Ep.112 集結する絆
繋いできた絆が、繋がる
モーフェンはオルカ達に封印の方法を伝える。
「以上が封印方法だ。理解できたか?」
「「もう少し分かり易くお願いします」」
モーフェンの説明は専門用語が多過ぎて、アージュナとファンには理解が出来なかった。
「えっとですね、簡単に説明すると、ハデスを冥界へ戻すために、上から冥界に繋がる魔法陣を被せて元に戻してしまおうということです」
オルカがモーフェンの説明をかいつまんで説明する。
「なるほど?」
「分かるような、分からないような……」
それでもいまいちピンときてない2人。モーフェンは呆れて静かに溜息をつく。
「こんなのがいいのか? オルカ」
「そ、そういう言い方は止めて下さい……」
一瞬緊迫した空気が流れたが、ラシファの柏手一つでキャンセルされた。
「ともかく、我々の役割は分かりました。オルカさんとモーフェンさんが冥界への魔法陣の作成。私達はオルカさん達に意識が向かない様に下からハデスを攻撃。これでよろしいですね?」
「ほとんど合っているが一つ間違いだ。そこの獣人」
モーフェンはアージュナに指を差す。
「お前も私達に付いて来てもらう。要になる」
「え? 俺が?」
突然の指名に驚くアージュナ。
「どうして俺が……?」
「説明は後でする。私とオルカ、この獣人は先にハデスの上空に向かう。ラシファとやらは早く声を掛けろ」
「おや、その言い方ですと、お気づきでしたか」
「とうの前に教皇から聞いている。急ぎなさい」
そう言ってモーフェンは、オルカとアージュナを【浮遊魔法】で浮かしながら、一緒に飛んで行ってしまった。
残されたラシファ達は、今一度顔を見合わせる。
「作戦は聞いた通りです。全員でハデスに攻撃を仕掛け、気を引きますよ」
「この4人だけでっすか?!」
ファンは思わず声を上げる。
それもその筈、ここにいるのはラシファ、スカァフ、ファン、セティ、ルーの4人と一匹だけだ。ルーは魔力枯渇で戦力外である。
そんなメンバーであの巨大な存在の気を引こうなど、無謀にも程がある。
「無理っすよ絶対!!? どんな攻撃でも虫に刺された程度にしかならないっすよ!!」
「じゃろうな。圧倒的に戦力が足りんぞ」
「そうですね。それこそ軍隊とかが必要ですよ」
「無理があると思います!!」
ファン達から一斉に非難を浴びるラシファだったが、その表情は余裕の微笑みだった。
「ご安心を。この時のために人脈は作っておきました」
ラシファは懐から、小型の通信魔道具を取り出す。
「まずはあの人からですね」
◆◆◆
ゴルニア王国
『お久しぶりですジーク王。今よろしいですね?』
「ラシファか!! あの巨大な魔物はなんだ!? アレのせいで国中大パニックだぞ!!」
『あれはハデスという冥界の神です。今こちらで冥界へ返す作戦を行うところなんです。『今こそあの時の約束を果たす時』。手伝って頂けますか?』
「…………詳しく聞こう。何が必要だ?」
『話が速くて助かります。ではありったけの飛行龍機と魔導バリスタと人員。ケーナさんとホルケラスさんをお貸しください』
「いいだろう、すぐに用意する。超特急であれば1時間かからん」
『ありがとうございます。では飛行龍機が用意出来次第、指定した場所へ向かわせて下さい。場所は……』
◆◆◆
アストゥム獣国
『ウシェス女王。聞こえていますか?』
「ラシファか!! 何やら一大事になっているな!!」
『察しが良くて助かります。『今こそあの時の約束を果たす時』。ご協力をお願いできますか?』
「無論だ! 何がいる!?」
『ヘルウィンさんとS級を一人。トリトンさん、海にいらっしゃいますよね?』
「あいつか!! 世界の危機だからな! 嫌でも来るだろう!!」
『それは助かります。あと30分で迎えが来ますので、そちらに乗ってあの巨大な神、ハデスの元まで向かって下さい』
「よく分かった!! ああそうだ! 一ついいか!?」
『何でしょう?』
「ついさっき聖国から飛ばされてきたという少女がいるのだが、送るか?!」
『代わって下さい』
「うむ!!」
「……余だ、ラシファ。カラーの手でこっちに飛ばされた。このまま飛行龍機に乗って参戦する。アーサー王にも伝えよ」
『かしこまりました。十分にお気を付けて』
◆◆◆
キヌテ・ハーア連邦
『ウィシュット組合長。よろしいですか?』
「ええ、よろしいですよ。ようやく一段落ついた所ですので」
『『今こそあの時の約束を果たす時』。あの巨大な存在の封印作戦に協力して頂きたいのです』
「……いいでしょう。どれくらいの人員が必要ですか?」
『腕の立つ冒険者を集めれるだけ。S級のあの方も呼んで頂けたらよいのですが』
「分かりました。集められるだけ集めましょう。時間は?」
『1時間以内でお願いします』
「……事態は急を有する訳ね。私も出ましょう」
『現場は大丈夫ですか?』
「既に部下たちに動いてもらっています。そもそも、私は元々現場主義ですので」
『そうでしたね。では1時間後に』
◆◆◆
リュオンポネス聖国
『アーサー王。状況は?』
「国民は皆、指示に従って避難している。衛生兵もそちらに向かわせているぞ」
『今さっきモーフェンさんからハデスを封印する方法を聞きました。そのためにアーサー王』
「皆まで言うな。聖国の全戦力を用意しよう。十二騎士、八天騎士達も戦闘した後だが、問題無いそうだ」
『それは助かります。では教会前に集結させて下さい。もうすぐ飛行龍機が到着しますので』
「分かった。すぐに集める」
「アーサー王、私も出ます」
「ガネヴィア」
「こう見えて、A級魔術師です。戦力としては申し分ないかと」
「……しかしだな、ガネヴィア」
「今は世界の危機なりふり構っていられません。そうでしょう?」
「………………お前がそこまで言うのなら……」
「ありがとうございます。貴方」
◆◆◆
通信機を切って、ファン達に顔を向ける。
「これで戦力に関しては問題無いでしょう。我々も準備しますよ」
「了解っす!!」「は!」「はい!!」「ああ」
ファン達は勢いよく返事をし、すぐに準備に取り掛かる。
「待たれよ、ラシファ」
そう言ってラシファの背後に近付いて来たのは、枢機卿達だった。カラーに一方的にやられて、全身ボロボロの状態になっている。
「教皇猊下が戦場に出るのであれば、我々も……」
「貴方達はまず怪我の治療を。もうすぐ衛生兵が来ますので、もうしばらくお待ち下さい」
「……それもそうだな。しばし、待つとしよう」
ラシファの言う事を聞き、枢機卿達は待機することにした。
ラシファは懐に入れていたオルカ特製のエリクサーに口を付ける。
「さて、私も気合を入れなければ……」
◆◆◆
そして、2時間後
ラシファの呼びかけで、各国から戦力がハデスの周辺に集結した。
その人数は決して多くないが、A級冒険者、S級冒険者、ラグナ商会、A級魔術師、十二騎士、八天騎士、枢機卿等、四国同盟における最高戦力の殆どがこの地にいる。
ラシファはハデスを見上げた後、集まった戦力に向かって指揮を執る。
「今こそ悪しき神を追放する時!! 皆、付いて来い!!」
その声に呼応して、大勢の人達が咆哮し、進軍を開始する。
神との戦いの火蓋が、今切って落とされた。
お読みいただきありがとうございました。
次回は『魔法と共に廻れ』
お楽しみに
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