ 3
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待ちに待った退院の日がきた。そして背負ったのは一カ月半分の入院治療費と食事経費、早い話が借金である。ここでは金が存在しないので借物というべきかもしれないが。いきなり債務者となってしまったミノリは、すぐにでも働き口をさがすべく動きたかったのであるが、まずは住むべき家を確保する方が先決であった。季節は初冬、もう河原での野宿などとてもできる気温ではなかった。
「でも家さがしの前に首長へのあいさつが先だよ」夕方、仕事帰りに病院へよってくれたショウがいった。「首長がノーといったら0番街への転入は認められないんだ」
「へえ。今まで転入を断られた人っているの?」
「いるよ、たくさん」
「たとえば、どんな人がだめなの?」やや怖気づいてしまうミノリ。クサナギ区画にはもどれない。ここで拒否されたら路頭にまようしかないのだ。
「破壊や略奪をする可能性がある人、女に飢えてレイプ目的で流れてきたやつ、働く意思がぜんぜんないのとかかな? 首長には強力な予知能力があるんだ」
「そうなの。予知か、すごいな」
「たまにはずすけどね」
「だめじゃん」
「だから前にいったろ? 街には変なのもいるって」
「そうだった」だから女性は、体のラインをかくしているのだと彼女はいっていた。
「あー、ミノリ失格かも」
「え、なんで?」
「女の子の裸、見ほうだいなんでしょ?」
「だから違うって!」顔を真っ赤に染めてどなるミノリ。
「あはは、冗談だよ。今日はもう遅いからうちに泊めてやるよ」
「は? いや、でも……」
「やさしいお兄さんが一緒だから問題ないだろ?」
「ああ、なるほど。そういうことね」
「前に泊めなかったのは、まだあんたのことがよくわからなかったからだ。悪かったな」
「そんなことないよ。それにいきなり会ったら、やさしいお兄さんになぐられたかもだし」
「かもな。でも、見た目はごついけど兄さんは丁種だ。ケンカになってもあんたの敵じゃないよ」
「ああ。お兄さん、普通の人なんだ。だったらなんで0番街にきたの?」
「両親がK109に撃たれたとき、この街の人が救助にきてくれたんだ。そのとき兄さん、妹をひとりにできるか!っていって、ついてきてくれたんだ。カッコよかったよ、あのときの兄さん」エムの街で一般人が生活するのはかなりのプレッシャーに違いない。コロニー内でミノリがおびえながら暮らしていたように。
「いい兄貴だな。タフガイだ」もしかすると差別やヘイトが存在するのかもしれない。
「まあな」ふふんと照れたように鼻を鳴らすショウ。「ところで明日は仕事、休みをとったんだ。首長との顔あわせがてら街を案内してやるよ」
「たのむ。ほんと助かるよ、ショウ」
「貸しだ」
「了解」
まだ職も決まっていないミノリは月々、米か麦を一袋ずつ、約半年間支払うという約束をカズヨとかわして病院をでた。この契約が安いのか高いのか、まだ右足のギブスが取れず松葉杖をついて歩くミノリには判断がつかなかった。ショウに聞いてみると、めちゃめちゃ格安だよといって笑った。
ショウの住む家は潮の香りただよう漁師町の一角にあった。街の中心部にあった「赤津医院」からはかなりの距離があるため、松葉杖を使うミノリを気づかったショウは腰につかまれといって跳び、港のふ頭に着地した。ミノリは彼女の家を知らないので瞬間移動先のイメージができないからであるが、やはり女性の腰を背後からつかむという行為にドキドキとしてしまうミノリであった。板垣ヨウスケの家から三番街の工場へ彼が跳んだとき、ショウに同じことをさせたけれど、あのとき彼女はどう思ったのだろう? 古いコンクリート舗装の大地に立ったミノリは波止場を流れる風にとまどいつつ、こんなことならアズのいう通り女性との接触機会をもっとふやしておくべきだったとくやんだ。
「いいもんだろ? 夜の海ってのも」やや右側が欠けた、ぽっかりとうかぶ月を見ながらショウがいった。
「うん、きれいだね。でも、なんか怖いみたいだ、吸いこまれそうで。実は実際に海を見るのは初めてだから」ミノリはアーカイブの映像でしか海を見たことがなかった。
「へえ……そっか、本物の海苔も食ったことないんだもんな。あれ? でも川にはきてるのに、なんで海にはこなかったんだ? そもそもなんで川には跳べたんだ? 生まれたときからずっとコロニー育ちなのに」
「あの川はなんとなくイメージできたから」
「なんで? いったことあったのか?」
「ないよ、もちろん。でも母さんが生きていたころ、一度見せてくれたんだ。PEウィルスがまん延する前、今から五十年以上前のドーム外の風景を。あの河原で遊ぶ幼い母さんがうつった動画だった。会ったことないけどボクのおじいさんが撮ったものらしい。母さん、恥ずかしそうに今のミノと同い年よっていってた」
「何歳だったの?」
「五歳」
「よくおぼえてるね……ん? ミノ? お母さんにミノって呼ばれてたのか?」
「まあ……」
「それでアズにもミノって呼ばせてたの? あんたマザコン? そう思われたくないから男性ボイスにしてたのか?」
「まあ……」
「うわ、お母さんの名前はなんていうんだ?」
「アズサ……」
「マザコン確定だ!」
「自分だってブラコンのくせに!」
「そりゃ違うね。兄さんがシスコンなんだ」
「ああ、なるほど」
「納得すんなよ! でも悪い。別にちゃかすつもりはなかったんだ。誰だって家族は大事だもんな。ミノリがあんまりしみじみと語るから、ちょっとからかいたくなっただけだ」
「それをちゃかすというんじゃないの?」
「そうか? それで? お母さん、病気かなにかだったのか?」
「またしみじみしそうだからやめておくよ」
「私だって親が殺された話しただろ? ちゃんと話せよ。私ら、対等なんだろ?」
「そうは思ってないくせに」まだ子供、弟、そんな風に思われていることは、ミノリも自覚している。くやしいが。
「貸しを忘れたのかよ。かえせ、ミノリ!」
「──自殺した」ミノリはできるだけさらりといってみる。
「へ!?」
「で、話をもどすけど。母さんが死んで六歳で養護施設に入ったあと、夜、ベッドの中で五歳の母さんが遊んでる姿を思い出しながら、あの川にいってみたいなって、そう思った。そしたら、いつの間にか川辺にいたんだ。それから少しずつ歩いて、行動範囲を広げていった。けど、海までは到達できなかったな。なんせ徒歩だし、夜しかいけないし、最初は怖かったから」
「…………」ショウは絶句した。ミノリの母親が自殺したということにも驚いたが、それ以上に彼女を驚嘆させたのはミノリの能力についてであった。瞬間移動を使うエムは数多くいるが、動画や画像をのイメージだけで跳んでいける者など彼女は聞いたことがない。通常は当人がいったことのある地点にしか跳べないのだ。あの伝説のマル甲、カエサルですら、その弱点を研究されて連合警察に捕捉されたのである。
「どうしたの? ショウ」
「い、いや、なんでもない。お母さん、なんで自殺なんか……いや、いいたくなければいいんだけどよ」
「ボクは昔から変に勘がよくてね。で、ボクがエムだと感づいた近所の人が通報しようとした。それでとめにいった母さんともみあいになったんだ。相手が刃物をだしてきたんだけど、母さん、それでも逃げなかった。で、結果的に相手を刺してしまったんだ。心臓ひとつき……ボクは一部始終、全部みてた。あのとき力の使い方がちゃんとわかっていたら、あんなことにならなかったのにって今でも考えるよ」
「…………」
「母さんはさ、ボクを守るために自殺したんだと思うんだ。本当のところはわからないけど。警察に逮捕されたら殺人の動機を追及されるもんね。おそらく自分で自分の口を封じたんだろうなぁって、少し大きくなってから思ったんだ」
「…………」ショウは言葉がでてこない。
「なにがあってもミュートだということは、誰にもばれてはいけない、なにがあっても。それが母さんの遺言だった。最後にそういって公営団地、十二階の窓から飛びおりたんだ……」
「…………」
「今までがんばって母さんのいいつけを守ってきたんだけどね。そうそううまくはいかないな」
「…………」
「ね? しみじみしちゃったでしょ?」薄く笑みをうかべたミノリは、よっと声をかけながら右脇腹の松葉杖の位置をなおす。
「──仕方ないよ。つきあう人がふえれば、守りたい人だってふえていくんだから」しぼりだすような声でショウがいった。
「今はボクもそう思うよ、ショウ」
ふ頭のコンクリート壁面でくだける波のさざめく音のほかは、なにも聞こえてこない月あかりだけの静寂の中で、ショウはミノリの肩をバーンと音をたててたたいた。
「貸しがへってよかったな、ミノリ……」
「本当に連れてきたのか?」イカの塩辛をさかなに、地酒をちびりちびりとやっていたシュンは、やはり廃屋を改装した一軒家に入ってきたショウとミノリを目にすると驚いたように立ちあがった。「嫁入り前の娘のすることかよ! それからお前、本当にくるか? 普通、断るだろ?」
「すいません、お兄さん。じゃ、そういうことで……」頭をかきかき松葉杖をあやつり、ミノリはまわれ右をした。
「兄さん! 昨日、話しただろ? もう酔っ払ってるの?」
「酔ってねぇよ! 今、さめた!」
「ミノリ、兄さんに観念動力を一発、カマしてやんな」
「はあ!?」同時に声をあげるシュンとミノリ!
「ボク、そんなことしませんから!」必死に声をはるミノリ。
「…………」病室でのミノリのパワーがまだ脳裏に焼きついていて、顔の前で太い両腕を交差し、ブロックをかためるシュン。
「冗談に決まってんだろ? ミノリが本気で思念を撃ったら松葉杖じゃすまないだろうからね」鼻で笑うショウ。
「ショウ、お前は俺をバカにしてるのか!」クロスアームをといて妹につめよる兄貴。
「してるわけないだろが! でも足の不自由な男を、この寒空の下にほうりだすような人なら軽蔑するよ。兄さん」
「……そんなまね、するわけないだろ? こっちも冗談だ。よくきたなミノリ」シュンはミノリの首にたくましい右腕を巻きつけるようにしていった。
「はあ……」なんの茶番だよ?と考えながらも、兄妹っていいなとミノリは思った。
「ショウにハンパな気持ちで手だししたら、俺は死んでも、お前を殺すけどな……」
「はあ……」耳元もとでささやかれたミノリは、そうでもないかも、と首をしめられながら思った。
「じゃあ、メシにしようか! 腹へったよ!」ショウは満面の笑みをうかべていた。
ミノリが古い本でしか読んだことのなかった円形のちゃぶ台をかこんで、三人は夕げをとりはじめた。本日のメニューは鯛の塩焼きとほうれん草のおひたし、白飯にあさりの味噌汁。それに副菜が少々といったところであった。鯛をだしたのはミノリの退院祝いだからだそうだ。新鮮な海の幸を口にしたミノリはうまい、うまいを連発した。カズヨのだしてくれた病院食は正直、美味とはいいがたかったし、アズの調理した料理は確かにおいしかったけれど、食材が衛生管理のいきとどいた加工肉や加工魚ばかりであったため、この味わいにはとうていおよばなかった。
「うまいか? あたりまえだ。私がつくったんだから」面映ゆいような表情をうかべたショウがいうと、シュンがちゃちゃを入れる。
「なにいってる? 塩ふって焼いただけの魚に、ゆでただけの野菜じゃないか?」
「はあ? ミノリ、こっちのだし巻き卵をくってみろ! 私特製のだしを使ってんだぞ」
「ああ、いただくよ」ふわふわの卵を口に入れたミノリはゆっくりと味わい、確かにだしがきいていると感じ、塩かげんも絶妙だと思った。これまで食べてきただし巻き卵はまがいものであったに違いない、そんなことまで思った。
「どうなんだよ、ミノリ」身を乗りだしてくるショウ。
「最高だ。こんなうまいの食べたことないよ。ショウ、い──」
「いい嫁さんになれるとかぬかしやがったら殺すぞ」すかさず口をはさむシュン。
「ボクの心、読みました?」
「読めるわけないだろ! お前も俺をバカにしてんのか!?」
「すいません! そんなつもりじゃ」やはりシュンは丁種、普通の人間であることにコンプレックスをいだいているようだ。ミノリは以後、言葉に気をつけようと肝に銘じた。
「兄さん、小さいな。あはは」手をたたいて喜んでいるショウ。
「うるせえ! ショウ、たかだか卵焼きをほめられたくらいで図にのるなよ」
「卵焼きじゃないよ! だし巻きだよ!」
「たいしてかわらないだろ!」
「兄さんには二度と食わせない!」にらみあう仲良し兄妹。いたたまれなくなったミノリは、おそるおそる不気味な物体が盛られている小鉢を指さし、話をそらせてみようと試みた。
「……あ、あの、さっきから気になっていたんですけどそれはなんです?」
「イカの塩辛だが」ミノリの問いに、おもしろくもなさそうにこたえるシュン。「知らないのか?」
「はぁ、なんかヌメっとしてますね? 生ですか?」
「生だよ。食ってみな、うまいから。これは俺がつくったんだ」ちらとショウを見て、自慢げに胸をはるシュン。
「すいません、生はちょっと……」コロニー内では生肉や生魚を食べることは禁止されていた。寿司というものは存在したが、押し寿司やしめ鯖ばかりであった。もっとも一番街、二番街の資産家たちはこっそりと食しているらしいとの噂はあったのであるが。
「いいから食え! ミノリ!」塩辛の小鉢をドンとミノリの前におくシュン。ショウはにやにやと笑うばかりである。
「はあ……」これ以上こじれるのも面倒なので、息をとめてイカの塩辛を口に入れたミノリは、首をひねり、ん?と眉根をよせ、そしてもうひと切れ、口へと運んだ。「なんだこれ! すごくうまいです!」
「だろう? これも食ってみろ。こっちは火を通してあるからよ」
「なんですか、この脳みそみたいなものは」あからさまに気味悪がっているミノリ。
「白子ポン酢だよ。うまいから、食え」
「はぁ……」毒を食らわば皿までの心境で白子を噛みくだいたミノリの表情が変わった。「なんですか? このとろける感じ」
「うまいだろ?」今日、一番の笑顔を見せるシュン。
「はい! びっくりしました」
「俺の勝ちだな」ショウにむかってガッツポーズをとるシュン。
「うるせぇ」そういいながらも、目を細めているショウ。
「しかしコロニーってのはかわいそうな所だな。こんなにうまいものを食べられないなんて」地酒をコップに注ぎながら赤ら顔になってきたシュンがつぶやく。
「PEウィルスまん延のあと、食品衛生が異常にうるさくなったと聞きました。混乱のさなか、生食の雑菌のせいで何人も死んだって」中学の授業でミノリはそう学んでいた。
「そりゃ五十年も前の食料難の時代の話だろ? 新鮮な食材をきちんと調理すりゃなんの問題もない。ミノリ、生カキや生レバー食ったことあるか?」
「ありません」あるわけがない。
「うまいぞー。早く稼げるようになって食ってみるといい」
「はい……」しばらくは借金返済が先なので当分は無理であろうが。「ところで家なんですけど、家賃はどのくらいなんでしょうか?」新参者のミノリには見当もつかなかった。
「家賃ならただだよ」ショウがいった。
「ただ? 本当に!」
「空き家ならいくらでもあるから、雨漏りしてない家をさがして首長へ報告すればオーケーだ」
「ただし廃屋ばかりだから、住めるように改装する費用は自分もちだぞ」
「それからひと家族、持てる家は二軒までと決まってるから忘れるな」
「へえ、ちゃんとルールがあるんですね」感心するミノリ。
「あたり前だろ? ルールがなきゃただの無法地帯だ」いいながら酒をミノリに注いでやるショウ。
「ボク、酒は飲んだことないんで。未成年だし」
「私の酒が飲めないってのかい?」
「いや、そういうわけじゃ」
「この街のルールじゃ十五が成人なんだよ。十五歳からはみんな働きにでる決まりだ。働かざる者、食うべからずってね」ショウは自分に注いだ酒をぐいと飲み、うまそうに口の中でころがした。
「へぇ……」合成ビール以外の酒を初めて目にするミノリはしけじけとながめ、香りをかいでいる。そんな彼にショウが笑いかけた。
「ただ酒おごるのは今日が最後だよ。ぐいっとやんな」
「やれよ、ミノリ」シュンがダメ押しする。
「わかりました」クイと口にふくむようにしたミノリは、初体験の味にとまどう。これがうまいのかまずいのかわからなかった。あまいようなからいような舌がしびれるような不思議な味だと感じた。
「ミノリ、それからな」ショウがまじめな顔でいう。
「うん?」ひと口、ふた口で、目のあたりから膨張していくようなポワンとしたえもしれない感覚に襲われているミノリ。
「さっきは冗談で兄さんに力を撃てなんていったけど、もしも他人にむけて思念をはなつようなまねをしたら即、追放だからな。これも街のルールだ、精神的にも物理的にも力の悪用は絶対に許されない。タツトさんみたく仕事で使う分にはいいんだけどな」
「そうか、よかった」少し味になれて、くいくいと地酒を飲みながらこたえるミノリ。
「なにが?」
「やっぱり板垣さんのいった通り、この街の人はテロなんかしてないんだなと思って」
「あたり前だろが!」シュンがミノリのあごに軽くこぶしをあてる。「もう一杯いくか?」
「はい。いただきます」かしこまり、両手でコップをさしだすミノリ。
「あまり調子にのるなよ。四十度以上あるんだからな」笑いながらショウがいう。
「度ってなに?」酒の度数などというものは彼の読んだ小説にでてきたことがない。ミノリには未知の知識である。こたえようとしたショウをさえぎってシュンがどなった。
「おい、ミノリ! 仕事は決めたのか?」おかわりを注ぎながら聞いてくるシュン。
「いえ、まだ」
「そりゃ、よくないな! いや、よくない!」断じるシュン。
「今日、退院したばかりだよ」ショウがフォローするが、実はすでにシュンはかなり酔っぱらっているようだ。
「お前、船に乗れ。漁師になれ! 俺の助手にしてやるからよ!」
「り、漁師ですか? でもボク、海なんて今日、初めて見たから……まだ、足も不自由ですし」
「関係ねぇ! お前みたいな青ビョウタン、俺がムキムキにきたえてやる! 明日から船にこい!」
「明日は首長へのあいさつだよ」やれやれといった風にショウがいう。「兄さん、朝、早いんだからもう寝ろよ」
「ショウ、お前にへたなちょっかいださないよう、俺がミノリを見はっといてやるからよ!」
「そんな魂胆かよ。ミノリは弟だっていってんだろが!」
「ああ、そうだったな。そうだった。よし! 寝る」シュンは一気に立ちあがったが足もとがおぼつかない。「ミノリ!」
「はい……」
「半分冗談だが、ま、考えとけ。職がすぐに見つかるとはかぎらないからな。足のことは気にするな。まずは船になれるところからだ」
「あ……ありがとうございます!」ミノリは片足の膝をついて頭をさげた。
「おう。おやすみ」軽く手をあげたシュンは二階の自室へと引っこんでいった。
「まったく……」苦笑いをうかべて酒を飲みほすショウ。「ほんとシスコンだな」
「れも素晴らしいシスコンだよ」少しろれつの怪しいミノリ。
「なんだよ、それ?」ショウは笑顔で、真っ赤になっているミノリの額へ中指をはじいた。
(つづく)
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