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1弾き目.異世界転移

よろしくお願いします。

 俺がゆっくりと目を開けるとそこには桃源郷のような、男の全てが心臓鷲掴みにされ、なんなら蹴り飛ばされるレベルの美少女がそこにはいた。


「全く、いきなり気を失うから死んでしまったのだと思ったよ。キミィ」

「う、うわぁぁぁぁ!」

「こらこら、動かない」


 少女は俺の頭をガシッと掴むと、そのまま逃がさないように元いた場所に移動した。え、何この状況。これがもしや天国でござるか?などと変なことを考えていると、少女の方が見透かしたように声をかけてきた。


「一応断っておくが、ここは天国でもないし、地獄でもないよ。いや、実際は地獄より最悪かもしれないがね。」


 頭を撫でながら、そんなことを言われても全く頭に入ってこない。というかこの体勢、夢にまで見た膝枕というものでは?おいおい、これはいよいよ俺死んだわ。


 そんなことを考えて気付いた。気を失う前に俺が口走っていた事を。

 頬が熱くなる気がして、上手くこの少女を見れない。だが、お構い無しにこの少女は話し続ける。


「全く、いきなり愛の告白なんてびっくりしたぞ君。」

「いや、面目ない」


 ニコッと可愛らしい笑みを浮かべ、俺の頭を優しく撫でながら、少女は言う。いやほんとなにこの状況。


「安心してくれたまえ。今の君はすぐには死なない。とりあえずは君の今までを聞くまでは、だけどね。」


 ニコッと悪魔のように笑う彼女に惚けていたが、次の言葉で俺は現実に戻されてしまった。


「それで、君のギルドカードを見たけどこれが、裏切られた原因かね?」


 ヒラヒラと玩具を扱うように俺のギルドカードを持っている。ああ、やっぱりこれは現実で俺はあいつらに.......。


「そういえばそういう契約だったね。」


 意識を手放す前の彼女の言葉を思い出す。記憶を話すことで、そしてその後、世界を壊すかどうかだったっけな。


「話すよ。それでいいかい」


 答えも言葉もない。だが、彼女はご満悦のように笑うから口が勝手に開いてしまった。


「始まりは―」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 古ぼけた鐘の音が四限の終わりと夢の終わりを告げる。時代の置き残した化石のような机にヨダレを垂らしていた俺は急いで身支度を開始する。


 身支度と言っても涎拭いて、号令に合わせるだけだが。

 国語の教師が教室を出てからが俺たち生徒の時間だ。


波風隼斗(なみかぜはやと)。君また寝ていただろう!」


 うるさいのがまた来た、と俺は思う。

 俺の名を呼んだのは藤堂直哉(ふじどうなおや)

 170cmの身長の俺よりも大きい180cm。長身なだけではなく、文武両道のイケメンボーイ、更には家は有名な何とかの何とからしい。死ぬほどどうでもいいので、覚えてはいないが、このなんでも完璧くんに俺はかなり目をつけられている。


 理由は単純、こいつが学級委員と言うだけだ。高々高校生のしかも一つの委員という仕事にそこまで本気にならなくてもとは、思うがそこはまぁ仕事を増やしている俺が言えたことじゃないか。


「ごめん、昨日の小説が面白くてつい寝不足なんだ」

「ふむ、小説か。それは殊勝な趣味ではある。」

「どーせ。こいつラノベとかっていうキモイオタク小説読んでんのよ」


 藤堂の金魚の糞もとい、いつもくっついてるツンデレみてぇな女。萩川花梨(はぎかわかりん)に色々言われる。こいつ何時代の人間だよ。


 まぁ藤川の指摘通り、読んでるのはラノベなんですけどね。バレないように誤魔化しつつ、机の上のラノベを教科書と一緒にしまい込んだ。


 俺はオタクと呼ばれる部類だ。だが別にオープンにする訳でもない。その時期は中学の黒歴史と共に封印した。


 別段仲良い友達もいないが、クラスで浮いている訳でもないこの立ち位置が非常に楽で楽しい。

 そんなわけで軽くオタクを隠しながらも日々藤堂に怒られる日々を送っていた。


 そんな日々が続き、卒業するんだろうなと思っていた矢先。授業中ひかりの輪が教室を包み込んだ。

 光に包まれたよく分からない紋章が俺達を包み込む。

 クラス中、阿鼻叫喚の大パニック。俺もめちゃくちゃびびったし。目を瞑る事ぐらいしか、この現象に対抗する手段は俺にはなかった。


 瞼の光が引くのを確認して、目を開けるとそこは神殿のような場所だった。

 白い大理石のような大きな柱がいくつも天井を支える場所。

 正面に壁に埋め込まれてるような少女が果物を食べてる絵画が酷く印象的なその空間。


 そして俺含めたクラス24名と担任はローブを深く被った者数十名と宝石をあしらっている女性一人に囲まれていた。


 そんなびっくりを通り越して失神しそうな状況でもお構い無しに、宝石を身にまとっている女性は高らかに、鮮烈に、懇願するよに、そして少し芝居のかかった言葉を俺たちに紡いだ。


「ああ、異世界の勇者たちよ。私達を救ってください。」


 ザワザワとざわつく勇者達と称されたクラス。そりゃそうだ。いきなりこんな世界に飛ばされたんだ。俺以外は大体慌てふためいて当然だろう。


 ラノベを愛し、アニメを愛し、ゲームその他を愛している俺ですら膝がこんなに震えてるんだから。

 そりゃ夢に見た異世界転移的なことが起きても、やったぜなんて手放しで喜べない。

 まぉとりあえず様子見かな。そろそろ藤堂とかが。


「勇者とはどうゆうことですか!?俺たちは一体なんの為に―」


 焦りながら言う藤堂の事を遮るように、女性は言葉を紡ぐ。


「順を追って説明致しますわ」


 そんなこんなで俺の異世界生活はスタートしたのだった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺たちは現在ラドノーク王城の一室に、押し込まれているように待機させられている。この一室に来てから一連の流れやこの世界の事を教えてもらった。だが、クラスは担任も含めてちんぷんかんぷんの様な有様だ。


 藤堂も俺の横でちょこんと体育座りしながらなにやら考え込んでいる。

 俺はそんな頼りない委員長を置いといて、さっき説明されたことを頭で反芻した。


 この世界はラノンと呼ばれている。その中で繁栄をしているのが、三種類存在している。人間と異人と魔物だ。

 人間は言わずもがな俺達のような者たちだ。そして異人。これは人間と姿形、考え方は似ているが魔物の様な力を持つ人々とされている。それこそ龍人や鬼人、兎人なんて居るらしい。

 そして最後に魔物。これは世界を破壊たらしめると呼ばれている者達らしい。

 現に人や異人に害をなしている。それ以外に様々な種族が居るが現在はこの三竦みで戦争や紛争が起きているらしい。そしてそれぞれの種族はそれぞれの神に愛され、恩恵を貰っているとのこと。


 ジョブクラスや繁栄を司る神に、人間。

 圧倒的な身体能力を司る神に、異人。

 魔法や寿命を司る神に、魔物。


 それぞれがそれぞれの考えや武器を扱いながら、他種族と争っているらしい。


 この中で人間が一番強いと思いきや、この三竦みはどうやら上手くいっているらしい。魔法を使えない異人は伝統と長い歴史の技で翻弄し、知能が低い魔物は魔法で擬似的な武器と共に、そして長い寿命と生命活動によって他種族を蹂躙し、人間は武器や魔法、そして繁栄を持って数で、他を圧制しているらしい。


 人間はより良い生活の為、異人は自らの力を誇示する為、魔人は己の種族以外を殲滅する為。この世界ではそうした思想で戦争が起こっているらしい。


 そして俺たちはそんな人間の切り札として呼ばれた。

 この世界では異世界からの来訪者は珍しくない。そしてそのことごとくが、純粋に高いレベルを誇っている様で、つい先日意図的に異世界から人を呼ぶ術を開発したのがこのラドノーク王国。


 俺たちが呼ばれた場所はラドノーク王城の儀式の間と呼ばれる場所。ここラドノークは人間側最大の王城と呼ばれ、実際人間の7割はこの土地で生活をしている。


 そして俺たちは人間側として、そして他種族を滅ぼす為だけに召喚された。要は体のいい人殺しの為だけに召喚されたようだ。その事実をここまで暗い現状にさせているのだろう。


「皆様、準備が出来ましたのでこちらの部屋へ」


 俺の頭の中の整理が着くのと同時に、大きな扉が開かれメイドにクラスが呼ばれた。

 そしてクラス全員横並びで歩いても埋まらないほどの大きな廊下を歩き、ある部屋へ通される。そこには本が所狭しと置かれた図書館のようだった。

 一つ一つが極太の凶器のような本だ。ちょうど枕代わりにした方が、その役割を全うできそうである。


「今から皆様には大事なジョブ選定をしていただきますわ」


 渦巻きのようなカールが特徴的な王女ラドニアが、朗らかな笑みを浮かべる。この人こそ俺たちが会ったフードの人以外の顔が見える人である。この人間側のラドノーク王国の第80王女である。


 この王女の凄いところは、おほほほとか言いそうなのにそれに似合う容姿をしているからだ。カールの巻いた綺麗なブロンドヘアに、吸い込まれそうなほど青い瞳。

 つり目っぽい顔に隠せないダイナマイトボディ。俺のガイアが囁いている。ツンデレ王女様キャラであると、要するにたまらん。

 現にクラスの男子は左右に揺れるふたつの巨峰に目を奪われているし、女子でさえ目を輝かせている。

 俺の心臓が爆音を上げているのは言うまでもない。


 そんなこんなで俺も二つの巨峰に目を奪われている間に、メイドが俺達に小さい鉄のプレートと共に針も渡してきた。

 大きさは学生証ぐらい、片手で容易に持てる程の代物だ。


「そちらに渡した針で指先から血を出していただき、プレートに押し付けて頂ければ神との契約は完了されます。」


 指先でね、といったふうに細い指が王女の唇に当てられる。その官能的な動きだけで男たちの瞳は釘付けだ。

 脳内麻薬でも出ているかのような夢心地で俺は指を傷付け、早速プレートに血を擦り付けた。


 俺のつけた血は鉄の大地を這うように、ゆっくりとそして確実に掘るように動き続ける。

 周りの反応からも、どうやらこれが皆同じようになっているらしい。


 そして俺は内心ワクワクしていた。まさかラノベやアニメ、ゲームのような世界を旅できるなんて、と呑気に考えていた。そして俺の血がその役割を終え、ただの塊になる頃俺のステータスが現れた。そこに書いてあったのは。


 =====================

 波風 隼斗 男性 16歳 レベル1


 職業:吟遊詩人 魔力保有量30


 指力:50

 体力:5

 耐性:5

 俊敏:5

 幸運:5


 固有技能:言語理解、音強化


 =====================


「は?バグ?」

 俺から出たのはそんな素っ頓狂な言葉だけだった。




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