第五話:戦後政略の渦中・1
『誰かが待ち望んだ、その日。
物語の始まり。』
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「ふう。――もうすっかりいつもの日常ねぇ」
戦争終結から七日が経った。
リプカの呟き通り、たった一週間の経過ではあったが、ほとぼりが冷めたように、状況はもう戦争前の日常と変わらなくなった。
そもそも、ウィザ国内ではほとんど戦火は上がっていない。フォローライン領域での防衛戦、リヴァレーエリン領域が破られフランシスが本腰を入れ指揮に回った【リヴァレーエリン領域の防衛・奪還戦】、そしてリプカが状況を収めた《《あのとき》》を除き、国内は平和なものだったのだ。故に戦争前の日常に戻るのも早かったのだろう。
「フランシスは相変わらず忙しそうだけれど……大丈夫かしら?」
妹が世界的に名を馳せる指導者になったという、幼少から予期はしていた大事が過ぎる現実にそわそわした気持ちを抱きながら、リプカはフランシスの健康無事を祈った。
(意外と無理をする性分だから、あの子は……)
そんな、外側の遠い場所で起こっている大事を思うように、心配を向けるリプカだったが――それはとんでもない思い違いを孕んだ話であった。
事は他人事ではなく、むしろ世紀の騒乱は内々で始まろうとしている、我が事であったことを、リプカはその後、すぐに理解することとなる。
奇妙な運命が始まる。
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