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Ep.74 20の騎士の晩餐会Ⅰ


晩餐会の始まり



 夕方、オルカは無事に退院できた。


 

 医師からはくれぐれも無理はしないようにと釘を刺されただけで済んだ。


 ウェイガー達に連れられ、待っていたラシファ達と合流する。


「オルカ!!」


 アージュナが駆け寄り、オルカの無事を確認する。


「もう大丈夫なのか?」


 心配してくれるアージュナに、オルカは微笑みながら、


「はい、もう大丈夫です……。ご心配おかけしました……」


 そう答えた。


 アージュナはその言葉を聞けて、ホッと胸を撫でおろす。


 それを見ていたウェイガーとメイドリッドの表情が、心なしか険しくなる。


「さて、これで全員揃ったことですし、晩餐会の会場へ行く準備をしましょうか」


 ラシファが笑みを浮かべながら少し大きな声で発言し、全員の注目を集める。


「会場の場所は王宮なので、一度着替えてから向かいましょう。流石にこのままという訳にはいきませんから」


 確かにオルカ達は冒険者としての格好のままだ。この格好で謁見の間に通してくれたのが不思議なくらいだ。


 ウェイガー達も、鎧を着込んだままなので、とても晩餐会には似合わない。


「確かに、お互いにこのままでは王に失礼だ。相応しい格好に変えるべきなのは確かだ」


 ギャラヘッドはラシファの意見に同意する。


 ウェイガーとメイドリッドも、小さく頷いて賛成していた。


 それを見たラシファは、


「決まりですね。では、時間までに各自着替えを済ませましょう」

「いや、ちょっと待ってくださいよギルマス」


 勝手に話を進めるラシファを止めにかかったのは、ファンだった。


「着替えって言っても、肝心の服がないっすよ。それも王様の晩餐会に合った服なんて……」

「貸してくれる店を用意しています。今から行けば十分間に合いますよ」

「準備万端っすか……」


 用意が良すぎることに関心と呆れを覚えるファンだった。


 

 ◆◆◆



 病院から数分歩いた場所に、その店はあった。



 こじんまりとした、昔ながらのデザインをしている店の中は、シックな雰囲気で統一された内装をしている。


 店主は歳のいった女性だ。


 シワが遠目から見ても大量に入ってるのが分かる姿をしているが、背中はしっかりと伸び、凛々しさまで持ち合わせている。


 ラシファが話しかけると、しっかりと受け答えができ、はっきりと喋れている。


 そんな老婦人との会話を済ませたラシファが、店の中にいるオルカ達のところに戻って来る。


「それでは早速着替えましょうか。各自準備を」


 指示を聞いたオルカ達は、奥から湧いて出て来た店員に連れられ、貸衣装に着替えさせられる。


 ラシファ達男性陣には、晩餐会のドレスコードに合ったフォーマルスーツが用意され、オルカとスカァフにはパーティードレスが用意されていた。


 それぞれの体格に合ったもの、肌の色と相性の良い色合い組み合わせが揃っている。


 どれも華やかで、それでいて悪目立ちしていない、丁度いいデザインだ。


 無論、靴や小物も付いており、魅力が更に上がっている。


「これは、すごいですね……」

「オルカも似合ってるぜ」


 深紅のドレスに身を包んだオルカに、ワインレッドのフォーマルスーツを着たアージュナが微笑んで褒める。


「皆さまお似合いです!」

「お前もな」


 ルーも、首輪を蝶ネクタイに変え、可愛らしくも凛々しく着替えていた。セティが頭を撫でて褒めてあげた。


 全員着替えたところで、迎えの馬車がやって来た。 


「それでは皆さん、行きましょう。王の晩餐会へ」


 ラシファが先頭に立ち、馬車へと乗り込む。


 馬車はオルカ達を乗せ、ゆっくりと王宮へ向かった。



 ◆◆◆



 王宮に着くと、大勢の兵士、執事に出迎えられた。



 ラシファから先に降り、バルアル、スカァフ、アージュナ、セティ、ルーと、順番に降りていく。


 最後にオルカが降りる時、


「オルカ」


 アージュナが手を差し伸べて、降りるのを手伝う。


「あ、ありがとうございます……」


 オルカは差し伸べられた手に手を乗せ、ゆっくりと降りる。


 だが、オルカは慣れないヒールで、足元がもつれてしまい、


「きゃ」


 小さな悲鳴を上げながら、前のめりに倒れそうになる。


 アージュナは咄嗟に前に出て、オルカを受け止める態勢に入る。


 結果、アージュナの胸に飛び込み、しっかりと抱き留められた。そして、互いの心臓の鼓動が、ハッキリと分かるほど密着する。


「あ、ありがとうございます…………」

「っ」


 オルカの上目遣いの顔を見た瞬間、アージュナの心臓が、跳ねる様に大きく鼓動する。


 血管が膨張し、全身が熱くなる感覚に襲われる。何より、この感覚に覚えがあった。


 アージュナは慌ててオルカを引き離し、顔を逸らす。


「あ、アージュナさん……?」

「な、何でもない。怪我は無いか?」

「はい、おかげで……」

「そうか、それならよかった。さあ行こう」


 顔を逸らしつつも、オルカをエスコートする。


 どうして顔を逸らしたままなのか分からないまま、オルカはアージュナに手を引かれる。



 ◆◆◆



 ラシファ達は歳をとった執事に案内され、晩餐会の会場の扉の前に到着する。



 扉の向こうに王、女王、騎士達が待っている。


 オルカ達若年組は、今一度服装を整え、入念に準備をする。


 そして、ゆっくりと扉が開かれた。


 

 直後、パン!! という小さな破裂音が響いた。



「ようこそ漆黒の六枚翼御一行様!! 晩餐会へようこそ!!」



 そう言って出迎えてくれたのは、少年の騎士だった。


 少年の背後には、大きな虎が控えている。


 少年の言葉に続いて、奥から盛大な拍手が起きる。


 十二騎士、八天騎士、アーサーⅢ世、女王ガネヴィア、そうそうたるメンバーが待っていた。



 今ここに、聖国の晩餐会が、始まる。






お読みいただきありがとうございました。


次回は『20の騎士の晩餐会 Ⅱ』

お楽しみに


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