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4弾き目.覚悟と悪魔と弟子と俺

よろしくお願いします〜。時間投稿は今んところは21時ですが、変えるかもしれません。その場合は前もって連絡しますー

 目が覚め、生きていることを実感する。空気を大きく吸い込み、吐き出すだけでなんだか涙が出るような気がするのは少し大袈裟だろうか?


 俺は乱暴に涙を拭き取ると、ふかふかのベッドからおりた。


 ビルの中の家具コーナーで触った極上と歌われた羽毛布団も、ただの布としか思い出せないような極上ベッド。人が入ってしまえばそのオフトゥンの抱きつき攻撃に為す術もないだろう。


 俺は二度三度名残惜しそうに触り、近くに置いてある車椅子のような物に座る。そしてガラスで出来たようなドアを開ける。


 メリー曰く、

「この空間は私を封じ込める目的でね。まぁ端的に言ってしまえば部屋がない。代わりに物置小屋しかないが、我慢してくれたまえ」

 と言われた。


 だが、俺は部屋を見渡す。普通に一家庭が過ごせるまであるほどの部屋がそこにはある。

 綺麗に備え付けられた家具、どこの風景を写しているのか分からない窓。そしてご丁寧に冷蔵庫のようなものとキッチンまで付いている。

 ここで生活しろと言われたら、俺はおそらく喜んで住むだろう。


 そんな部屋を後にし、短い廊下を通って大きな空間に出てくる。俺が最初に目を覚ました赤と黄金に彩られた巨大な空間。

 大きな空間を照らすシャンデリアは、今もその役割をしっかりと全うしている。

 全てが統一されている様だが、中央に置かれた古ぼけた机と、嫌にニコニコと笑みを浮かべるマリーが浮いているように俺は感じた。


「おはようハヤト君」

「おはようございます。ハヤト様」

「お、おはようマリー、サリスさん」


 軽く手のひらを震るマリーとは対照的に、メイドのサリスさんはメイド服のスカートの裾を少しあげ、軽くお辞儀をした。

 俺はゆっくりとマリーの前に移動する。この車椅子、魔力で動くらしい。魔力を扱う事が苦手なおれは借りて一日も経っていないので、中々動かしづらい。

 だが、左足を潰されているので、杖で移動するよりかはまぁいいだろう。

 移動し終わるのを待っている間、サリスさんの淹れた紅茶をマリーは美味しそうに飲んで待っていた。


「ふふ、それはどんな具合だい?」

「車椅子の事なら、結構、苦労してるよ」


 その言葉を聞くと、ふむふむと何やらペンで書いている。なんか高校の面接受けてるみたいでいい気持ちはしない。あの頃にはこんな目にあうとは思わなかったんだけどなぁ。


 マリーの真正面にようやく移動できると、マリーは虚空からひとつの瓶を取り出した。

 濁った液体が入っている透明の瓶。俺の本能がこれは飲んだらやばいと言っている。

 絶対に手をだしてはいけな―


「これを飲みたまえ」

「嫌だ」

「はよ飲め」

「絶対ヤバいやつじゃん」

「大丈夫大丈夫先っちょだけだから、ほらほら」

「先っちょってどこだ...むぐぐぐ......」


 いつの間にか俺の後ろに回っていたサリンさんに羽交い締めにされ、マリーに強引に口を開けられ、その液体を流し込まれてしまった。


「げほっ! がはっ! そんな強引に、もうお嫁に行けない...げほっ......」

「行くのなら婿だろ。馬鹿か君は」


 マリーの蔑むような目を睨み返すと、彼女の言葉が遠ざかる。


「意思に呑まれるな。そうすれば―」


 え、なんだって?もっかい、聞こえないよマリー。その言葉は俺の口から出ることはなく、その代わり絶叫だけが俺の口から零れた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ここはどこだ。暗闇で意識が戻る。ふわふわと浮いているような感覚に、不安が募った。


 頭を回しても何も見えない。聞こえない。


 感覚も指先が暗闇に溶けてるようでただ怖い。


 暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇。


 それしか考えられなくなった。どれほどの時がたっただろうか。そこまでたってない気もする。暗闇に溶けた俺の体では、時間すらよく分からなくなる。だが、次第に今度は頭に木霊する誰かの声。


 コロセ、オカセ、コワセ、ウバエ、コロセ、コロセ、コロセ、クエ、オカセ、ウバエ、ステロ、ウバエ、コロセ、クエ、オカセ、コロセ、ウバエ、コロセ、ウバエ、コロセ、ウバエ、コロセ、コロセ、コロセ―


 誰かの声が頭に響く。俺の頭を誰かの声が侵食する。心がひび割れて今にも砕けそうだ。


 意識していなかっただけで体が何度も何度も張り裂けては消え、張り裂けては消えている感覚。


 頭を殴る誰かの言葉に、体を犯すこの痛みに、その全てに憎悪で心が染まりそうだった。


 俺は甘いのだろうか?いや甘かった。この世界を見てから決める?違う、この世界は俺をあの世界から奪った。望んでいないのにこの世界に産み落とした。あんなに怠惰でタノシカッタセカイを俺から奪った。

 フクシュウなんてモノじゃない。クラスメイトは殺す。俺を邪魔する者は殺す。俺のタノシミウバッタこの世界を壊しツクス。


 それが、それこそが俺の―


 心が殺意で埋まりそうな、いやもう染まり切ろうとした瞬間。嫌に鮮明な声が響いた。


「染まるなと言っただろう。この馬鹿者」


 頬をビンタされた様な気がした。もう誰かの名前すら思い出せないが、俺を助けてくれた。


 復讐しようとも、言ってくれた。俺はうんって言ったんだ。


 でもその気持ちはこんな誰かの殺意じゃない。俺が抱いたこの悲しみ、悔しさ、殺意は俺だけのものだ。

 お前たちに使われる言われはない!

 俺の中から出ていけ。


 俺は声にならない声をあげる。

 そうだこの感覚だ。そうだそうだ。

 俺から出ていかないならお前たちをまずは―。


 俺の経験の礎になってくれ。


 そうして俺の意識が暗闇から湧き出た。


「おかえり、ハヤトくん」

「ああ、ただいま。マリー」


 いつの間にか地面に横たわっていた。だがそんなことは、どうでもいい。俺は立ち上がり、俺はあの世界での決意をマリーに話す。一つの決意として、一つの野望として。ただの復讐者なんてまっぴらごめんだ。


 数あるラノベの中でもそんな感じのあったし。何より、俺は俺の意思で行動したい。その結末が人殺しであっても、おれはそれを肯定しないで背負って生きていく。だからマリー聞いてくれ、俺の決意を。


「マリー、決めたよ。」

「うん? 」


 優しい母のような顔を浮かべ、俺の言葉を待っている。


「俺はこのセカイを見て回るよ。その後でこのセカイを壊すかどうかは決める。だが、クラスメイトは分からない。その道中で俺は俺自身を見つめ直したい。だが、邪魔するやつは誰であろうと俺の経験の礎にする。」


「それが私でもかい? 」


 口元を歪ませた可憐な少女は俺に問う。こんなわがままな願望を持って私を、知ってしまった人物を殺せるのか?と。


 答えはもう決まっている。甘い自分はもう棄てた。


「ああ、君であろうと邪魔するなら必ず殺す。」


 その答えを待っていたかのように、目の前の少女は笑う。まるで何十年、何百年もその答えを探していたように、彼女は盛大に笑いあげた。


 そして格式ばった風にスカートの裾を掴みあげながら、言い放つ。


「汝の決意を私はしかと見届けよう! これからはこの私、第36代元魔王、マリー・ガナベントが手助けをしよう! 」


 俺は悪魔に魂を売ったのかもしれない。でももういいんだ。


 もう殺されるだけの人生なんて嫌なんだ。そんな自己中心的な俺を置いて彼女は笑う。


 そしてこの言葉を皮切りに俺と彼女の生活はスタートした。


「これからは私を師匠と呼ぶといい。期待してるぞ、我が弟子」


 嫌な予感が全身を駆け巡る。意外と本能ってのはバカに出来ないし。やっぱり、魂返してもらおうかな?








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