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Ep.23 幕間『三騎士の出立、新たなる仲間』


三騎士、運命の再会を果たす



 ウェイガー達がギルドから離脱してから4日



 2人は雨の中、徒歩で聖国に続く道を歩いていた。


 しばらく歩くと、2人を待つ人物がいた。雨除けのフード被っていて顔は見えない。


 ウェイガーはその人物に近付き、


「……お望みの物は?」

「苦いクッキーと甘いコーヒーを」


 ウェイガーはフッと笑った。


「よく間に合ったな、メイドリッド」

「遅えよ兄貴」


 フードの人物の正体はメイドリッドだった。


「これでも急いだほうだぞ」

「へいへい。で、首尾は?」

「お前が傷付けた冒険者達とは無事に和解できた。壊した建物の修繕費も全部払っておいたから、後腐れは何も無いぞ」

「私の方で裏からも手を回しておいた」


 メイドリッドの起こした事件は、ウェイガーとギャラヘッドが奔走して被害者全員に和解の契約書を結んでもらった。和解金を支払い、これ以上は言及しないという条件だ。こうすることで個人契約が有効になるため、アイシーンがギルドの力を使ってもメイドリッドに追及できないようにしたのだ。


「…………悪かったな、俺のせいで色々と手間かけさせちまって……」


 メイドリッドはバツの悪そうな顔で謝る。ウェイガーは微笑んで、


「いいさ、お前が行動を起こしていなくても俺達は抜けていた」

「もうあそこに残る理由は無い。むしろ手を切る理由が出来て良かったと思っているくらいだ」

「……ありがとうよ」


 3人は山道をしばらく歩くと、曲道で足を止めた。その先は崖になっており、川が流れている。ウェイガーとメイドリッドは崖下を見下ろす。


「ここにもしばらく来れなくなるな」

「ああ……」



 この曲道は、ウェイガーとメイドリッドの両親が亡くなった場所だ。


 正確に言えば、母親のお腹の中にいた赤ん坊を含めて3人だ。


 聖国で安産祈願のお祈りを受けに行く途中、ここから馬車ごと落下した。崖下の川辺で馬車の破片は見つかったが、遺体は見つからなかった。

 2人は聖国に行く際はここを通ってお参りをしている。


 

 ウェイガーとメイドリッドは目を閉じて死者への祈りを捧げる姿勢を取る。


「父上、母上、私達はこの国を離れます。お許しください」

「そして、会う事が叶わなかった家族。どうか天から見守っていてくれ……」


 祈りを捧げ、ゆっくりと目を開ける。


「……行こう。まだ歩くからな」

「おう」


 その時、道の反対側、森の方から小さく金属音が聞こえた。おそらく剣がぶつかる音だ。


「ウェイガー、メイドリッド」

「……山賊かもしれない。念の為見に行こう」


 3人は頷いて森の中へ入っていく。


 森の中を進んでいくと、少し開けた場所を見つけた。気付けば雨が止んでいた。


 その中心には木造の小屋があり、その前で老人が黒いローブの3人に襲われていた。老人は手に斧を握って対抗している。


 老人はドワーフ族で、髭だらけの顔、歳に反した屈強な肉体を有している。


 傷だらけでも3人相手に一歩も引かない。


「ちい!? 何だこのジジイ?!! 異常に強いぞ!!」

「舐めるなよ小僧。こう見えてもワシは元聖国の騎士だ。簡単には負けんよ」

「情報通りか。……だがいつまで持つかな?」


 確かに老人は互角に渡り合っているが、息切れをしているのが分かる。


 黒いローブの人物たちは剣を構え直し、


「一気に決めるぞ!」


 一斉に襲い掛かる。


「ちい!!」


 三方向からの攻撃に対応できる防御手段は斧を振り回すしかない。だが、今の残りの体力でそれは難しい。何とか致命傷の攻撃だけは防ごうと防御姿勢に入った。


「おりゃあああああ!!!」


 次の瞬間、叫びと共に雷撃が横から飛んできて黒いローブ達に直撃する。


「ぐああああああ!!?」

「あがががががが!?!?」


 3人の内2人は絶叫と共に倒れ、残り1人は喰らったのと同時に気絶した。


 ドワーフの老人に届く前に倒れ、ピクリとも動かなくなった。


「な、なんじゃ、今のは……?」


 老人が驚いていると、


「悪いな爺さん。加勢させてもらったぜ」


 メイドリッドを先頭に3人が茂みから出て来た。老人は斧を構える。


「何者じゃ?」

「通りすがりの冒険者だ。治療は必要か?」


 そう言って3人はフードを外して顔を見せる。


「!!!!!」


 ドワーフの老人は目を丸くして驚いていた。数歩後ずさって困惑した様子だった。


「ま、まさか、お主達は……」

「お、おい爺さん、どうしたんだよ?」

「どこかから毒が?」


 メイドリッドとウェイガーは心配になって近付く。


 直後、バン!! と勢いよく小屋の扉が開かれた。


「爺ちゃん!! やっぱり私も戦う!!」


 そう言って飛び出してきたのは1人の少女だった。


 木こりの格好をした少女は小柄ながら、鍛え上がった全身で身の丈より大きい斧を担いでいる。


「……あれ? どういう状況???」


 少女はポカンとした表情で状況が飲み込めていない状況だった。ウェイガー達もいきなり現れた少女に呆気に取られていた。


「いや、誰だよお前」


 メイドリッドが思わずツッコんでしまう。


「私? 私はね……」


 自己紹介しようとしたところを老人が手をかざして制止する。


「先に名を名乗ってもらっても良いかのう? 助けてもらったとはいえ、まだ完全に信頼したわけではないからのお」


 メイドリッドはそれもそうかと思い、


「俺はメイドリッド。メイドリッド・モルガースだ」

「我が名はウェイガー・モルガース。メイドリッドの兄です」

「ギャラヘッド・トロワだ」


 3人の名を聞いた老人は膝をつき、泣きながら頭を下げ始めた。


「お、おおお、おおおおお……!! すまない……! すまない……!!」

「だ、だからどうしたんだよ爺さん?! 何でそんなに謝るんだよ?!」



 次の瞬間、森の奥から老人目掛けてナイフが飛んで来た。



 刺さる直前で激しい金属音と共にナイフが宙を舞った。


 ギャラヘッドが間一髪、剣で防いだからだ。


 ギャラヘッドはナイフが飛んで来た方向に剣を向ける。


「出てこい。既にバレているぞ」


 そう言った直後、森の影から一人の男が現れた。


 黒いローブを羽織ったリザードマンの男だ。見た感じ魔術師の様に見える。


「あの攻撃を弾くか、中々やるな」

「何者だ?」


 ギャラヘッドは剣を両手で持ってしっかりと構え直す。


「今から死ぬ貴様に教える名など無いわ!!!」


 宙に3つの魔法陣を発動させ、その中心から大量のナイフが出現し、浮遊する。


「受けよ!! 我が魔術---」


 放とうとした瞬間、ナイフが全て爆散し、吹き飛んだ。


「……は?」

「ちんたらやってるから落とされるんだよ」


 メイドリッドの雷撃で、全てのナイフが粉砕されたのだ。


「おのれ小癪な……!!」

「もう一撃くらえ」


 メイドリッドの雷撃がリザードマンを襲う。しかし、雷撃は大きく逸れて見当違いの方向へ着弾してしまう。


「あん?」

「フハハハハハ!! 一瞬ヒヤッとしたが、この魔術礼装があればどうという事は無いな!!!」

「そうか、ならばそれごと斬り捨てよう」


 リザードマンの目の前に剣を下段に構えたギャラヘッドがいた。この一瞬で近付いてきたのだ。


「無駄だ! 全てを否定するこの魔術礼装の前では……!!」


 リザードマンの言う事を無視して、ギャラヘッドは剣に魔力を込める。そして、


「宝剣解放、『オーランディート』」


 剣は青の煌きを放ち、真の力を解放する。


 ギャラヘッドは下段から斬り上げ、リザードマンの身体を斬り捨てた。斬った箇所から大量の出血が起こり、致命傷になったことを証明する。


「ば、馬鹿な?!! 何故……!!?」

「宝剣オーランディート。全ての魔を斬り捨てる絶対の剣だ」


 リザードマンはその場で仰向けで倒れ、息を引き取った。


 剣に付いた血を拭い、メイドリッドのところへ近付く。


「援護、感謝する」

「気にすんな。今はそれより……」


 メイドリッドはまだ頭を下げている老人と老人の傍に近寄って来た少女の方を見る。


「なあ爺さん。一体何をそんなに謝ってるんだ? 話してくれねえと何も分からねえんだよ」

「………………」


 老人はゆっくりと立ち上がった。


「取り乱して申し訳ない……。だが、何よりも先に謝罪しなければと思ったのじゃ……」

「どういうことです?」


 ウェイガーの質問に、老人は俯きながら答える。



「君達の母親は、この子を産んでから死んでしまったのじゃ。モルガース家の人々よ」



 衝撃の言葉と共に陽の光が差し込む。


 少女の髪色、瞳の色は、間違いなくウェイガーとメイドリッドと同じ色だった。


 そして何より、2人の母親とよく似ているのだ。



 これが新たなる騎士、『グレース・モルガース』と『ボーサ・グライ』との出会いだった。




 

 



お読みいただきありがとうございました。


次回は『新しい仲間、ルー参上!!』

お楽しみに。


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