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Ep.24 新しい仲間、ルー参上!!


新しい仲間は、犬という名の



 オルカがセティのお見舞いに行った翌日



 セティを除く『漆黒の六枚翼』全員が冒険者組合に集められた。会議室を借りて今回の用件をアージュナが話し出す。


「まあその、訳あって喋る犬一匹預かることになった。こんな大変な時に申し訳ない……」


 アージュナが頭を下げながら紹介したのは、一匹の白い大型犬だ。


 毛はフワフワで、黒い眼と鼻が可愛らしくも凛々しく見える。大きな尻尾を振って元気であることをアピールしている。


「初めまして! ルーと申します! 皆さんのお役に立てるよう頑張ります!!」


 はきはきと少年の様な声で挨拶する。


「ふむ、『精霊獣』か」


 スカァフがルーをよく見て一言言った。


「精霊獣……。確か、普段目に見えない精霊が実体化した姿で、会話できる知能を有し、魔力量はとても高いと聞いています……」

「流石高ランク冒険者の皆様! 博識でいらっしゃいますね!!」

「そんな……、偶々知っていただけです……」

「ご謙遜を! オルカ様は大変素晴らしい方だと思います!」

「あ、ありがとうございます……」


 ルーは目を輝かせながらオルカを褒める。タジタジになっているオルカを見てアージュナが割って入る。


「世話は俺が見ます。皆さんには一切迷惑はかけません。どうか、お願いします」


 真剣に頭を深々と下げてお願いする。ラシファ達は、


「いいですよ。ただの犬なら考えましたが、精霊獣なら問題ありません」

「いないとお前が困るだろ? ならいいさ」

「ワシも一向に構わん」

「俺も問題無いっす!」

「わ、私も皆さんと同意見です……」


 快く承諾してくれた。


「……ありがとうございます!」


 アージュナは何度も頭を下げて感謝した。



 ・・・・・



 それから一旦解散となり、アージュナとルーは一緒に装飾品店にやって来ていた。


「まさか精霊獣を使役している証明として特殊な首輪が必要だったとは……」


 帰り際に組合員から説明を求められ、話した結果、ルーに使役している証の魔術礼装の首輪を装着する必要があると説明された。どこで手に入るのか聞いたところ、組合認定の装飾品店があるという事なので、早速買いに行くことにしたのだ。


 その装飾品店は大きな建物一つそのまま使っている大手メーカーだ。3階建ての石造りで緑色の屋根が特徴的だ。


 1人と1匹は初めて入るお店に警戒しながら入っていく。中はウッドハウスをイメージした内装になっており、スペースに余裕を持って陳列しており、かなり整っている。


「いい感じの店だな」

「ですね」


 そこへ、


「いらっしゃいませ! 何かお探しですか?」


 一人のエルフ族の女店員が近寄って来た。エルフ族特有の尖った耳、金髪碧眼を有している。


 アージュナは微笑みながら、


「精霊獣に付ける冒険者組合認定の首輪を探しに来たんです。どこにありますか?」

「それならこちらのコーナーになります。ご案内します」


 店員の後を付いて行くと、いくつもの首輪が陳列されており、様々な種類がある。


「また何かございましたらお呼びください!」


 店員は早々に別の場所へ移動してしまった。


「……どれがいい?」


 アージュナは自分のセンスでは決めきれないと判断して、素直にルーに聞くことにした。


「あの赤色がいいです! カッコ良い!」

「そっか、じゃあこれに……」

「それは、精霊獣には合わないと思います……」


 後ろから声を掛けられ、アージュナ達は慌てて振り向いた。そこにいたのは、


「お、オルカ!? いつからここに?!」

「最初からです……。店員さんは気付いてましたが……」

「私も気付いてましたよ?」

「ルーも気付いてるなら言ってくれよ……」


 全く気付けなかった自分を恥ずかしく思った。気分を誤魔化すため、話を切り替える。


「……それで、どうしてこれが精霊獣に合わないんだ?」

「はい……。それには凶暴性を抑えるために【封魔術式】が施されています。体内の魔力に作用させて感情の起伏を抑えるのが目的だと思うのですが、それだと精霊獣の得意とする魔法や魔術に影響を及ぼす可能性があります……」

「そういう事だったのか……」

「ではどれが良いのでしょうか?」


 ルーは上目づかいでオルカに質問する。


「そうですね……、ルーさん程賢いなら契約した相手と位置情報を最低限共有できる【魔力線術式】、万が一攻撃されても傷付けられない【防御術式】が入っているこの首輪でいいと思います……」


 オルカが手に取ったのは、シンプルなデザインの赤い首輪だ。


「いかがでしょうか……?」

「いいですね! 早速買いましょう!」


 ルーは嬉しそうに尻尾を振った。それを見たオルカも嬉しそうに笑った。


 アージュナもその光景を見て、優しく微笑んだ。



 ・・・・・



 会計を済ませて、2人と1匹は広場に来ていた。


 薄く焼いた生地に甘辛く煮たミンチ肉とシャキシャキの野菜が挟まった『カブブ』の屋台が出ていたので3つ買って食べることにした。


 ベンチに座ってカブブにかぶりつく。甘辛い味が肉と油と程よく絡んで濃厚な味わいで、薄焼きの生地と新鮮な野菜の食感が楽しい一品だ。


「美味しいです!!」


 初めて食べるルーは感激して食べていた。地面が汚れない様にどこからか皿を出して乗せて食べている。


「そうかそうか、口に合って良かったぜ」

「ですね……」


 オルカも小さい口でかぶりついていく。


「あ、オルカ」

「はい……?」


 アージュナはオルカの頬にミンチ肉が付いているのを見つけ、汚れていない親指で拭き取ってあげる。


「付いてたぞ」


 そう言って自分の口に運んで食べてしまう。


「あ、ありがとうございます……」

「どういたしまして」


 アージュナもカブブにかぶりつく。大きな口で食べるのであっという間に半分になっていた。


「……アージュナさんも付いてますよ」


 そう言ってオルカは【収納】からハンカチを取り出し、アージュナの頬を拭いてあげる。


「はい。取れましたよ……」

「おう、ありがとうな」

「………………」


 その光景を黙って見ていたルーは、


「…………恋人みたいですね」


 突然の爆弾発言にオルカは噴き出してしまった。噴き出した拍子にゴホゴホとむせてしまう。


「大丈夫かオルカ?! ルーお前なあ……!」

「し、失言でした! どうかお許しを!」


 ルーは伏せをして謝罪の意を表した。オルカは呼吸を整えて、


「だ、大丈夫です……。ちょっとビックリしただけですので……、はい……」

「俺何か飲む物買ってくるよ。待っててくれ」


 アージュナは小走りで飲み物を買いに行った。その場にはオルカとルーだけが残された。


「すみません……。私が要らぬことを言ったばかりに……」

「い、いえ。お気になさらず……」


 オルカはニコリと笑って大丈夫だとアピールする。それを見たルーは、


「……オルカ様はとっても良い人ですね」

「そ、そんな事無いですよ……」

「オルカ様なら、アージュナ様と一緒にいさせたいというセバスティアン様の思いも分かります」


 セバスティアンという名を聞いて、オルカはルーに視線を向ける。


「……ルーさんが、アージュナさんの新しい護衛なんですね……」

「はい……。お話を聞いているなら説明はしなくてもよろしいですね?」


 オルカは黙って頷く。


 あの日、セバスティアンがアージュナに護衛の件を告げてからすぐにどこかへ行ってしまったため、詳しいことを聞けなかった。


 色々と聞きたいと思ったが、そこまで踏み込んでどうするのか? そこから先の事を考えられず一旦は踏み止まったが、どうしても気になってしまう。


 襲撃を受けた日に見せたあの寂しそうな眼と何か関係がありそうで、無視できないのだ。


「…………アージュナさんは、どうして、冒険者を……?」


 恐る恐る質問する。ルーは少し俯いて、


「すみません、私は今回初めてアージュナ様の護衛につきますので、そう言ったことは全く分からないんです」

「……そうでしたか」


 質問が空振りに終わり、次に何を聞こうか悩んだ。それを見たルーは、


「…………アージュナ様がどうして沢山の女性の中から貴方を特別視しているのかは、何となく分かります」

「え……? でもそれは、私に力があるから……」

「それだけではありません。オルカ様は……」


 その先を言おうとした瞬間、


「おーい! 買って来たぞー!」


 アージュナが戻って来た。ルーは振り返って尻尾を振る。


「私の分はありますか?!」

「一応。コップは返さないといけないから壊すなよ」

「はい!」


 ルーはアージュナの方へ駆け寄って行ってしまった。オルカは1人ベンチからアージュナ達を見ていた。


(私が、何なんでしょうか……?)


 オルカの中で、一つの疑問を残すのだった。



 ・・・・・



 広場での休憩をした後、早々に組合で登録を済ませた。


 書類の提出と魔術契約、証明書発行など全て完了した頃には夕方になっていた。


「それじゃあ帰るか。ホテルだけど」

「はい……」

「了解です!」


 一応ホテルに精霊獣も泊められるか確認を取ったところ、意思疎通ができるなら問題無しとなった。


 ホテルは組合から歩いて30分のところにある。仕事帰りの住民たちで多くなった人通りを歩く。


「ウウウウウ……!」


 突然、ルーが身構えて威嚇し始めた。


「どうしたルー?」

「何か、来ます……!」


 人通りから突然、紫のフードを被った人物が現れた。


 顔は半分物理的に隠れているが、さらに半分は真っ黒で何も見えない。胸には何かエンブレムの入った貴金属の勲章を付けていた。


「誰だ、お前……!!」


 咄嗟にアージュナが剣を抜こうとする。


「あ、魔術協会の方ですか……」


 しかし、オルカが普通に対応した。アージュナとルーは少しこけてしまった。


「し、知り合いか……?」

「はい……。この方は魔術協会のメッセンジャーなんです……。素顔は一度も見た事無いのですが……」


 メッセンジャーはアージュナ達に一礼する。


「あ、どうも……」


 毒気を抜かれて、アージュナとルーも一礼する。


 メッセンジャーはオルカの方へ向いて、一通の手紙を手渡した。手も黒い手袋をしていて肌は見えない。


「あ、ありがとうございます……」


 お礼を礼で返し、人混みへと紛れ、消えてしまった。



 ・・・・・ 



 オルカはホテルの自分が泊っている部屋に戻って来た後、手紙を確認する。


「さて、何でしょう……」


 オルカは手紙の蝋印に指を当て、魔力を流して解錠する。中に入っていたのは至って普通の手紙だ。内容は、



「……『至急協会本部へ参上せよ』……」



 魔術協会本部からの緊急呼び出しだった。







お読みいただきありがとうございました。


次回は『魔術協会本部』

お楽しみに。


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