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令嬢リプカと六人の百合王子様。~熱愛の聖女、竜遣いの戦鬼姫、追放の無双策士にドラ●もんメカニック、太陽みたいな強ギャルに、麗しのプリンス!悪女と蔑まれた婚約破棄から始まる――【魔王】のための逢瀬物語~  作者: 羽羽樹 壱理
令嬢リプカと六人の百合王子様。~悪女と蔑まれた婚約破棄から始まる逢瀬物語~

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第二の王子・1-2

「――で?」


 リプカの混乱にはまるで取り合わず、ティアドラは自身のペースを貫き続けた。


「あんたがリプカ・エルゴールで間違いないのか?」


「そ、そうです。わたくしがリプカ・エルゴールですわ」


「間違いじゃないのか……」


 胸に手を当て挨拶をすると、ティアドラは何やら不満そうな表情で、再びリプカの体をじろじろと眺め回した。


 居心地悪く身を捩ると、リプカは自身の体を抱いた。


「な、なんですか……?」


「はっ。生娘みてぇな反応だな。まあいい。いや、ちょっとな」


 リプカの疑問には付き合わず自己完結で済ませると、ティアドラは薄ら笑った。


 リプカはティアドラをじっと見つめると、婿候補だという彼女に問い掛けた。


「あ、貴方様も、私を愛してくれるのですか……?」


 ……クララのことがあったばかりだから、そんな問い掛けを口にしてしまったのだろう。


 ティアドラはきょとんとした表情を浮かべると――し、辺りに響き渡る大哄笑だいこうしょうを上げ始めたのだ。


「アッハッハッハッハ! 俺が? なんだって? オジョウチャン!」


 ――今更に自分の発言の痴態ちたいに気付いたリプカは、その大哄笑だいこうしょうを受けながら、見るに真っ赤に染まってしまった。


「ハッハッハッハッハッハ! 『私を愛してくれるのですか……?』、だってよぅ!」


 ピキリと。


 リプカの額に、一筋のきんが走った。


 その途端、ティアドラはピタリと笑いを止めた。


「――へえ。噂通りじゃん」


(…………また噂……)


 なぜティアドラが笑うのを辞めたのか分からないままに、リプカはその噂とやらを少し不穏に思った。クララは、悪い噂ではないと言っていたが……。


 ティアドラは先程より真っ直ぐな視線でリプカを見つめると、勝気かちきというにもあまりに荒々しく口角を上げた。


「俺は確かに婿候補に立候補したよ。上の爺様方を無理矢理収めてな。――だが俺に同性愛の趣味はない。縁談なんて興味ねぇよ」


「え……? で、では、どうして……?」


「だがなあ」


 話を聞かず、どこまでも自分本位なままに、ティアドラはリプカの耳に顔を近付け、言い放った。


「私に勝てたら、結婚でもなんでもしてやるよ」


 硬直するリプカ。

 ついと視線だけを動かし、横にあるティアドラの瞳を見やる。――灼熱の獰猛どうもうが奥底で躍るも、表面は氷のように冷たい灰色。狂気と、恐ろしいほどの静寂。およそ、人間の瞳ではなかった。


 フッと一つ、小さな笑いを残し。

 ティアドラはゆったり身を起こすと、別れの言葉もなしに、用は済んだとばかりに背を向けた。


「――――なッ」


 ぞんざいに扱われることに慣れていたはずのリプカだったが、そのときばかりは気を立て、絶叫した。


「あ、貴方なんかにそんなこと、頼むわけないでしょうっ! 誰に頼まれての無理矢理だってお断りよ、この、変人な人!」


 ――小声で。

 周囲二メートル以内に人がいれば、その絶叫を聞き届けることができたかもしれない。


 リプカはティアドラの背を見送ると、気分を害しながらも、それでもなお薄れぬ衝動に従って、再び走り出そうとした。


 そのとき。


「あーそうそう。一応の婿候補として、一つ助言だぁー」


 遠くから、ティアドラの大声が轟いてきた。

 ビクリと身を撥ねさせながら、リプカは声のした方向へ向いた。


「な、なぁに……?」


 蚊の鳴くような声で返答したそのとき、再び声がとどろいてきた。


「婿は安易に決めるなよー。個人的な都合って意味じゃなく後悔するぞー」


「な、なんでよー……?」


 とても届かない音量の声に応えたわけでもあるまいが、ティアドラは続けて、リプカにとって衝撃的な答えをとどろかせてきた。


「戦争が起こるからなー」


「はぁ!?」


「あのフランシス・エルゴールと関係を結ぶ争奪戦だからなー。そうなってもおかしくないって話だー。実際、それで儲かるかもしれんと爺様方が話をしてたからなー。まあ俺はそっちのほうがいいけどなー」


「そんな――そんな馬鹿な!?」


「安易に決めるなよー。戦争が起こるぞー……」


 遠ざかってゆく声を聞きながら、リプカはへにゃりとその場にへたり込んでしまった。


 どうやら、この度複数寄せられた縁談の事は、想像以上に複雑で危険をはらんだ、政治事らしい。


 クララと幸せな家庭を築く妄想は、ここで一度、まるでパズルのように形を保ったままバラバラになってしまった。


 


面白いと思って頂けましたら、是非評価の程お願い致します。<(_ _)>

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか主人公の幸せな未来像が崩れ去るのって心がキュってなる…
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