表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/117

Ep.79 恋人として Ⅰ


初デート



 晩餐会の翌日



 特にトラブル(?)も無く終わり、今日はラシファとバルアルのみが聖国の作戦会議に呼ばれているため、他のメンバーは自由行動となった。


 無事にデートにこぎ着けたオルカとアージュナは、それぞれ準備を整えて、待ち合わせをすることにした。


 

 先にアージュナが、聖都で有名な待ち合わせ場所高さ5mもある『教皇像』の前で待っていた。


 待ち合わせ時間の30分前には待っており、オルカを待たせないようにしている。


(そろそろかな)

「アージュナさん!」


 そこへ、オルカが普段の冒険者服でやって来る。


「すいません、お待たせして……」

「いや。俺も今来たところ。それじゃあ行こうか」


 アージュナは優しい笑顔で、オルカの手を引く。


「は、はい……!」


 オルカもつられて笑顔になり、自然と手を繋ぎ、アージュナと共に歩き出す。


 

 その様子を、影から見守る存在が二人。


 パラメデスとランスロットだ。


 簡単な変装をしているが、知っている人物が見れば一発で見破られるしょうもない変装だ。


「ほっほー、いきなり行動するとは、やるねーオルカっち」

「思った以上に行動力があるわね」


 感心しながら追跡を開始する二人。


「ところで何でランランがいるの?」

「貴女が勝手な事をしないか監視しに来たのよ」

「信用ゼロかー」


 パラメデスはヘラヘラ笑う。


「安心してよー。私はそんな野暮なことはしないよ」

「なら何故ウェイガー達に仕事を押し付けてまでこんなことを?」

「そりゃあ、邪魔をさせないためだよ」


 ニッと笑うパラメデスを見たランスロットは、何を企んでいるか察する。


「全く、貴女という人は……」

「へへへ~」


 2人はオルカ達に気付かれないよう、距離を開けて追跡を続けるのだった。


 ◆◆◆


 オルカとアージュナは、ガイドブックを頼りに、最初の目的地へと向かう。


 温泉があちこちを流れる街並みを楽しみながら、20分程歩くと、最初の目的地に到着した。


「ここだ。『聖都美術館』」


 まず二人が訪れたのは、聖都一の規模を誇る美術館だ。


 絵画、彫刻等の展示物数は、四国同盟の中で一番所蔵している。中には歴史、魔術にまつわる専門的な展示品も展示されている。


 王族として、こういった美術品の価値を教え込まれたアージュナと、魔術的に関係性が高い展示品に興味のあるオルカには、うってつけのデートスポットだ。


「早速入ろうか」

「はい……!」


 2人は手を繋ぎながら、美術館へと入っていく。


 もちろん後からパラメデス達も入場する。



 中は5階建てでとても広く、以前尋ねた獣国の城にも負けない高さをしている。


 展示物の種類によってコーナーが分かれており、1日で全てを見て回れるか分からない程、量が多い。


 オルカとアージュナは、まず絵画のコーナーから見ていくことにした。


「絵画は事件、歴史、神話等を描いている物が多いです……。特に、魔術関連の歴史は興味深くて……」


 楽しそうに喋るオルカと手を繋ぐアージュナは、その様子を見て、微笑んでいた。


(生き生きしているオルカ、可愛い)


 心の中でそんなことを思いながら、絵画コーナーへ歩を進める。


 それを見ていたパラメデス達は、


「うーわ、ホヤホヤ過ぎんでしょ」

「初々しいわね……」


 あまりの恋人初心者な光景に、思わず感想を漏らしていた。


 ◆◆◆


 一方で、セティ、ファン、ルーは、公衆大浴場にいた。


 湯につかりながら、血行を良くしている。


「あー……、これはいいっすねー……」

「そうだな……」

「ですねー……」


 全身をリラックスさせている中、ファンはふと、上を見上げる。


「…………今頃兄貴とオルカ姉さんはデートっすか……」

「そうだな」

「ですねー……」


 昨日のアージュナとオルカの様子を見て、どう考えてもデートだと3人は確信していた。


 なので、3人は今日一日、温泉で身体を癒すことにした。


 これなら下手に外を歩いて遭遇する可能性はゼロになり、2人に気を遣わせる心配も無い。


 それでいいと思っていたが、


(……何だろう、モヤモヤする……)


 ファンだけは少しばかり違った。

(キッパリ諦めて、静かに応援しようと思っていたのに、胸のどこかで、引っ掛かっている感じが取れない)


 名も分からい感情に、悶々とする。


「何だろうなあ、この感情は……」


 誰も聞いていない独り言は、空しく空に消えていくのだった。






お読みいただきありがとうございました。


次回は『恋人として Ⅱ』

お楽しみに


もし気に入って頂けたなら、広告の下にある☆☆☆☆☆からの評価、感想、レビュー、ブックマーク登録をよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ