表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/117

Ep.80 恋人として Ⅱ


美術館デートにて



 オルカとアージュナがデート中



 ウェイガーとメイドリッド、そしてギャラヘッドの3人が、倉庫整理の仕事に追われていた。


 魔術的に貴重な宝石、武器があるため、知識のある騎士でないと触れる事すらできないのだ。


 そのため、割り当てられた騎士達だけでやるしかない。


 ウェイガーは不満げな表情で、


「今日の担当のパラメデスはどこへ行ったんだ……」


 忌々しそうに呟いていた。


「そう言うな。パラメデスが他の仕事を片付けてくれたのだから、これだけで済んでいるんだ。むしろ感謝しないとな」

「それはそうだが……」

「これが一番時間かかるだろ!!」


 少し離れた所で武器を整理していたメイドリッドが叫ぶ。


「下手しなくても一日かかる量だろこれ! パラメデスの野郎、わざとこれだけ押し付けたな!!」

「だからでは?」


 一日かかりそうだから他の仕事を代わりに片付けてくれたのでは、と思うギャラヘッド。


「あ、ギャラヘッド様。少々よろしいでしょうか?」


 そこへ、兵士が入って来る。


「どうした?」

「追加で倉庫に入れる物をお持ちしました。先日、パラメデス様が今日運び込むようにと言われまして……」

「前言撤回」


 パラメデスが笑顔の裏で、何を企んでいるか分からなくなったギャラヘッドだった。



 ◆◆◆



「えっくし!?」


 同時刻、パラメデスは美術館の一角で、くしゃみをしてしまった。


「何? 風邪?」

「私の噂をしているピーポーがいるのかも」

「まさか」


 気を取り直して、視線の先にいるオルカとアージュナを監視するのだった。



 オルカとアージュナは、一枚一枚、絵画を見て歩いていた。


 どれも美しく、精巧に描かれたものばかりで、圧倒されるばかりだ。


 2人は並んで歩きながら、絵画の内容を語り合う。


「これはエルフ族の収穫祭だな。打楽器の演奏で自然に感謝している様子がよく描けている」

「火は起こさず、月明かりだけで演奏し続けている光景は、とても忠実に描けていますね……」


 互いに持っている知識で語り合い、より深く絵画を楽しんでいた。


 しばらく進んでいくと、巨大な絵画が並ぶ場所へ辿り着く。


 高さ9m、幅4mにもおよぶ絵画が、数枚展示されており、どれも圧倒的なスケールで描かれている。


 神話の一場面、歴史的出来事の一コマ、重要性の高いものが題材になっている。


 その中の一つ、『魔神討伐』の絵で、オルカの足が止まる。


「この絵……、史実通りに描かれてますね……」


 その絵には、あらゆる種族が力を合わせ立ち向かい、先頭に立つ4人の戦士が秘宝を掲げ、災厄の魔物を封印する様子が描かれていた。


 一枚の絵にストーリー仕立てで描かれており、巨大な魔物に向かって大勢が武器を持って突き進んでいる。難しい構図だが、分かり易く組み立てられていた。


 オルカが見上げていると、アージュナもその絵を見る。


「キヌテの魔神討伐か。これが実際に起きたっていうのが信じられないな」

「そうですね……。魔物の体長が100mもあったとか、秘宝がどこかに隠されてしまっているとか、あやふやになってしまっている部分が多いですから……」


 互いに知識を共有しながら、絵をじっくり見ていく。


「……ん?」


 その時、アージュナが何かに気付く。


「どうしましたか……?」

「いや、あの宝石、前にどこかで……」


 視線の先には、赤い球体の宝石が描かれている。


 アージュナは過去の記憶を辿り、該当する物を探るが、


「…………駄目だ。あり過ぎて絞り切れない」


 国の宝物庫、商人から見せてもらった宝石、ジュエリーショップ等、色々な所で宝石を見たことがあるので、今この場では絞り切れなかった。


「ごめんオルカ。思い出せなかった」

「いいですよ……。思い出せた時に話して頂ければ……」

「……ありがとう」


 互いに顔を顔を見て笑顔を見せあい、次の絵に進む。


 その様子を、パラメデス達が影からこっそり見守る。


「いやあ、ブラックコーヒーが砂糖水になりそう……」

「(二人の展開に)速さが足りない」


 感想と愚痴をこぼしながら、追跡を続ける。



 ◆◆◆



 日が天辺を超え、少し傾いた頃。



 2人は美術館を出て、次のデートスポットへ向かう。


「オルカはどこへ行きたい?」


 アージュナがオルカに尋ねる。


「そうですね。じゃあ……」


 次の目的地を言おうとした時だった。


 オルカの全ての動きが止まった。


 まるで人形の様に固まり、ピクリとも動かなくなる。


「オルカ?」


 不自然な止まり方をしたオルカを見たアージュナは、思わず声をかける。


 肩に触れようとした瞬間、


「カフェにしませんか……? 一度休憩を挟んでからがいいと思うのですが……」


 突然動き出し、何事もなかったかのように喋り出す。


 アージュナは、目の前で起きた出来事に戸惑っていると、


「……どうかしましたか……?」


 オルカが小首を傾げてくる。


 我に返ったアージュナは、


「いや、何でもない。じゃあ行こうか」


 平静を装い、オルカの手を握って、一緒に歩き出す。


 後方から見ていたパラメデスとランスロットは、


「……今のってさ」

「ええ、間違いない」


 互いに目を合わせ、ゆっくりと立ち上がる。


「ちょっち事情が変わっちゃったねー」

「仕方ないわよ。……気を引き締めて行きましょう」

「りょ!」


 真剣な表情で、尾行を続ける。




 


お読みいただきありがとうございました。


次回は『恋人として Ⅲ』

お楽しみに


もし気に入って頂けたなら、広告の下にある☆☆☆☆☆からの評価、感想、レビュー、ブックマーク登録をよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ