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「高井さん、俺はそろそろダンジョン攻略に乗り出します」
「そうですか……確かに今のままなら食料が足りずに終わりますからね」
「えぇ、2日ほどで終わらせてきます」
その言葉に目を丸くする高井司令官、確かに早く感じるだろうが中級のダンジョンなら俺はだいたいその速度で攻略できる。
「一応言っておきますが、そう簡単に攻略できるものではありませんからね?」
「えぇ、それは重々承知しております」
「では、行ってきます」
「ご武運を」
基地の外へと歩いていく。フェンスを飛び越え下に溜まるアンデッド共を切り刻んでいく。今回は鎧をつけない、速度重視で行くからな。
「目的地は赤レンガ倉庫、あそこから異常な速度で盛れだしている。この場合だと……」
だいたい数分で着くだろう。
『で、どうかね。彼は』
「とても善い人物です、人を救うことを重視していますね」
『そういうことを聞いているのではない、利用できるかね?』
「……恐らく無理かと、むしろ国家権力が絡む場合雲隠れをする可能性が高いです」
司令室、その中で私は今安田総理と会話していた。その内容は石田魁斗、彼が現政府が利用可能かどうかということだった。
『ふむ……面倒臭い、金では動かんのか?』
「金には無頓着です、むしろ彼が稼ぐ場合なら世界中からお金を集めることが可能です」
『権力もダメ、金もダメ。女はどうだ』
「奥さんがいらしたようですが、既に亡くなっているそうです。ですが新しく妻に迎え入れる気は無い、と断言していました」
『……あぁ!なんなんだ!利用できるかと思えばつけ入れる隙が少なすぎる!救援要請でもしたら助けてくれるのか!?』
安田総理は本当になんでもやってきて総理となった人物だ。自分の思い通りにいかないなら怒り狂うほどには支配欲は凄まじい。正直話しているだけでも気分が悪い。
「助けてくれるでしょうね、彼はどうやら人を助けることを今の目的としているのですから」
『それでは私が惨めではないか!有象無象と同じ奴らと同じように助けられろと?巫山戯るな!』
「知りませんよ、そんなこと。自衛隊にでも縋ればいいでしょう」
『なんだその言い方、貴様クビにするぞ』
「この世界には既に役職は意味あるものでは無いです。むしろ物理的な力がある方が意味あります、あなたにその力がありますか?」
衝動的にこんなことを言ってしまったが……ここから先は弱肉強食の世界になるだろう。なぜそう思うか、一度文明はリセットされる気がするからだ。
その予感は当たっていた。私の予感はだいたい外れるのに、だ。
『っ……!?何だこの揺れ──』
通信が途切れた。
突如として地面が揺れ始めた、これだけならただの地震だと思うが、明らかに揺れが長すぎる。これは……何かが起きているのか?
ふと、目に入ったものがあった。それは海から巨大な……巨大な壁が出る光景だった。窓から身を乗り出し見渡す。それは……北海道と本州の間を裂くように出ていたのだ。
後々知ることになるがこの壁は世界中に出現しており、ありとあらゆる地域を細かくわけていた。
つまり、これより先は独力で生きねばならない時代が来ることになる。
世界の終わりが告げられた瞬間だった。




