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Ep.77 雪月の下で


晩餐会の途中で



 各所で色々な盛り上がりをしている晩餐会



 ラシファはアーサー王、ガネヴィア、八天騎士達と談笑していた。


「こうしてまた会えて嬉しく思うぞ、ラシファよ」

「お褒めの言葉、恐悦至極でございます」


 アーサー王の言葉に、ラシファは微笑みながら感謝の言葉を述べる。


「相変わらず丁寧で気持ちのいい言葉遣いですね。本当に辞めてしまったのを惜しく思います」

「王妃様も、相変わらずお美しい」


 ラシファはガネヴィアにも挨拶する。


「お世辞が上手いのも変わらず、か」


 ガネヴィアは小さく微笑み、ラシファと会えたことを嬉しく思っていた。


 その周囲を、八天騎士が取り囲んでいた。


 八天騎士は、屈強でありながら繊細なデザインをしたフルプレートアーマーを、全員がマントと共に装着している。違いがあるのは、赤、青、緑、黄、紫、橙、白、黒の八色で分けられているくらいだ。


『元気で何よりだ。同志よ』

『我らも『穢れ』のせいで辞めて行ったラシファとバルアルのことを、不憫に思っていた』


 赤と青の八天騎士が、鎧越しに話し始める。


 彼らは規則上、任命されてからは名前と素顔を明かしてはならないことになっている。


 八天騎士は高位の職種になるため、周囲の関係者の影響は大きい。それを避けるために、そのような規則が設けられている。


「お気遣い感謝します。私も久し振りに会えて嬉しいです」

『私もだ。元『白の八天騎士』、ラシファよ』


 

 ラシファは冒険者になる前、聖国の八天騎士に所属していた。


 色は白。王にも実力を認められた、純白とも呼ばれた崇高な騎士だった。



 その座を退いたのは、カラーの事件が関係している。



『こうして会えたのは嬉しいが、奴と絡んでいるとなると、複雑な気分だ』


 黄色の八天騎士は、少し俯きながらつぶやく。


 ラシファも少し俯きながら、


「そうですね。『穢れ』が完全に治ってから会いたかったのですが……」


 どこか悔やんだ表情だった。


 それを見ていたガネヴィアは、


「その事ですが、おそらく治すことも今回の目的に含まれているのでは?」


 突然口を挟んできた。


 その内容に、一同注目する。


 ガネヴィアは話を続ける。


「今回の招集は、教皇猊下の独断で決まったものです。詳しい事は私もアーサーも聞かされていません。『漆黒の六枚翼を聖国に招集せよ』とだけ言われたのです」

「それはまた、随分と曖昧な……」

「曖昧だからこそ、分かる事もあります。何故個人ではなく、集団で呼んだのか。あの方は無意味なことはしない方です。なれば、ラシファが呼ばれたのにも理由があるはず。故に、治すことも入っているのではと推測します」


 ガネヴィアの説明が終わり、一同は静まり返る。


 ラシファは微笑みながら、


「確かに、あの方ならそういう事も考慮されてるかもしれませんね」


 ガネヴィアの推測に同意する。


 

 ヨアンナが何を考えているかは分からない。だが、二手三手先を行く人物であることは、確かだ。



 ◆◆◆


 

 ラシファ達が真剣な話をしていた頃



 オルカはパラメデスとグレースに話しかけられていた。


「オルカっちはさー、どんな冒険をしてきたん? うちは全然聖都から出たこと無いから分かんないんだよねー」

「そ、そうなんですか……」


 絡んでくるパラメデスを、オルカはなんとか対処する。


(悪意は無いけど、こうやってグイグイ来るタイプは苦手です……)


 口には出さないが、どうしても苦手意識がぬぐえず、顔が引きつっていた。


 そこに、グレースが間に入って来る。


「パラメデスちゃん、あんまり困らせちゃダメですよ。ただでさえ長旅でお疲れなんですから」

「むー、確かに。ゴメンねオルカっち!」


 パラメデスが謝っている傍で、グレースはオルカにだけ見えるようにウィンクする。


 気を遣って、パラメデスから引き離してくれたのだ。


 オルカは小さく頭を下げる。


「んー、じゃあさ、短い質問でいい? それならオッケーしょ!」

「そ、それくらいでしたら……」

「よきよき! じゃあ早速一つ目! 彼氏いる?」


 いきなりぶっこんできた質問に、オルカの喉が一瞬詰まる。


「い、い、い、いますけど……」


 何とか答えるオルカ。パラメデスは立て続けに質問する。


「おおう、やっぱりいるか! じゃあじゃあ」




「セックスした?」




「ごぶふ?!!」


 オルカが噴き出したのと同時に、グレースとランスロットの蹴りが、パラメデスの足に直撃する。


「あいたあ?!!」

「デリカシー!!」

「失礼が過ぎる!!」


 崩れながら双方から怒られ、崩れ落ちそうになる。


 それでも手に持ったグラスから飲み物を零さないのは、いい体幹していると言わざるを得ない。


 その隙にオルカは、真っ赤になった顔を冷ますため、一度会場のバルコニーに出た。


 外は雪に覆われ、見渡す限りの銀世界となっていた。バルコニーは雪かきがされており、床が綺麗に見えている。


 バルコニーの柵に寄りかかりながら、オルカは深呼吸する。


 雪が留まるほどの冷たい空気が、オルカの熱くなった身体を冷ます。


 程よく冷めて落ち着いたところで、夜空を眺める。夜空には、こちらを覗き見るかのように丸々とした満月が輝いていた。


 白くなる息を、何度も吸ったり吐いたりしていた時、


「オルカ」


 後ろから、アージュナが近付いてきた。


「アージュナさん……」


 オルカは振り向いて、アージュナと向き合う。


「どうなされたんですか……?」

「それはこっちのセリフだ。急に外に飛び出すから、何事かと思ったぞ」

「ご、ごめんなさい……」


 謝るオルカの頬に、アージュナの手が伸びてくる。


 手はソッとオルカの頬に触れ、優しく撫でる。


「大丈夫なら、よかった」


 アージュナは、安堵した表情でオルカを見つめる。


「アージュナさん……」


 そんなアージュナを、オルカが見つめ返す。


 オルカは、見つめているアージュナに、一つの疑問を投げかけた。


「アージュナさんは、私を、どうしたい、ですか……?」


 唐突な質問に、アージュナは戸惑う。


「ど、どうしたんだ急に?」

「い、いえ、その、付き合ってまだ数日しか経ってませんから、今後どうしたいかとか、全然決めてないな、と……」


 付き合い始めたとはいえ、ゴルニア王国の件があり、全く恋人らしいことをしていない。


 故に、付き合っているかどうかの質問に関して、全くないと答えざるを得ない。


 それはあまりにも寂しいし、オルカ自身も、疑問に思ってしまう。


 そんな不安を抱えているオルカだが、アージュナもまた、同じ不安を抱えていた。


(確かに、付き合い始めてからまだ日が経っていない。だから恋人関係の自覚が薄い。その事にオルカは不安を感じているんだ)


 アージュナは逆の手でオルカの手を握る。


「なあ、オルカ」

「はい……?」


 アージュナは勇気を振り絞り、


「明日、デートしないか?」


 オルカをデートに誘った。






お読みいただきありがとうございました。


次回は『幕間:影の中で』

お楽しみに


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