8弾き目.似たもの同士
今日も二話連続投稿の日です。
もう一話は、今日の16時過ぎに投稿致します。そちらもよろしくお願いします。
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波風 隼斗 男性 16歳 レベル323
職業:吟遊詩人 魔力保有量780938
指力:12896
体力:8009
耐性:5070
俊敏:10890
幸運:6
固有技能:言語理解、音強化[貫通]+[爆発]+[振動]+[破裂]+[留]+[連続性]+[指力変換]+[破壊力]+[浸透]+[魔力変換]+[速度上昇]+[防御無視]
獲得技能:肉体再生、魔力吸収、身体強化、魔力感知、毒耐性、麻痺耐性、幻覚耐性、縮地、空中歩行、地形理解、魔法理解、人間理解、異人理解、魔物理解、気配感知
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「ま、ま、ま」
「まーまーまー?」
お決まりの流れのように師匠は俺の言葉を楽しそうになぞる。この流れも俺は嫌いじゃない。だが、そんなんどうでもいいほどに、俺は声をあげずにはいられない。
「「まじかァァァァァァァァァァァ!!! 」」
「もうこのパターン飽きたんだが? 」
「いやそう言われても! え、え、レベル上がりすぎでは!? あとなんか色々付いてるし! 」
人間側は数で他を圧倒しているが、それは逆に言えば数でしか圧倒できないとも言える。俺の記憶が正しければ、人間側の最大レベルは200辺りだ。
それもひと握りのさらに才能を持ちに持った人間しかその域には到達できない。要は俺は、今人間の限界を一戦だけで超えてしまった。
「君が殺したあのカエルだがね。あれのレベルは563。それをレベル30しかない君が殺したんだ。そりゃそこまで上がるだろうとも、我が弟子」
当然なことを言わせるなといったふうに、師匠はため息混じりに説明してきた。いやでも、これは上がりすぎでは?確かに戦闘後、本当に回復した今では力が漲るし、魔力がすげぇ量俺の中にいるのは分かるよ?
視力も良くなったみたいで、今なら師匠の毛穴ぐらいは見えそうだけども!
「君、人間の成長限界とやらを頭にうかべたんだろう」
「は、はい。そうですけども......。」
はぁとため息をまた吐いて、師匠は話し出した。
「レベルアップに必要なことは? 」
「相手を殺して魔力を得ることです。」
「正解。相手が内包している魔力を得ることで身体的、能力的にこの世界の者は強くなる。だが、人間はよく怪我をするだろう。それこそ腕が一本切り落とされたり、足をもがれたり」
師匠の説明を鮮明に思い浮かべてしまった俺が、嘔吐いたのは言うまでもない。あのカエルの死体の後にこんな説明をされたのだから。
「君みたいな人間じゃなければ生えてこないし、治療も止血するぐらいさ。そこまで魔法は万能じゃない。それで、怪我をした者が今まで通り敵を殺せると思うか?」
「い、いや難しいと思います」
「だから人間は成長に限界が来るんだ。人間以外はもっとレベルが高いぞ。それこそあのカエルを少人数で殺せるほどにはな」
なるほど。師匠の話に納得が言った。なぜ人間が数でしか対抗できないのか。
他種族にはそんな枷がないんだろうな。寿命も長く、怪我も負いづらい。怪我を負ってもそのあまりある身体能力や魔法で、どんどん成長できるって訳だ。
人間積んでね?
「追加技能やら音強化に付いているのは、今後の修行でゆっくりと教えていこう。それで、だ。」
優しいランプの光に照らされた師匠の顔がなんだか、悲しそうに見えているのは俺だけだろうか。
師匠は俺のギルドカードの後に、師匠の話をすると言っていた。それに関係しているのか?俺はもう師匠に正直ぞっこんだし、今更関係を切る気は無いけど。
というか師匠元魔王とか言ってたし、とんでもない人なのに。
「私はな、我が弟子。人間と魔物のハーフなんだ」
そして師匠は俺に語ってくれた。
父である第26代魔王は自らを殺しに来た異世界の勇者を無理矢理孕ませ、師匠を産ませた。単なる気まぐれ、だそうだ。そして師匠が生まれたあと、勇者は死んだ。
自殺だったらしい。まぁ確かに話を聞く限りではそうなるのは仕方ないけれども......。
そしてもちろん魔王は師匠に対して育児をすることも無い。師匠も師匠でそこはどうでもよかったらしく、一つ心残りがあるとすれば、母と一言も交わしたことがないことらしいが......。
師匠が魔法に目覚めると、暇つぶしで何度も人間の国を転移させて遊んだ。
とんでもねぇ。師匠が得意とする空間をねじ曲げる、空間魔法。
良く師匠が空中から物を取り出しているが、あれも空間魔法の応用らしい。説明されたが、全く分からなかったので、某たぬき型ロボットのポケットのようだと自分で納得させた。
そして年齢が15を過ぎてから転機が訪れた。父が死亡したのだ。配下による暗殺だったらしいが、これで師匠は自由の身。忌々しい父親の魔物の地から離れられないという契約が消えた。
「パパさんはなんで、そんな契約を?愛してたから? 」
「んな訳あるか。殺されはしなかったが、己の前まで来た驚異が産んだ娘だぞ。手元に置いて、いつでも殺せるようにしたかったんだろう。まぁ私も父のことはどうでもよかったがな」
そして自由になった師匠は世界を旅したそうだ。人間の血のおかげか、魔物の殺意は余りなく、書物で見たこの世界を旅したかったそうだ。
本当に楽しかったと、師匠は顔をほころばせた。師匠が俺以外で笑うのは初めて見たが、うん。可愛い。そして友人とも言える人々を、村を、国を、作りながらも旅は続いた。
だが、そんな楽しい日々も終わりを迎えた。
昔から師匠の空間の力に目をつけていた現魔王の側近に見つけられたからだ。
名をバルル。アホみたいな名前だが、魔物側では珍しくとても知能が高かった。
現魔王は人間滅ぶべし、しか考えてない脳筋らしく。人間側に入り込んでいた師匠は、打倒魔王となっていく。
魔物側の力ある魔物、バルるを含めた七人を従え、大戦争を起こしたらしい。
「あの時はもう、ちぎっては投げ、ちぎっては投げだったぞ。荒地が血の海で満たされ、なんなら私はそこで泳いだほどだ。」
変態かよこの師匠。そして無事魔王を討伐し、晴れて師匠は第36代魔王の椅子に座ることができたそうだ。そして声高らかに宣言した。
人間と和平を結ぶ、と。最初はもちろん反発もあったが、師匠と師匠の側近の七人が文字通り黙らせていき、人間との和平は近い将来となった。はずだったんだ。
「要約すると私は騙されていたんだ。バルルにな」
人間との和平を組むためには、危険分子を先立って殺す必要があると説明を受けた。だが、師匠は空間魔法の天才、そいつらの根城ごと破壊することが出来る。
「私はね。その敵対勢力の根城を無理やり空間転移させて、これまた敵対勢力の上に移動させて破壊していたんだ」
一手で二箇所破壊できる最強の魔法。それが師匠が得意とする空間魔法。そして師匠も敵対勢力の人間や異人は、全て逃がしてからその力を誇示していたはずだった。
「私は自らの力を過信しすぎていた。なんでも出来るってね。その逃がしていた者たち全員が本当は逃げられていないことにも気付かずに......」
師匠が逃がしたはずの者たちは全員、破壊される土地に再転移されていた。そう、師匠以外にも空間魔法を操る者がいたのだ。
「それがバルルさ。巧妙に、私の手で逃がした者たちを戻し、私に殺させていた。気付く筈のそんな事も残りの側近、六名に隠蔽魔法さ。本当、魔法さまさま。」
おかしいとは思ったそうだ。魔物と共存する道を模索する国の王に送った文の返答がこない。反対の声は大きくなる一方。自らを殺しにくる異世界の勇者や、この世界の勇者も凄まじい呪いの言葉を吐いてから死んでいくことに。
「しかも私が飛ばしていた土地はな。私が旅した場所に転移されていたよ。横からかすめ取るようにな」
師匠は、自傷気味の笑みでそんなことを話した。師匠は魔物側最強の魔法使いだ。だが、師匠の魔法に、師匠自体にかけられた魔法には気づけない。なぜなら、他人を疑うという当たり前の事を教えられていないのだから。
「私が私の手で、人間、異人を殺していたんだ。それに気づくまでにはなかなかの時間がかかったよ」
魔法の掠め取り、転移場所の変更、その他もろもろの行為。その他全てをバルル率いる側近で、師匠の行為はねじ曲げられていた。転移魔法の天才だからといって、無限に魔力がつける訳では無い。そりゃ俺ら人間側から見れば、無限に近いのだけど。
意図的に魔力が薄まり、外の世界が分からない部屋で行われていたらしく、その隙を付いての反逆だった。
疲れた師匠が旅した国を来て回ろうと転移した時だった。
人も異人も皆が笑いながら手を取り、繁栄を築いていた花の都は、師匠の目の前にはなかった。
瓦礫が散乱し、大量の屍と蝿やうじが蠢くそんな死の大地だ。
最初はそんな光景を信じられなかった。だが、転移した先々が全て同じ光景。そして。
「私は刺されたんだ、ただの人間に背後から。あまりの目の前の惨状に目を奪われていたからね。致命傷にもならないその攻撃をしてきたのはただの女だったよ。」
ただの女。だが、師匠は顔を覚えていた。旅をしていた時、停めてくれた家の夫婦。だが、骨と皮のようなその女は、ハエのたかる亡骸を大事そうに抱えながら師匠への恨み言を叫び、そして電源が切れたように息を引き取ったらしい。
「あの人はそんな顔をする人じゃなかったさ。震える手で私はあの人の額を触った。数年前は健康そのものだったはずの、皮と骨だけになってしまったその人の額に。」
師匠はそこから記憶を読み取ったらしい。記憶の読み取り、そんな魔法。それで全てを悟った。国へ向けた文が共生を目指すものではなく、ただの宣戦布告の文に変わっていたこと。師匠の転移魔法で落としていた様を、投影魔法で見せつけられていたこと。何も知らない人々は師匠が、大虐殺の犯人に思えただろう。
「私は初めて叫ぶほど、怒ったさ。あれほど激怒したのは生まれて初めてだったよ。そしてなんも準備もないまま感情の赴くままに、あいつらの場所まで戻った」
そして、バルル含めた側近に対して今までの事を話し、殺そうとした。だが、詰めが甘かった。最強と謳われる者でも一人では限度がある。側近二人を殺したがその後封印魔法を放たれた。
なんで殺さなかったのか、という俺の質問に師匠は淡々と答えた。
「私を魔物を産む母にでもしたかったんだろう。現にここでは私の魔力に当てられた魔物が出来ている。それをあいつらは利用しているのさ」
師匠を殺さずにダンジョンのコアのような役割をさせているらしい。
何度も空間転移魔法で逃げようとしたが、外から微小な存在を持ち込んだり、ダンジョンの魔物を数体程度持ち込めるが、自信が出ることは出来ないらしい。
それがこのダンジョン、そしてその最下層に貼られている結界の性質らしい。
「何度も死のうとはしたが、ここは魔力が濃い。私が細切れになろうが、再生してしまう。だから300年近く生きてはきたが、もう諦めたよ。我が弟子、これが私の人生さ惨めだろう。私から手を引くならそれでも―」
「え、俺って微小な存在認定? 」
堪えきれずに言葉が出てしまった。
「我が弟子そこ!? いや私色々話したよな! 」
「あー、師匠がめっちゃ人殺しして裏切られた話?裏切られた経緯を持つ俺氏からすると、別段珍しい話でもないんご」
「んご!? 」
驚く師匠を後目に俺は俺の考えを話す。
「そりゃ事実は変わらないし、恨まれても当然だとは思うよ?俺も別に師匠が鬼可愛くて嫁にしたいくらい大好きだからといっても、そこは裏切られた師匠が可哀想だよなんてものは思わない」
「か、かわ。嫁......」
プシューと煙が出ている師匠は置いておいて。
「でもだからといって師匠との関係を切るつもりは無い。しかも、俺はここからでたら必ず人を殺す。それがクラスメイトでもなくても、俺の邪魔をするのが誰であれ、礎になってもらう。」
俺が誓ったことだ。復讐者としての道は分からないが、もう知ったこっちゃない。俺はあの殺意の渦の中から、這い上がってきたんだ。
「師匠がハーフとか、魔王とか。あ、元魔王か。とかさ、大量殺人者とかは置いて俺は師匠とこれからも居たいし、この世界を見て回りたいと思ってる。だからそれだけ。手を切るなんてまっぴらごめん」
そこまで胸の内をさらけ出した。今更師匠がどんな過去を持っていようが、救われた事、許してくれたこと、知識をくれたことは感謝している。嫁にしたい云々も思ってるし―って! 師匠なんか泣いてる!やばいやばい、俺なんか言っちゃいましたか!?
あ、これ異世界転生物っぽい。
「我が弟子...ありがとう。私は私を許しきれないが、君と共に今の世界、私がした事を見て回りたい。そう...したい......。協力してしてくれるか? 」
「勿論ですよ。一緒にここから出ましょう。師匠」
新たな決意と共に、俺は師匠を柔らかく抱きしめる。こんな細い体で、こんなか弱い体で今まで一人で抱え込んでいたのか。
その日俺は泣きじゃくる師匠をいつまでも抱きしめていた。
これで二人の過去編は終了ですー。多分。