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Ep.65 集結、漆黒の六枚翼


合流



 スカァフとラシファが奮戦している時、オルカ達は飛行龍機でテルイアに向かっていた。



 飛行龍機の中で、オルカは『顔の無い盗賊団』のことを話した。


「蜥蜴の学び舎、東龍族、更には龍の宝珠ですか……」


 ジークは手を組んで聞いていた。


「龍の宝珠は、城の宝物庫にあるのは確かです。私も以前この目で確認しました。大金を払って使用できるという話も事実です」

「寄付の話もか?」


 バルアルの質問に、ジークの表情が曇る。


「寄付かどうかは、正直怪しい。詳細は父上しか知らないからな……」


 ジークの喋り方を聞いていたファンが、アージュナに小声で


「(何かオルカ姉さんの時だけ態度違くないっすか?)」

「(俺もそう思う)」

「聞こえているぞ2人共」


 そんな会話をしている内に、外の様子が変わってきた。窓から見えていた雲が、黒くなってきたのだ。


『もうすぐテルイアに到着します!』


 騎手の声が聞こえ、全員が窓からテルイアを見る。


 テルイアはあちこちから火の手が上がり、建物は無惨に壊されている。超大型、大型の魔物が暴れ回り、次々と建物を壊し、中型、小型の魔物が人々を襲っている様子が、上空からでも分かる。


「酷い……」


 オルカはあまりの惨状に、思わず手で口を押さえてしまう。隣にいたアージュナが、そっと背中をさすってあげた。


 飛行龍機はテルイアの上空で旋回し、降下ポイントを探し始める。


 バルアルはどこから入るか、作戦はどうするかを考えるために、街全体を見渡す。そこで、問題を見つけた。


「街の門が、塞がっている」


 超大型の魔物の仕業か、街の防壁が破壊され、その瓦礫で全ての街の門が塞がっていた。


 そのせいで人々は外に出れず、外からも入れない状況になっていた。バルアルは他に街に入る方法が無いかを模索する。


 一方で、セティは逃げ惑い、襲われ続ける人々を見て、憤りを感じていた。


「ええい!! 兵士や冒険者は何をしているんだ!?」


 セティはアージュナを護る護衛騎士だ。誰かを護るという使命感、騎士として人々を守るという教えを重んじているため、街でただ人々が悲惨な目に合っている様子は、我慢ならなかった。


「冒険者ギルドは、壊滅してます……」


 オルカは街を見ながらセティの疑問に答えた。


「それは、どういう事ですか?」


 セティは思わず聞き返す。オルカは街を指差しながら


「テルイアの冒険者ギルドは、一通り場所を覚えているので、分かります……。その全てが、酷く破壊されているんです……」

「何!?」


 これだけ被害が出ているのに、冒険者が全く動いていない事に納得できる。最初に冒険者が集まるギルドが壊滅すれば、後は兵士だけ。兵士は上が状況を把握し、被害の多い場所から手を付けるため、どうしても時間がかかる。そのため、どうしても出動が遅れるのだ。まして、突然魔物が現れたとなれば、情報収集は困難を極めている。


 それを聞いたバルアルは、手で口を押さえながら


「だとすれば、魔物は狙ってギルドを破壊した。ということになるな」


 バルアルの推測に、全員の背筋が冷えるのを感じた。これだけの魔物を操っているのだとしたら、その者は強大な術式を操り、膨大な魔力を持っている事になる。


 そんな芸当ができるのは、S級に匹敵する存在か、A級以上の魔術師くらいだ。


 バルアルは街を見ていると、


「ああ、やっぱり頑張ってたか」

「え?」


 オルカ達はバルアルの視線の先を見る。そこには単身光の剣を振るって戦っているラシファと、国の兵士を引き連れているスカァフの姿があった。


「ギルドマスターにスカァフさん……!?」


 オルカはラシファとスカァフがテルイアにいることを知らなかった。驚くのも当然である。


「そーえば、お二人共ここにいるって言ってたっすね」

「あの二人の強さを知っているから心配するって事を忘れてた」


 ファンとアージュナは自分達の感覚が少々おかしくなっている事を反省した。


 バルアルはどうやって降りるかを考えていたが、これしか無いと、一つの作戦を思いつく。


「……全員準備しろ。降りるぞ」

「はい?」


 ファンが間抜けな返事をしている間に、バルアルは飛行龍機のドアを開けた。開けたのと同時に、街から舞い上がる熱風が入って来る。


「な、何を?!」


 ジークが熱風から身を護ろうと、顔を腕で隠す。



 【闇の腕】



 バルアルは黒い巨大な腕を魔法で複数出現させ、ジークを除いた全員を掴んだ。そして、ドアから身を乗り出し、背中から翼を広げた。


 ここまでの一連の流れを見て、ファンは嫌な予感をしていた。


「あ、あの、バルの兄さん、もしかして、ここから……」

「ジークはここから離れて安全な場所へ避難してくれ。また後で会おう」


 バルアルはファンの言葉を無視してジークに指示を出し、身体を前後に揺らし始める。そして


「行くぞ!!」



 掛け声と共に、バルアルが飛行龍機から飛び降りた。



 それと同時に、腕で掴まれたメンバーも引っ張られて飛行龍機から降下していく。高さはおよそ2000m。


「うおわアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」


 今までにない高度からの落下に、ファンは絶叫してしまう。


「あぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!?!?!?」


 ルーは全身に風を受けて全身の毛が逆立ち、面白い事になっている。


 セティとアージュナは全身に浴びせられる強風に、必死に耐えていた。


 ケーナは慣れた感じで頭から落下していく。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」


 オルカはスカートを押さえ、中が見えない様に必死に隠しているが、胸が明らかに強調され、激しく揺れているいることに気付いておらず、あられもない状態だった。


 アージュナとセティはオルカの状態に気付いてしまい、赤面しながら咄嗟に目を逸らす。


 バルアルは街の広い通り目掛けて急降下するが、そこには大型のメタルベアー、オーガ、スプリガン、中型のオーク、ワーウルフ、小型のゴブリン、スライム等の魔物の大群がいる。


 その大群に向かって、バルアルは魔法を発射する。



 【獄炎(ヘルフレイム)鳳仙花(バラサミナ)(ディスターブド)(ブルーム)】!!!



 バルアルの両手から弾けるように火炎球が発射され、魔物達へ襲い掛かる。


 直撃と同時に爆発し、四散していく。激しい爆音と高熱で跡形もなく吹き飛んで行った。


 おかげで通りには障害物が無くなり、着陸しやすい状態になった。


 バルアルは速度を落とし、ゆっくりと着陸する。【闇の腕】で持っていたメンバーも、丁寧に着地させる。


「とりあえず乗り込めたか。全員ラシファとスカァフの所に急ぐぞ」


 振り向いて話しかけたが、ケーナ以外伸びていた。というより起き上がれないでいた。


「どうしたお前ら?」

「あんなところから落ちたら死ぬかと思うじゃないっすか!!?」


 ファンが力が抜けている中で最大の大声で抗議する。


「無茶苦茶するの勘弁してくださいよ!!」

「あれくらい平気だと思ったんだが」

「飛べる人はそうっすね!」


 不毛なやり取りをしていると、通りの奥からサイクロプスが倒れ込んできた。


 サイクロプスは既に急所を斬られ、地面に倒れる前に絶命している状態だった。


 そのまま地面に倒れ、転がっているサイクロプスの上に、ラシファが着地する。光の剣でサイクロプスを斬ったのだ。


「おや? 皆さんどうしてここに?」


 ラシファは不思議そうな顔でバルアル達に気付いた。バルアルはラシファの方を向き


「色々あってここに来た。手は必要だろ?」


 不気味な笑みを浮かべる。ラシファも不敵な笑みを浮かべ


「ええ、足りていなかったので、助かります」


 バルアル達の援護に感謝していた。


 その時、通りの反対側から、大勢の兵士達が迫ってきた。その先頭には、スカァフがいた。


「何じゃお主ら、ここまで来たのか?」

「スカァフさん……!」


 しおれたオルカは、スカァフの姿を見て喜んだ。これで漆黒の六枚翼全員が集まった。


 アージュナ、セティ、ルーも何とか立ち上がり、気合を入れて持ち直す。


 ラシファとスカァフはバルアル達に近付く。


「オルカさん、無事で良かったです」

「ご心配をおかけしました……」

「謝らんでもいい。……何も無くて良かった」


 ラシファとスカァフは笑みを浮かべて、オルカの無事を喜んだ。


「そ、それで、お二人はどうしてここに……?」

「それについてはまた後で話しましょう。今は……」


 破壊音と共に、遠くから魔物達が暴れているのが見える。その数は最低でも数百。


「魔物の軍勢を退けましょう。皆さん準備はいいですか?」


 ラシファの言葉を合図に、オルカ達は【収納】にしまっていた武器を一斉に構える。


「大丈夫です……!」

「いつでも行ける!」

「いいっすよ!」

「行けます!」

「はい!」


 漆黒の六枚翼以外にも、国の兵士達、ケーナも武器を構えて、ラシファの指示を待っていた。


「いつでも、行ける」


 ラシファは心強い仲間達に、つい微笑んでしまう。


「何とも頼りがいのある仲間達ですね。助かります」


 そして、正面の敵に光の剣を向けた。


「一般市民を救出しつつ、魔物を各個撃破!! 支援は前衛の援護を!! 命を大事に、優先してこの困難の状況を乗り切ります!! 全員、突撃!!」

「「「「「「「了解!!!!!」」」」」」」


 全員が一斉に飛び出し、魔物の群れへと向かって行くのだった。



 ・・・・・・



 テルイア 王城



 王城の中は、シグーが兵士達を連れ出してしまい、奇妙な静寂に包まれていた。


 戦える者は殆ど残っていないため、防衛機能のある城に立てこもるしかなく、使用人達が窓から街の様子を見ている事しかできない状態だった。


 王は安全な場所に匿われ、部屋の前に護衛2人が付き、寝室で待機していた。


(王である儂がこんな所で引きこもるしか無いとは、何と情けない……)


 1人後悔の念を抱いていると、部屋の外からバタバタと騒がしい音が聞こえる。一瞬で音は止み、また静かになる。


「? 何じゃ……?」


 王はベッドから立ち上がり、扉に近付こうと歩き出す。


 すると、扉が開き、部屋に1人の女性が入って来た。


 その女は、ボサボサで目まで隠れている黒いロングヘアー、真っ黒で鋭い瞳、顔に大きな火傷と切り傷、小麦色の肌をしていた。スタイルは胸と尻が出ており、腰は細い。服装は革でできた冒険者の装備一式を着ている。


 手には、血がたっぷりと付いた剣を持っていた。そしてその後ろには、大量の血を流して倒れている護衛2人がいる。


「ひっ?!」


 王はそれを見て腰を抜かし、尻餅をついてしまった。


 女は王に近付き、血塗られた剣を向ける。


「宝物庫まで案内しろ。さもなくば殺す」







お読みいただきありがとうございました。


次回は『壊れゆく街に朝日を』

お楽しみに


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