Ep.8 幕間『アイシーンの企み』
2代目ギルドマスターは何を見る
オルカが解雇されてから8日、メイドリッドが事件を起こした翌日
アイシーンはギルドマスター室で事務処理に追われていた。
メイドリッドが黄金の暁のメンバーに重傷を負わせ逃走した。更に周辺の無関係な建物まで破壊したため治安当局に追われる事態にまでに発展し、事は大きくなっていた。
(メイドリッドめ、役に立つと思ったがまさかこんなことをしでかすとは……、完全に誤算だ)
関係各所に詫び状を送ったりメイドリッドが壊した建物全ての損害賠償を払う手続きを進める。
アイシーンが頭を抱えていると、マドゥアが入って来た。
「根回しは済ませたわよ」
「助かるよマドゥア。とりあえずメイドリッドに全ての罪を被せそうだな」
マドゥアは口が上手く、今まで何百人もの人間を騙し、欺き、陥れてきた。
オルカの悪評を流し、所持品を処分するよう指示したのは彼女だ。
「それにしてもメイドリッドは何に激怒したのかしら?」
「かつての仲間の所持品が燃えていたら怒るんじゃないのか」
「私のせいじゃないわよ。馬鹿共が勝手に燃やしたのよ」
「分かっているさ。君はそんなヘマをしない」
アイシーンは椅子にもたれかかる。
「準備は上々。役立たず共は切り捨てたし、貴族との関係も確かなものになった。後は懇意にしている第2王子が王位継承すれば晴れて俺はグランドギルドマスターになれる」
邪悪を孕んだ笑みで野望を言葉にする。マドゥアはアイシーンにゆっくりと抱き着いた。
「そして私とあなたは貴族の仲間入り、素晴らしい計画ね」
「そのためにもギルドの地位を確かなものにしないとな。俺の理想とするギルドは、個々が一騎当千の力を持つ神話のような英雄ばかりがいるギルドだ。故に、非戦闘員なぞ不要。真の強者こそが絶対なのだ……!」
アイシーンは拳を握りしめた。
「オルカがギルドの資金を賄っていたのには驚いたが、その辺はマドゥアに引き継いでもらうぞ」
「あいつの後釜なのは少々癪だけど、魔術協会へのコネクションができるなら喜んで。あと、あいつの装備貰っていいかしら? 魔術協会お墨付きの伝説級の」
「構わないさ。むしろ普段から着てギルドの宣伝も頼むよ」
「いいわよ」
「さあ、忙しくなるぞ……」
お読みいただきありがとうございました。
次回は『昇格、新たな一歩』
お楽しみに。
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