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17弾き目.女騎士

長身いっすねぇー

 素朴な墓を三つ作り終え、軽く手を合わせる。そこら辺にころがってるゲス野郎の死体達も、一緒くたに同じ墓に埋めた。さすがの俺も、そこまでクズには堕ちれない。


 そして軽く自己紹介を俺達は交わした。女性騎士はヘレナさん。しかも年齢は19才の歳上。年上に見えないような幼い外見だが、かなりの長身。


 ぽわぽわしたお花畑のような雰囲気のお姉さんとか、もうどストライクっす。


 彼女は数年前まで、異臨海のある王国の騎士として務めていたが、野外クエストを行っている際に王国の王が暗殺。


 国を取り戻そうとしたが、魔剣がその力を失い現在はゆるりと旅をしながら、魔剣を復活させようとしているとの事だ。


 ちなみに、俺の情報は伏せている。名前だけ伝えただけだ。あらかた、異世界から来たことを話したら、『貴方は彼らの仲間! 死すべし! 』とか言われかねないし。


 ステータスも俺と師匠は一応偽装している。ギルドカードは無理だが、目に映るものぐらいなら幻魔法かなんかでできるみたいで、師匠がやってくれた。この人本当に呪われてんのかよって思ったけど。


 手を合わせながら、ヘレンさんがぽつりぽつりと話し始めた。


「彼らは、偶然行き先が同じだったんです。私もお金がなくて、それで護衛する名目で護衛の任務に......。それなのに、逆に私を守ろうと前に......。」


 ヘレンさんはきっと一つの出会いを大切にする人なんだと思う。だって、少ししか時間を共有していない人達に、こんな寂しそうな顔ができるんだし。


 綺麗な横顔に涙の雫が一つ地面に流れる。ゴシゴシと拭いたあと、真剣な眼差しで膝をつきながら言葉を吐く。


「貴殿らの助けがなければ、私は遅かれ早かれ死んでいました。どんな素性で、どんな考えかは分かりませんが、貴殿らに最大の感謝を。」


 幼い外見を忘れるほどの騎士道精神を表した彼女の姿は、比喩じゃなくて純粋に生き様が美しいと感じた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 馬車に揺れること、一時間。お世辞にも乗り心地がいいとは言えないが、まぁ仕方ないか。

 あの後、ヘレンさんについていき、街道に出ることが出来た。そして偶然通りかかった行商人の馬車に乗せてもらって現在に至る。


「それで、あんたらどこに行く予定でぇ?」


 馬の綱を引きながら、少し老けた男性が俺たちに話しかけてくる。確かに、行き先を話してなかったな。行き先言う前に、困ってんなら乗りなって言われたし、意外にいい人か?


「「フォルジュロンだ。」です。」


 師匠とヘレンさんの声が重なり、お互いが顔を合わす。ヘレンさんと行き先同じだったのか。


 話を聞くと、どうやら魔剣を直せる人物を探す為に、この辺りに来たらしい。そして、冒険者と共に、ショートカットをしようと森に入り、現在に至る。


「師匠、魔剣を直すとか出来ないんですか?」


 俺はふと、思った事を師匠に質問した。だが、速攻で否定される。


「直せないとも。私はあれの知識がほぼ無いに等しい。魔剣だと分かるぐらいだな」

「そう...ですか。とんでもない力を持つあなた達なら直せるかもと、期待したんですけども......。」


 しゅんと落ち込むように下を向いてしまう。それに伴い、アホ毛もしゅんとしなる。あれ完全の神経通ってんじゃん。


 俺は小声で、本当に知らないんですかと聴いたが、魔剣使うなら手でちぎった方が早いと言われたので妙に真剣な顔になってしまった。いや怖、この師匠。


 本当に魔剣には、知識も興味も無いらしい。俺は勿論、興味津々なのでヘレンさんに頼んで魔剣を持たせてもらった。意外にもヘレンさんは快く貸してくれたことに感動しつつ、俺は魔剣を握る。


「確かに、なんかすごい力を感じます...!掌に力が、なんだか熱く...!?」


 焼ける音と、手のひらの痛みに気付き、俺は魔剣を落としてしまう。それを驚きながらヘレンさんは拾いながら、謝罪を言ってきた。


「す、すみません。隼斗さんがまさか武器を持てない職業とは思えなくって! 」


 ヘレンさんのフォローがド直球で俺のメンタルを抉る。


 そう、これが非常に厄介なのだ。職業で決められた物しか扱えない呪い。掌に焼け付くように残る柄の跡。申し訳なさそうに、回復のポーションを探すヘレンさんに、俺は大丈夫と声をかける。


 これぐらいなら別に回復薬なんて要らないからな。魔力を軽く移動させ、すぐに火傷を治す。その様子に、目を見開くようなヘレンさんと景色を眺める師匠。


 俺の焼ける音に、ステーキが食いてぇなぁと話す行商人。はぁ、なんかもう締りがないなぁと思いながらも、馬車の旅はしばらく続いた。


 夕陽が優しくが街道を照らす様になってから、前方に見える村。今日の俺達が厄介になる村だ。俺と師匠なら、この暗がりでも行けるがヘレンさんはそうはいかない。多分着いていくとか言いそうだが、こちらはダンジョンとは違い魔力が非常に薄い。


 なので、体力が持たないし、俺もお腹が減ってきたから今日の宿はあの村でとるとの話だった。行商人はもう少し先の村に行くそうだが、フォルジュロンとは別方向なので、ここで別れる。


「世話になった、行商。」


 そう言いながら、師匠は虚空の空間魔法の収納からコイン数枚と、小さな翼を象ったアイテムを取り出す。


 その行為にヘレンさんと行商人は、あわあわと口をパクパクさせているが、構わず取り出したものを行商人に手渡す。


「ここまでの駄賃だ。」

「こ、こりゃ、古の貨幣じゃねぇですかい!?一枚ありゃ、豪華な宿に半年は泊まれるような代物でっせ! しかも翼竜の翼と来た。こんな高価なもん貰っても?」

「ああ、私達には必要のないガラクタだ。中々に面白い道中だった、礼を言う」


 行商人はしばし考え、馬車の後ろの袋から紙といくつかのコインを持ってきた。


「ここからならこの地図を見りゃ、歩きでもフォルジュロンに着けますぜ。あとこれは今日の宿代でっせ。それじゃあ達者でなぁ!」


 押し付けるように俺に持たせると、行商人はすたこらと行ってしまった。なんともまぁ後腐れの無い別れ。まぁ、こういうサバサバとした関係も悪くない。地図も貰えたしな。


 俺はふと思った事をヘレンさんにぶつけてみた。


「地図が手に入ってしまったんですが、ヘレンさんどうします?方角さえ分かれば無理に旅をする必要も無くなりましたが......。」


 本当はもっと居たいとは思うのだが、傷が治る化け物とは一緒にいたくないだろうと思う。俺だって怖いし、逆の立場なら。


 ああ、女騎士とかカッコ良いし、色々な話とか聞きたいけど、まぁ仕方ないかな。


 そんな風に考える俺をよそ目に、ヘレンさん

 キッパリと言い切った。


「貴殿らとの契約は、護ります。私の騎士道に誓って」


 本当に志というか、信念というか真っ直ぐな人だなぁ。


「まぁそう言うことだ、我が弟子。とりあえず食事処か宿でも探そうじゃないか?」


 俺達は素直に師匠の言う通りにすることにした。







ポイントやブクマなどありがとうございます!

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