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Ep.93 聖都に降り立つは


最後に語るのは



 十二騎士達が激突している頃、聖都では作戦会議を終えたオルカ達が、教会へと移動した。



 教会では信者達が結界を張り、外から簡単に入れないようにしていた。


 中に入った漆黒の六枚翼(ネロ・セラフィム)の面々、枢機卿達、そして教皇。教会の奥へと進み、応接間の様な広い部屋に案内される。


 部屋は壁、床、家具全て白で統一されており、大人数が入ってもゆったりと過ごせる空間になっていた。


「漆黒の六枚翼達はここで待機を。準備が出来次第オルカ殿のみご案内します」


 ミカエルはそう言うと、枢機卿達は教皇の護衛をしながら部屋を後にする。


 残されたオルカ達は、ソファに座ってその時を待つ。


「……こうして7人と一匹だけで顔を合わせるのは久し振りですね」


 ラシファは全員の顔を見ながら呟く。


「折角です。何か報告漏れが無いか、最後の確認をしましょう」

「確認って、何をっスか?」


 ファンが質問すると、ラシファは微笑みながら、


「ありますよね、バルアル」


 バルアルの方を見る。


 バルアルは眉をピクリと動かした後、溜息をついた。


「……まあそうだな。ここにいる面子だけなら言ってもいいかもな」

「何の話ですか?」


 セティが尋ねると、バルアルは嫌な顔をしながら答える。


「カラーの尋問、隠していることがまだあるんだよ」

「「「「「「え?」」」」」」


 ラシファ、スカァフ以外の面々が驚きで声を出した。


 バルアルは苦い顔で話を続ける。


「元とは言え、当時八天騎士だった俺が事情聴取してるのをおかしいと思わなかったか? 一族に不利な証言の証拠隠滅を兼ねて駆り出されたんだよ」

「そんな事じゃろうと思ったわ。で、何を聞いたんじゃ?」


 スカァフの問いに、バルアルはその時の事を思い出す。


「…………ハデスの復活と世界の転変以外に、息子に会うためだと言っていた。亡くなった息子にな」


 バルアルの表情は、とても複雑な表情に変わる。


「ただ、笑ってたんだよ。怒っていたはずなのに、悲しいはずなのに、あんな風に笑ってたのは本当に不気味だった。だから俺は、精神崩壊したと思い、証言は取れないと上に報告した。それを容認したアーサー王達は審議を切り上げて、法律に則って刑を下したのさ」

「隠していたのではなく、信憑性に欠けるから、だったんですね……」


 オルカの言葉に、バルアルは頷く。


「仮にまともだったとしても、民衆の同情を買う訳にはいかないから、公表されなかっただろうな。……とまあ、俺から報告することは以上だ」


 バルアルは話し終え、ソファに深く座る。


 その話を聞いたオルカは、引っ掛かっていた疑問の答えを出した。


(息子に会うため、それってつまり……)


 口には出さなかったが、ほぼ間違いない結論を、自分の中だけで出していた。


(……もしそうだったとしても、私は……)

「他に、報告することがある人はいますか?」


 ラシファの声掛けに、


「ちょっといいか?」


 アージュナが挙手する。


「どうぞ」


 ラシファに促され、アージュナは懐に入れていた紙を取り出す。


「これをオルカに渡してくれって、ヘルウィンが」

「ヘルウィンさんが……?」


 オルカは紙を受け取り、中身を確認する。


 そこには、細かい文字で文章が書かれていた。オルカはそれを速読で読み取っていく。


「…………まさか、そんな……!」


 その内容に、驚愕の表情になる。


「何が書いてあったんだ?」

「えっと、その、怪人の正体について、書かれていました……」

「怪人の?!」


 一番に飛びついたのは、ファンだった。以前真剣に対峙したことがあるからだ。


「はい。怪人の正体、それは……」



 オルカは内容を要約しながら、怪人の正体を語る。


 その内容に、ラシファも表情を曇らせた。


 全てが語られた時には、全員が苦虫を嚙み潰したような表情になっていた。



「まさか、そんなことまで……」

「気分が悪いお話ですね……」


 セティとルーは顔を青くし、気分が落ち込んでいた。


 そんな中、ラシファは顔を上げる。


「怪人についてはよく分かりました。しかしここで気を落としていても仕方ありません。目の前に迫る危機に気持ちを切り替えましょう」


 そう声を掛け、全員が顔を上げて頷き、気持ちを切り替える。


 その時、部屋の扉が開かれ、枢機卿ラファエルが入って来る。


「準備が整った。各自配置についてもらおう」


 ラファエルの指示に従い、オルカ達は持ち場へと向かう。



 ◆◆◆



 聖都 とある小さな教会



 聖都には市民のためにいくつか小さな教会が設けられている。普段から通いやすい様にと、あちこちに造られたのだ。


 その一つに、カラー達『堕ちた林檎』のメンバーである怪人、サルト、ユラマガンド、ウルパの合わせて5人が集まっていた。


 カラーは閉じていた目を開け、長い髪を翻す。


「時間です。行きましょうか」


 カラーの合図と共に、怪人たちはゆっくりと立ち上がる。


 そして、教会の扉を開け放ち外へと歩みを進める。



 怪人がパチンと指を鳴らすと、次元の裂け目が現れる。



 次元の裂け目から魔物が溢れ出し、街へと解き放たれた。


 その魔物を従えながら、カラー達はオルカ達のいる教会へと向かう。



 その表情に、恐ろしい笑みを浮かべながら。





 


お読みいただきありがとうございました。


次回は『林檎と翼』

お楽しみに


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