表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令嬢リプカと六人の百合王子様。~熱愛の聖女、竜遣いの戦鬼姫、追放の無双策士にドラ●もんメカニック、太陽みたいな強ギャルに、麗しのプリンス!悪女と蔑まれた婚約破棄から始まる――【魔王】のための逢瀬物語~  作者: 羽羽樹 壱理
令嬢リプカと六人の百合王子様。~悪女と蔑まれた婚約破棄から始まる逢瀬物語~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/540

姉妹・2

 木立の隙間に挟まるようにして、彼女は身を隠していた。


 隠す気もなく近付く足音に振り向いた彼女は、足音のあるじを認めると、牙を剥くように表情をけわしくした。


「そこでなにをしているのですか? ……クイン様」


 敵対心を露わにするクインに物怖じすることなく、リプカは真っ直ぐな視線を彼女へ投げかけた。


 ろうよりも青白い顔に煌々《こうこう》と灯る、燃ゆる瞳でリプカを睨むクインは、歯軋りの音を立てながら、腹の奥底からの声を漏らした。


「どこにいようと私の勝手であろう。お前に指図を受ける謂れはない。この家の内ですら、まるで冷笑されるためだけに存在しているような、れモノ扱いを受けているお前には、特にな」


 最後はさげすむように言いながら、クイン自身も冷笑を浮かべた。


 そんなあからさまな見下しを受けても、リプカは表情を変えることなく鋭い視線を見つめ続けた。


「他者がどれだけ私をさげすみ見下そうと、私が貴方様にお伝えしなければならない忠告が無意味となる理由にはなりません。聞いて頂けますか?」


「ほう? いったいなに――」


 ――クインの言葉はしぼむように消えた。


 豹変したリプカの瞳を見つめてしまった瞬間、彼女から一切の余裕が剥奪はくだつされてしまったのだ――。


「お伝えしたいことはたった一つ」


 手の届く距離まで詰め、足腰の折れてしまったクインを見下ろしながら、リプカは平時へいじと変わらぬ声色こわいろで先を続けた。


「貴方様程度に遅れをとるあの子ではないでしょうが、ですがもし万が一、貴方様がフランシスに直接的な害意がいいを向けた場合――私は貴方を決して許しません」


 決して許しません。

 リプカがそれを口にすると、クインの瞳が恐怖で揺れた。


「クイン様。確認致しますが、貴方様がここにいたのは、あともうわずかでここを訪れるであろうフランシスを待ち伏せし、害意を及ぼすため――などではありませんよね?」


「――――ち、違う! 違う……!」


 必死に首を振るクインに、リプカはこくりと一つ頷いた。


「ならよかったです。私の勘違いでした、ごめんなさい。――そう、しかし、今は国政的な理由の心配は、どうか捨ててください。私が貴方を許さないという、そのたった一つの事実にどうか注視ちゅうししてくださいまし。――失礼致しました。また来ます」


 最後に一つ頭を下げて、リプカはクインから離れていった。


 もう十分な距離までリプカが離れると、クインはドレスの裾を握り締めながら俯き、涙の証明も入り混じる唸りのような声を上げていた。


(少しやり過ぎたかしら……。でも、あれくらい言っておかなければ……)


 リプカは背で後ろ側を意識しながら、クインの事情を思った。


 もちろん、彼女に向けた口上の内実自体には、後悔も同情もない。なかったのだが……。

 ――しかしこの短絡的な脅しが、あとになってとんでもない事態に繋がり、後日、信じ難い厄介となりリプカを悩ませる事となる。それは運命のレールが切り替わる重要ではあるのだが――それもまた、あともう少し先の、別のお話だ。

 



面白いと思って頂けましたら、是非評価の程お願い致します。<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ