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Ep.75 20の騎士の晩餐会 Ⅱ


集まるは類



 まさかの歓迎を受けたオルカ達。



 驚いている暇もなく、


「さあさあこちらへ! 皆様がお待ちですよ!」


 虎を連れた少年に背中を押され、会場へ入れられる。


 会場は、立食パーティーの形式を取っており、光り輝くシャンデリアの下、いくつものテーブルが並べられ、バイキング料理が乗った大きなテーブルがある。


 会場内で待っていた騎士達と女王、そして王に迎えられた。


 アーサーはグラスを片手に、


「よくぞ来た、漆黒の六枚翼(ネロ・セラフィム)の冒険者達よ! 今宵は無礼講。存分に楽しむといい!!」


 晩餐会の開始をいきなり宣言する。


 展開が早すぎて事態が呑み込み切れてないオルカ達。その後ろでラシファとバルアルは苦笑いしながら、


「相変わらず説明が抜けますね。あの方は」

「気を遣って挨拶とか飛ばしたんだろうけど、いきなりあんなこと言われてもなあ」


 アーサーの言葉の足りなさを指摘するのだった。


 それを見かねて動いたのは、アーサーの隣に立つ女王ガネヴィアだった。


「失礼。我が夫アーサーの挨拶が簡潔過ぎました。ので、私から挨拶をやり直させて頂きます」 


 一国の主の手前、あれこれ聞くのも失礼だと思い、何も言わなかったオルカ達に、給仕の人達から酒が入ったグラスが渡される。


「漆黒の六枚翼一同、遠い所から来てもらい、感謝する。今宵は其方たちを歓迎する晩餐会、存分に楽しんでいってほしい」


 挨拶を終えたガネヴィアは、グラスを掲げる。


「それでは改めて、遠路はるばる来た客人達の晩餐会をここに」


 そう言うと、騎士達もグラスを掲げる。オルカ達もつられてグラスを掲げた。


 そして、


「乾杯!!」


 ガネヴィアが乾杯の音頭を言い、騎士達も


「乾杯!!!」


 と声を合わせて乾杯の声を上げる。

 



 挨拶が終わり、晩餐会が始まる。


 オルカ達それぞれに人が集まり、話しかけられていた。



 オルカの周囲には、女騎士達が集まっていた。


「初めまして、私は『ランスロット』。貴方がウェイガーが言っていたオルカさんね。今日は楽しんで行って頂戴」

「は、はい。ありがとうございます……」


 180㎝もある背丈に、水色のロングヘアが特徴的な女性に元気よく話しかけれたオルカは、迫力に負けて緊張していた。


 加えて、鎧の下に光沢のある革のスーツを着ていて、威圧感が強い。


「どうやら緊張しているようだな」


 そう言ってランスロットの背後から現れたのは、眼鏡を掛けた聡明そうな女性だ。


 錬金術の学者の様な格好をし、騎士とは思えない風体をしている。


 片手で眼鏡を直し、


「初めましてオルカ様。私が『トリストラム』と申す者です。最初は緊張すると思いますが、どうかご安心を。私がいれば三倍力ですので」


 決め顔でそう言ってくる。


「は、はあ……」


 抑え気味ではあるが、一風変わった騎士に驚いてしまう。


「……思っていた反応と三倍違う」

「そんな挨拶したら誰でもこんな反応するわよ……」


 ランスロットに呆れられるトリストラムだった。


 そんな二人を横目に、


「はいオルカっち! どうぞ!」


 突然オルカの前に、料理を沢山乗せた皿が差し出された。


 オルカは驚いて一歩引く。


 皿を差し出してきたのは、褐色肌の女子だ。


 歳はおそらく十代後半。騎士というより獣使いの様な格好をしている。


「何か動けてないっぽいから、料理持ってきた! 遠慮しなくていいからね!」

「あ、ありがとうございます……」


 元気過ぎる少女に押されながら、料理の乗った皿を受け取る。


「ちょっと『パラメデス』ちゃん! そんなことしたらオルカさんの両手が塞がっちゃうよ!」


 褐色の少女もといパラメデスの後ろから、クリーム色の髪の少女が追って来る。


 控えめに言っても美少女だが、ドレス越しでも分かる、しっかりとした体格が見える。


「あ、マジだ。こりゃうっかり」

「もう! ……すみませんオルカさん」


 少女はペコペコと頭を下げる。


「い、いいですよ……。お皿はテーブルに置けば問題ありませんから……」


 オルカは微笑みながら、少女に頭を上げるよう促す。


「ありがとうございます……」


 少女は頭を上げた。


「あ、申し遅れました。私は『グレース』というものです。そしてあちらがパラメデスちゃんです」

「よろー!」

「よ、よろしくお願いします……」


 挨拶を交わし、顔を見合わせていると、


「……あれ?」


 オルカは、グレースの顔を見てあることに気付く。


 ウェイガーとメイドリッドによく似ているのだ。


「あの、グレースさん。ウェイガーさんと、メイく……メイドリッドさんの、親戚さんですか……?」

「いえ、親戚ではなく、二人は私の兄です!」

「え」


 オルカはウェイガー達の両親が事故で亡くなり、家族は二人だけになったと聞いていた。


 それなのに他の家族がいることに、頭が混乱した。


「…………どういうことでしょうか……?」

「どういう事とは?」


 軽いパニックになるオルカ。


 その様子を見ていたランスロット達は、


「何か説明が足りてない雰囲気ね」

「三倍説明が足りていないな」

「おーいグレっち、もっと言葉増やせー」


 事態を察知して、フォローに入った。



 ◆◆◆



 スカァフとルーもまた、騎士達に話しかけられていた。


「何じゃ、ドレスコードを守る必要はあまり無かったのお」

「ですねえ」


 ランスロット達の服装を見て、そんなことをぼやいていた。


「あれは彼女たちが特殊なだけですじゃ。何も気にすることはありませぬぞ」


 そう言ってフォローしたのは、グレースの育ての親、ドワーフの老騎士『ボーサ』だ。


 ボーサはスーツをしっかりと着込み、正装している。


「しかし、あなたのような美しい方がS級の槍使いとは、世の中広いものですなあ」

「世辞を言っても何も出ぬぞ」

「既に目の保養をもらっておりますぞ」


 フェフェフェと笑い、スカァフを褒める。


「……そうか」


 悪意が無い事を見極め、平然と返したスカァフだった。


 ルーはお座りしながらその様子を見ていた。


(スカァフ様、ちょっと引いてる……?)


 そんなことを内心思っていると、


「どうした忠犬。会話しに行かないのか?」


 虎が話しかけて来た。


 ルーは虎の方に視線を向け、


「私はルーと申します。忠犬と言ってくれて嬉しいですが」


 自分の名を名乗る。


「名乗られた以上名乗り返さねばなるまい。俺は精霊獣『リチョウ』。よろしくな」

「……やっぱり精霊獣でしたか」


 フッと、虎はほくそ笑む。


「流石に分かるか」

「それはもう、同じ存在ですから」

「そうだな。分からなかったらそれは偽物だ」

「ですね」


 他愛ない会話をしながら、会場全体を見渡す。会場は和気あいあいとした雰囲気で、話が弾んでいるように見える。


「なに黄昏てるんですか。二人共」


 そう言って話しかけてきたのは、さっきの少年騎士だ。


「これからの精霊獣について語っていたところだ」

「全くそういう風には見えなかったよ」


 少年はルーの前でしゃがみ、視線をルーに合わせる。


「こんにちはお客様。僕は十二騎士の『イヴァン』。リチョウの相棒だよ」


 イヴァンが自己紹介をすると、リチョウがすり寄る。


「年端も行かぬ相棒だが、頼りになるぞ」

「信頼しているのですね。素晴らしい」

「ありがとう!」


 イヴァンが笑顔で答えると、リチョウとルーもつられて笑顔になるのだった。




 そんな中、アージュナとウェイガーが睨み合いを始めていた。





お読みいただきありがとうございました。


次回は『20の騎士の晩餐会 Ⅲ』

お楽しみに


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