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ぼくの頭はすいかです
頭のほうが重いから
いつもぐらぐらしています
こづき回さないでくださいよう
割れちゃいますよう
ぼくの頭がすいかだから
みんな割れるのを期待してます
そんな遊びまであるようです
だからぼくの頭はすいかだけど
夏がすきではありません
雪が降る冬の日には
つるつるした場所に気をつけています
トシロウは生まれつき頭がスイカでした。
それはもう見事なすいかで
たたくと沢山実が詰まっている音がしました。
トシロウは頭が重いので机に伏していることが多く
なにもないつるつるの表面をもうわけなさそうに
なでるのでした。
ごんごんと自分でたたいてみると、中の実に音が響いて
自分の頭がスイカであることを実感しては落胆していました。
トシロウは冷たい床に寝転がるのが好きで、
いつも縁側の廊下で横になって、ごろりごろりと
自分の頭を転がしていました。
そのまま寝入ってしまうと、
トシロウの母やおじさんに蹴飛ばされそうになります。
「トシロウさんいつまでごろごろしているの。拭き掃除ができないの、ごろごろするならあっちのほうでやっていださいな」
そうしていつもトシロウは仏壇の横に追いやられるのでした。
トシロウの母はなぜかトシロウのことを「トシロウさん」と呼んでいました。トシロウの母の頭はスイカではありません。父は死んでしまったようですが、仏壇に遺影は無く、スイカであったかどうかトシロウにはわかりません。トシロウには何故かわからないがそのことが聞きづらかったのです。
トシロウは遺影のない仏壇に手を合わせました。
「父さん。どうして僕の頭はスイカなのですか。僕のあたまがスイカならば、あなたの頭もきっとスイカなのでしょう。だから遺影が無いのでしょう」
トシロウは嘆きます。
どたどたと男らしい足音が聞こえて来ました。
おじさんが不意にやってきて、驚いたようにこちらを見ました。
「なんだトシロウか、そんな仏壇の隅にいるからお盆がもう来たのかと思ったぞ」
おじさんはにかっと笑って仏壇を前にして座り、手を合わせました。
おじさんはトシロウの母の弟で、急に仕事を解雇されたらしく日中も大体トシロウの家にいました。
「おじさん、おじさん。僕の父さんのこと知ってる?」
おじさんは手を合わせて、目を瞑ったまま
「いや、あんまり知らないなあ」
と答えると、目を開けてトシロウの方を見て再びにかっと笑いました
「でも、お前にそっくりだって話だ」
「じゃあ父さんの頭もスイカだったんだね」
「俺はしらないよ、母さんに聞けばいいじゃないか」
「ちょっと母さんには聞きづらいんだ。なんとなくだけど」
「そうかあ」
おじさんは少し宙を見て考えると、思いついたように言いました。
「よし、お前のお父さんの墓参りにでもいってみるか」
「ええっ、いいのおじさん。でも母さんがなんていうか」
「母さんには内緒な」
おじさんは妙に悪い顔をしていました。




