第二十八話:フランシスの助言
「ビビ様、少しお話ししませんか?」「ん? ああ」「さてミスティア、支度を済ませてしまおうか」「もう完了済みです、お兄様」「……まあ、興味がないわけじゃないしな。見とくかな」「……フン」
ある者は急ぎ足で、ある者はゆったりと、それぞれ行動を起こす様子を見ながら、リプカも席を立った。
これからどうしようと考えていると、こちらに歩み寄ってくる姿が一つあった。一歩と共に煌めきが溢れるような存在感――。
「リプカちゃん! 調子はどうだねっ?」
ポンと軽く肩を叩き、アズは輝く笑顔を向けてくれた。リプカは自然と身が軽くなるような心地を覚えながら微笑みを返した。
二人で大広間の外へ歩き出しながら、リプカのほうから話を切り出した。
「アズ様……これから少しお話できないでしょうか?」
「おっ、私もちょうどお話ししたいなって思ってたとこ! あの後の事とかも聞きたいしっ」
「はい。では、私のお部屋で……」
「オッケー! ……ところでリプカちゃん?」
「なんでしょう?」
「ツッコまないわけにはいかないから聞くけど――それ、どしたの……?」
アズは問うて、自分の両頬に手を当てた。
リプカは赤面して手で頬を包み隠しながら、モゴモゴと答えた。
「そ、それについては……お部屋についてからお話ししますわ……」
「――どうやら色々不測の事態があったようだ……。りょーかい、お部屋でお話聞かせてね」
「はい、是非。……あの、ところで――」
リプカは、もう誰もいなくなった辺りを見回しながら、首を傾げた。
「皆様、随分とお急ぎになって、どちらへ向かったのでしょう?」
「あー、それは……」
アズはなぜか微妙な表情になり、リプカからツイと目を反らして、先程のリプカのようにモゴモゴと発声を濁した。
「……まあ、みんな……助言を確かめに行ったんだと思う……」
「…………? 助言……?」
「――ま、まあまあ! 私たちは私たちで、二人語り合おうっ!」
「は、はい……。…………?」
アズナメルトゥの明らかな取り繕いが見える下手くそなごまかしにリプカは素直に頷きながらも、未だ晴れぬ疑問に、頭は傾いでいた。
(助言、を――確かめに……?)
考えてみたが、リプカにはその意味がまったく分からなかった。




