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Ep.90 真理の先


目的の先にあるモノは



 枢機卿達と共に現れた教皇ヨアンナは、オルカ達に説明を始める。



 ヨアンナが教皇だと知っているアーサー王とガネヴィア、八天騎士達、ラシファ、バルアルは、すぐに片膝をついて首を垂れる。


 それを見て察したスカァフも同じように姿勢を低くする。


 反応が遅れたオルカ達他のメンバーも首を垂れて、姿勢を低くする。


 モーフェンだけは真顔で立ったままだった。


 枢機卿ラファエルが何かを言おうとしたが、ヨアンナに制される。


「よい。モーフェンは余の客人。対等な立場と言っても過言ではない。故に、頭を下げる必要も無いのだ」

「しかし……」

「余が良いと言っている」


 ヨアンナの静かな一喝に、


「……仰せのままに」


 ラファエルはその指示に従う。


 ヨアンナは前に出て、説明を再開する。


「モーフェンから聞いたが、余とオルカの魔力核の波長が酷似しておる。代用するなら最適という訳だ。何より、今の状態が器として最高に良い形になっているから、尚更だな」

「は、発言よろしいでしょうか……?」


 オルカは恐る恐る、頭を下げたまま質問する。


「許そう。申せ」

「その、器とは、何でしょうか……? それと、秘宝も……」


 モーフェンが言っていた秘宝と器という言葉、これがどういった意味を示すのかサッパリ分からない。オルカは説明が欲しいのだ。


 ヨアンナは、フム、と口を鳴らす。


「話す前に、魔術を解いてやろう。でないと、話しても脳が拒否してしまうからな」


 そう言ってオルカに手をかざすと、オルカの頭に魔法陣が出現し、魔法陣を消滅させる。


「これで【洗脳】も【判断操作】も無くなった。思う存分話せるというものだ」

「何故その様な魔術を?」


 モーフェンがヨアンナに突っかかる。


「言えばこやつの精神状態が安定しなくなると思ったからだ。脆弱なのはお主も知っているだろう?」


 ヨアンナの返しに、モーフェンは黙り込んでしまった。


 ヨアンナは改めて説明を再開する。


「まずは秘宝から説明しよう。秘宝はその昔、ハデスを封印するために使用された宝珠だ。四国がそれぞれ保管しておったのだが、聖国の秘宝は18年前にカラーが強奪。他の3つもそれぞれの国で管理していたが、今はカラーの手の中だろうな」


 溜息をつきながら、呆れた物言いで話す。


 ファンはルーに耳打ちで、


「(あのキヌテ建国記、本当の話だったんスね)」


 コソコソと話しかける。


「(みたいですね。絵物語かと思っていました)」

「(俺もだ)」


 そんな不真面目な会話をしているのを余所に、ヨアンナは説明を再開する。


「その秘宝を使えば、ハデスが眠る冥界の門が開き、ハデスが復活できる道を形成できるという訳だ」

「しかし、それだけでは道を作っただけ。ハデス自身をとうやってこちらの現世に引っ張り出すかが問題だった。そして考えられたのが、無理矢理着地させる【瞬間移動】というわけだ」


 モーフェンが間に入り、話を続ける。


「その【瞬間移動】に必要な条件は、知っての通り『座標』だ。その役割を果たすのが器になる者だ」

「そして器にはもう一つ役割がある。それはハデスが受肉するための魔力だ」


 ヨアンナはオルカに指を差す。


「その波長が合うのが、余とオルカだったのだ。故に、オルカを狙っている、という訳だ」


 ヨアンナとモーフェンが説明を終えると、スカァフが挙手する。


「オルカを狙うのは、教皇猊下よりも弱いからか?」

「察しが良いな。同性能の物を手に入れるなら、手に入れやすい方を選ぶ。当然の考えだ」

「なるほどのお……」


 スカァフは返答を予想出来ていたが、実際に聞くとどうも嫌な気分になる。


「さて、ハデスを復活させて何をするのかという話だが、ここから先はモーフェンが適任だろう。頼むぞ」


 一通り説明を終えたヨアンナは、モーフェンに説明を頼む。


 モーフェンは表情を変えずに説明を引き継ぐ。


「さっきバルアルが言っていたカラーの証言。あれは間違いなくハデスの力を使って世界の真理そのものを書き換えようとしている。ハデス降臨の能力は、現世と常世の反転だ」


 その言葉に、オルカ、スカァフ、ラシファ、バルアルは凍り付く。


 ファンとルーはいまいちピンと来ていなかった。


 それを見たモーフェンは、真顔で面倒臭そうな雰囲気を出す。


「…………簡単に言えば、生きている者達をまるごと殺そうという皆殺しを考えているということだ。こういえば理解できるか?」

「それってヤバいじゃないっスか!!?」


 今の反応で理解できたと判断したモーフェンは、話を続ける。


「万が一でも成功すれば、この国どころかこの世界が死者の世になる。全員が死人となり、生命に終止符が打たれる最悪のシナリオだ」

「ど、どうしてそこまで……? この世界が憎いから、ですか……?」


 オルカの問いに、モーフェンは首を横に振る。


「そこは本人に聞くしかなかろう。真意までは正確には当てられない」

「そう、ですか……」


 オルカは何か引っかかるものを感じたが、それを言語化できずに、呑み込む他なかった。



 ◆◆◆



 説明を終えた一同は、いよいよ本題に入る。


 全員ヨアンナの許可を貰って頭を上げ、再びテーブルを囲む。


 ヨアンナは無言でアーサー王に指示し、説明を促す。アーサー王も頭を下げてから、説明を始める。


「前日にも言った通り、漆黒の六枚翼の面々にはこの聖都でカラーの襲撃に備えてもらう。狙われているオルカ女史は教皇猊下と枢機卿と共に教会の奥で待機、で、よろしいのでしょうか?」

「それでよい。もっとも、余と枢機卿達であれば過剰戦力と言っても過言ではないがな」


 ヨアンナは余裕のある発言だが、決して油断はしていない口調だった。


 アーサー王は説明を続ける。


「教会の周辺を八天騎士達で護衛。漆黒の六枚翼は教会内で待機。我とガネヴィアは城にいるが、万が一襲って来たとしても迎え撃つのみだ。そしてモーフェンだが……」

「私は聖都上空で待機している。異変があり次第動こう」

「頼むぞ」


 一通りの説明を終えた後、ラシファが小さく挙手する。


「ところで、十二騎士達はもう接敵を?」


 その質問に赤の八天騎士が答える。


「時刻としては間もなくと言ったところだ。まあ、問題はなかろう」


 それを聞いたオルカは、バルアルに小さな声で尋ねる。


「(軍隊と一緒とはいえ、本当に大丈夫なのでしょうか……?)」

「(? ……ああ、そうか。普通はそう思うか)」

「?」

「(オルカ、十二騎士は軍隊を引き連れていない。十二人だけで100万の大群を相手にするんだよ)」



 ◆◆◆



 聖都から十数㎞離れた雪原



 そこには100万の人の大群が押し寄せ、生気の無い顔で雪原を行進している。


 立ち向かうのは十二騎士。


 リーダーであるアグラヴェインが、剣を天に掲げる。


「十二騎士、出陣!!」





お読みいただきありがとうございました。


次回は『十二騎士、開放』

お楽しみに


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