15弾き目.日の出
これにて第一章終わりになります。
あとがきに今後のことを書いておきます。
落ち着きを取り戻した俺は外の世界に出ることも無く、二人で壁に背を預けて座っていた。手を握り、いつまでも遠くを眺めていた。
「師匠」
「うん、なんだい我が弟子」
「実は死んでいて、幽霊的な事とかないですよね?突然光に包まれて消えるとか―」
「無い無い。私はここに存在しているとも。いやなに、死後の世界とやらがあれば、泣きじゃくる君の姿を眺めるのも面白そうだが」
そう言い、師匠は俺に軽く口付けをする。頬が赤らんだ師匠は、そのまま座っていた場所に座り直す。
「この体温は、ちゃんと生きている証明だとも。」
恥ずかしいし、嬉しいし、胸が満たされるが、自然と涙が流れて止まらない。
「まぁ、死にかけたことは事実だがね。母上の残した聖異物、ロンゴミニアド。あと数センチ当たり所が悪ければ本当に死んでいたとも」
ロンゴミニアド。アニメやゲームでしか知らない聖なる槍。アーサー王がモードレッドを殺すのに使用した聖なる槍。
「まぁ致命傷は避けられたが、モルガンの言う通り、この身には呪いがかけられたようだ。色々とあるが、まぁ、結論から言うと私は今までの十分の一も力を出せない。空間魔法の応用である、収納しているあの空間ぐらいしか私は使えない。」
最強と謳われた師匠を、ただの一本の槍だけでここまで弱体化させるとは、さすがはアーサー王の武器。そしてその武器を扱う師匠のお母さん、とんでもない異世界転生者だな。
「申し訳ないが、今までと同じように君を助けることは出来ない。すまな―」
「これからは俺が師匠を守ります。この命に変えても」
俺は師匠を真剣に見つめて、決意を話した。頬を赤らめたが、師匠は目を背けない。ああ、本当に救えたんだ。こんな俺でも。
「ありがとう、師匠。」
「ああ、ありがとう、我が弟子。」
咲き誇る笑顔を師匠は俺に向けた。その笑顔を見る為に、俺は死にかけたのかも、なんて事を俺は一人、考えた。
しばらくそうやって二人でたわいもない話をしていた後、俺達はこのダンジョンを出ることにした。
しばらく居たおかげで、師匠も動けるぐらいまで回復した。まぁ俺も腕吹き飛んだし。
速攻で治ったが、その代わりかなり魔力も消費したから、お互いに回復するのを待っていたこともある。
二人手をつなぎながら、大きな門を開けた。鉄でできた、この神殿には似つかわしくないこの門を二人で開け、ようやくこの長く辛いダンジョンにお別れをしたんだ。
重苦しく空気の淀んだ俺達がいたダンジョンとは違い、外は柔らかな風がふきぬける綺麗な森の中。少し高いところに位置している、そこから眺めた、朝日。
擬似太陽なんかじゃ比にならない柔らかな日差しを受けた師匠は、静かに涙を流していた。その有様が美しすぎて、俺の語彙力なんかじゃ全然表現出来ないような光景だけど、でも、本当に綺麗だったんだ。
「我が弟子、ありがとう。君に出会えて良かった」
溢れる風景を見ながら涙を流す師匠が、あまりに綺麗で、心臓が破裂しそう。
「ああ、世界はこんなに美しいんだな」
「これから沢山、今までの分まで、綺麗なもの、美味しいもの、楽しいことを体験しましょう、一緒に―。」
そういう俺を師匠は見つめて、ゆっくりと言葉をかけた。
「ああ、我が弟子。君を、君を愛している。私の身も心も君に捧げよう。愛しているよ、我が弟子」
世界が初めて俺たちを祝福してくれてる気がした。こんなどうしようもない世界だけど、今だけはそう感じられる。
そして俺達は柔らかな口付けを交わした。
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波風 隼斗 男性 16歳 レベル1789
職業:吟遊詩人 魔力保有量48920387
指力:309173
体力:78460
耐性:23779
俊敏:86340
幸運:20
固有技能:言語理解、音強化[貫通]+[爆発]+[振動]+[破裂]+[留]+[連続性]+[指力変換]+[破壊力]+[浸透]+[魔力変換]+[速度上昇]+[防御無視]+[魔法破壊]+[浸透]+[意図破壊]+[聖異物破壊]+[魔物殺し]
獲得技能:肉体再生、魔力吸収、身体強化、魔力視覚化、毒耐性、麻痺耐性、幻覚耐性、縮地、空中歩行、地形理解、魔法理解、人間理解、異人理解、魔物理解、気配感知、遠見、即時回復、恐怖耐性、痛覚耐性
ここまで呼んでくださり、ありがとうございました!
第二章は一週間後ぐらいから毎日投稿していきたいと思います。
その間に、短い閑話が出せればなぁと考えています。
では、ひとまず来週までお楽しみください!