出会い、別れ、そして再会、はたまたは――初めましてのような再会までの、さよなら・2
「しかし、フラムデーゼドールの一人娘という来客ね。積もる話にも時間がかかるかも」
正門前で出迎えて待つ中、アンヴァーテイラが言ったことにリプカは首を傾げたが、アンは肩を竦めて沈黙を選んだ。
そして、リプカの視界にようやっと、待ち人を運ぶ船が見えてきた。
「アン、見えてきましたよ!」
「さいで」
断崖みたいなテンションの落差にリプカが不平を漏らす間にも、再会は間近に迫る。
そうして――。
「ようこそ! オーレリア様、サキュラ様!」
「リプカー、久しぶりー……」
「お久しぶりでして、リプカ様」
なんてふうに。
フラムデーゼドール家の物なのだろう、パラティン6R型よりも荘厳にして堅牢な外装の、アルファミーナ連合産の高速車両に乗ってやって来た二人とは、特に変わったところもなく再会を迎えることができた、のだが――……。
「え、あ、ええ、――お、お久し……ぶりです……」
待ち侘びた人と顔を合わせられた機会であるのに、リプカの返答はいまいち、パリッとしなかった。――目の前の光景に、呆気にとられて。
箱入りであった少女は、世俗の常識的習慣のことをすっかり失念していたのだ。
社会に身を置く者として、我が子たる娘をよそ様に預かってもらうにあたっては、手土産の一つでも持たせて「よろしく」と謝意の意を伝えるものだ。しかし、そこはパレミアヴァルカ連合、貴族商家の頂点、フラムデーゼドール家のことである。
「やっぱこうなるか」
エルゴール家に到着した高速車両は一台ではなかった。
後ろからゾロゾロと三、四台も黒塗りの車が列をなして、駐車したそれらからゾロッと人が出てきたかと思うと、挨拶するオーレリアとサキュラの後ろで、どこにどうやって詰め込んでいたのか……山かと見紛うほどの手土産を、粛々《しゅくしゅく》と準備し始めていたのだ。
まず再会。
そしてその後は、その手の挨拶。
その例に漏れず、二人との挨拶もそこそこに、厳かに寄ってきたフラムデーゼドール家の執事と、「リプカ・エルゴール様、ああ、お目にかかることができて光栄に存じます。本日は――」と、そこからは社交のやり取りの長時間となった。
慣れないながら一生懸命、不器用に応じるリプカを尻目に、アンヴァーテイラが先んじて二人の案内を買って出た。
「上着をお預かりしましょう、ではこちらへ。――久しぶりだなチビスケ」
「久しぶり。――アン、本当に、エルゴール家の執事になったんだ……。――ねぇ……、『なにかご用ですか』って、ゆってみて……」
うろちょろと、アンの周りを纏わりついて歩きながらサキュラが言ったことに、アンヴァーテイラは鬱陶しそうな顔をして「しっしっ」と邪険に手を払った。それがサキュラの悪戯心を余計に刺激して、なお一層の鬱陶しさを見せてアンに絡み付き始め、やがてアンがぶち切れるに至った。
「ガキィ……」
「うぅー……!」
「人間、そうそう変わりませんねぇ」
まあまあと宥めながら、オーレリアがのんびりと言ったことが、平和な空間に、長閑に浮かんだ。




