Ep.94 林檎と翼
相まみえるは
カラー達が進軍を開始した頃、モーフェンは上空にいた。
「随分と大掛かりなことをする。それほどまでに欲するか」
どこか呆れた様子でその光景を眺めながら、独自の異次元にしまっていた5mにもなる禍々しい杖を取り出す。杖を浮遊させながら、軽々と振り回してみせる。
「さて、あそこにいるカラーが仮に本物だとして」
「ここにいる3人のカラーは、何者だ?」
モーフェンの目の前には、カラーが3人立ちはだかっていた。
◆◆◆
カラーの進軍と同時に現れた魔物達は、次々と街の住民達を襲う。
逃げ惑う人々を横目に、カラー達は堂々と歩き続ける。
このまま教会まで続くかと思われたその時だった。
「【聖紋・破魔】!!」
天から眩い光が降り注ぎ、魔物達を灰にしていく。
その光の源に、カラーは目を向ける。
「来ましたね。八天騎士」
そこにいたのは、八色からなる鎧の騎士、聖国の八天騎士だ。
八天騎士達は剣を構え、カラーに向ける。
「ここまでだカラー。聖国の汚点である貴様は、ここで止める」
八天騎士達の殺気に反応した怪人達は、臨戦態勢に入る。
カラーはそれを片手で制止させ、前に出る。
「先に教会へ行ってちょうだい。ここは私だけで十分だから」
微笑みながらそう言われた怪人達は、臨戦態勢を解き、教会へ歩き出す。
その中で、怪人はカラーの方を向いて、
「あまり無茶はなさらないように」
念を押してから空間転移の魔法陣でその場を後にしようとする。
「逃がすと思うか?」
白の八天騎士がすかさず手をかざし、魔法を発動しようとする。
だが、
「【色彩剥奪】」
発動する前に霧散した。
「ッ!?」
白の八天騎士が驚いている隙に、怪人達は魔法陣の中へ消えていく。
その場に残ったのは、カラーと八天騎士達。八天騎士達は戦闘態勢に入る。
「今のがラシファとバルアルを今も苦しめる【色彩魔法】……。全員心して掛かれ!」
再び気を引き締め、緊張が走る。
それとは対照的に、カラーはクスクスと嘲笑っていた。
「何がおかしい?」
「ごめんなさい、まだ気付かないのがおかしくて、つい」
「?……」
橙の八天騎士は【索敵】を行う。
「な、これはどういうことだ?!」
「どうした? 何があった?」
「カラーが、もう一人いる……!!」
◆◆◆
怪人達が転移した先は、教会の目と鼻の先。
周囲には教会を警備する軍隊が精鋭500人が護衛していた。
カラーに全滅させられる数分前までは。
「予定通りですね」
「ええ。ええ。ええ。しっかり八天騎士に待ち伏せを受けまして」
「ちゃんと騙されてくれて良かったです。では、行きましょうか」
サルトに指示を出し、結界を物ともせず、教会の扉を破壊し、中へ侵入する。
信者達は結界が破られたことに困惑し、蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑う。
その中で、動じない2人の影があった。
スカァフとバルアルだ。
カラーはバルアルを見て、微笑みながら話しかける。
「あら、お久し振りですね、バルアル」
「そうだな。出来れば再会したくなかった」
「私もです」
「無駄話はよい。悪いが、ここで止まってもらうぞ」
スカァフは槍を構え、カラー達を睨む。
カラーは少し困った顔をする。
「……私、貴女は苦手ね。だからサルト、お願いするわね」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
カラーに応えるように雄叫びを上げ、スカァフ達に突進する。
「ウンガアアアアアアアアアアアア!!!」
大きく振り上げた拳をスカァフ達に向けて叩き付けるが、2人は悠々と回避する。
「そんな大振り、当たるものか」
余裕で躱すスカァフは、隙を見てカラーを襲撃しようとするが、その姿が無い。
(ッ!? どこに消えた!?)
周囲を見渡すと、すでに奥の部屋へ通じる扉の前にいた。
「空間転移か!! 厄介な!」
「スカァフ! 避けろ!!」
悪態をついているスカァフは、バルアルの言葉に反応して、サルトの追撃を躱す。
サルトは巨体ではあるが、その素早さはスカァフに匹敵していた。破壊力は言うまでもなく、当たれば即死級の一撃だ。
大理石でできた床と壁を土壁のように木端微塵にし、いとも簡単に砕いていく。
それが音速に近い動きで襲い掛かって来るのだから、回避するだけで精一杯だ。
カラーはそれを見ながら、
「ここは頼みましたよ。また後で会いましょう」
サルトに一言言って、先へと進む。
◆◆◆
カラーは怪人、ユラマガンド、ウルパを従えて、奥へと進む。
途中待ち伏せしていた兵士と遭遇したが、怪人の空間転移のナイフで首を差され、倒れていった。
しばらく進んだところで、広い空間に出る。教皇の部屋へと繋がる広間だ。
そこで待ち受けていたのは、
「待っていましたよ、カラー」
ラシファを始めとした、ファンバーファ、セティ、ルーの『漆黒の六枚翼』のメンバーと、聖国の兵士達だ。
カラーはニコリと笑う。
「この間ぶりねラシファ。お元気だったかしら?」
「そういう話をもうするつもりはありません。ここで貴女を止めます」
「つれないわね。でもいいわ。そこまで言うなら、無理にでも通させてもらうわね」
ラシファとカラーの魔力がぶつかり合い、空間が歪む。
一時の静寂の後、互いに駆け出し、戦闘の火蓋が切って落とされた。
お読みいただきありがとうございました。
次回は『色彩の堕天使』
お楽しみに
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