第五の王子・3
「もぉさ、リプカ様とかどんなイケメンかなぁとか、怖い人だったらドーシヨとか色々考えてたのに、これは予想外過ぎるでしょ。私笑っちゃったもん!」
リプカと並んで中庭を歩きながら、アズナメルトゥは眉をハに下げた明るい笑顔をリプカに注いだ。
リプカはその、己とは正反対の属性を宿した明るさに、未だ、たじろぐばかりでいる。
「そ、その、すみません……」
「ん? いやいや、リプカちゃんが謝ることじゃないって! 私らのお国のほうこそ、ゴメンね……?」
「い、いえ……そのことは気にしていませんわ。本当に……」
地上を色鮮やかに照らす太陽のような明るい笑顔が曇ったことに、なぜだかとてつもない罪悪感を覚え、リプカはもごもごと返事した。
僅かな間だけ、気落ちした表情で視線を下げていたアズナメルトゥだったが、すぐに、先程までと比べるとやや作ったような明るい顔をリプカへ向けた。
「でも、そのおかげでリプカちゃんと友達になれる機会ができてよかった! ね、ねっ?」
「と、友……っ!?」
この短時間で再び起きた、今までの人生において一度もなかったはずの未曾有に、リプカは飛び上がった。
途端に、アズナメルトゥの表情が再び曇る。
「……あっ、ごめん……駄目だった?」
「――ぜ、全然、全然っ!」
リプカが慌てて首をぶんぶん横に振ると、曇り空が晴れ、再び屈託のない明るい輝きがリプカを照らした。
「やーった! もーよかったぁ、マジで仲良くなれないかと思ったもん……!」
「よ、よろしくお願いしますわ……!」
リプカが頭を下げると、アズナメルトゥはニッと無垢な表情を見せた。
「よろしくね。奇妙な縁だけど、リプカちゃんと友達になれる機会になったからよかった! ――ね、ね、今度一緒にどこかでお洋服買いに行こうよ! 私こっちの国の服とかもチョー興味あるから、案内してくれると嬉しいな!」
なぜ、太陽に照らされたような輝きを見たように思うのか、リプカはそのことを理解した。
その時々の思いを伝える営みに、恐れや躊躇などの一抹の曇りも抱かず、心を注いで一生懸命だからだ。
どうしたらこのようになれるのか――。
怒涛のような会話量に圧倒されながら、再びそんなことを思って――両親から与えられたものとフランシスに買ってもらった服以外の一つも持ち合わせていないリプカは、さてアズナメルトゥの趣味に寄り添うためにはどうすればいいのかと、頭を悩ませていた。
内心、大切なものを送ってもらった子供のように、気持ちを浮き足立たせながら。
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