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かつての若い体。全盛期の俺の姿。周りは数十年ぶりに見る女神の間、ありとあらゆる世界が包まれた泡が幾つも浮かんでいる。


視線を前に戻す、そこには1人、いや、1柱の女神ががいた。


「よぉ女神様、久しぶりだな」

「そうですね、私からするとあまり時は経っていませんが」

「神様の感覚でしゃべられると困る」

「ふふ……どうでしたか、あちらの世界は」

「そうだなぁ……楽しかった、だなんて陳腐な言葉しか俺は言えない。この胸の内にあるこの……暖かい気持ちが伝えられないのは辛い」

「いえ、ちゃんと伝わってますよ。最後に心残りは?」

「最期にバカ息子を泣かしちまったのが心残りだな」

「それなら問題ないですね」

「かねぇ?」

「貴方と私の分体の子供ですから」

「そっかぁ……いや、もう何言っても何も出来んか」

「そうですよ、死んでしまった貴方にはもうあの世界では何もすることが出来ない。さて、これから貴方は日本へと帰ることになります。そういう契約でしたし」

「死んだら日本に帰すって契約がまさか人生を生き抜いたとしても有効だとは思わなかったよ」

「神としての言葉は非常に重いのです。先程の問題ないという発言もそうですよ」

「そうだったのか、だからあんたの分体を貰えたわけか」

「それでは『英雄』魁斗。あなたを日本へと帰します」

「おう、もう一度会えるかどうかはしらんが……さよならだ、『最高神』イリアスフェア」

「さようなら、私だけの勇者様」


照れるな、いつぶりだその言葉。あいつと全く同じ笑顔で言ってくれるなよ。


そこで意識は途切れた。









それから数日、日本へと帰還した俺は至って普通に過ごしていた。会社に行って、定時に終わって、ゲームの新作確認しながら同僚のオタクとゲーセンで遊んだりして家に帰りら部屋着に着替えてから飯を食って、ゲームして寝る。特に現実世界では変わりはなく、異世界へと行った日である日曜日の朝に俺は目覚めたようだった。


そんな日常が数十年ぶりに出来ていた。よく何も無く仕事が出来るなって思ったが、どうも異世界にいた時の能力をほぼ持ち帰っているからのようで記憶力も上がっていたようだ。ほぼなのは俺の切り札である『覚醒』が使えないからである、使う場面なんて来ない方がいいが。


「魔法ってのは便利だが、不便でもあるな」


指に灯る火を見ながらそう呟く。何故便利なのに不便かと言うと魔法を発動させるのは簡単だが、自由に扱うことが困難だからである。大抵の魔法使いなら炎の玉を飛ばすだけで習熟したことになる、それ以上は非効率だとか言ってやらないがむしろやれ。火の玉を出すだけの魔法で剣の形にして戦えるからな、魔力の消費が少なく、ピンチの時には結構な頻度で使っていた。


「ま、さすがに数十年間も魔法を操ったんだ。これが出来なきゃ困るよな」


火の形を変えていき、スライムだったり虎だったり、最終的には竜の形にしたり鎧を着たかつての仲間に変えたり──


「いや、懐かしんじゃダメだろ。もうあの世界には戻れないし、戻ってもあいつらは死んでんだからよ」


最後に女神に依頼をされて世界を護ったのは25年前。お相手は邪龍、邪竜ではなく神話から生きるヤバいやつ。単体で神々の軍勢の相手をしていたようで、戦闘経験が豊富の油断ならない奴だった。結果的には女神からの支援を貰って倒すことは出来た。その時の傷で仲間が1人死んだのだった。


「だからそんなこと考えても無駄なんだが、さすがに数日じゃ未練があるか」


致し方ない部分があるも、流石に女々しいかと思った。既に別れは済ませているのだから、今更な部分もある。あの世界のことを考える始めると色々と思考してしまうがそんな思考していたら突如家が揺れた。


「……地震か、珍しいもんじゃないが焦るな」


こちらに命の危機がないレベルの地震でもやはり不安なものは不安なのだ。それは強者となった俺ですらそうだ。昔からの慣習で火の元を確認してみたり、本棚や高いものが落ちないか確認してみる。


その後なんにも問題ないようなので、魔法で遊ぶのはやめてテレビをつける。地震についての情報があるかと思いつけてみたのだがそこには予想外な情報があった。


「震源地が……札幌?」


少し驚いたが札幌は結構活断層が多い。一応他に活断層がないか確かめるために魔法を使って地中を調べると目を見開く。そこにはなんとこの世界には存在しないはずであるダンジョンの反応があった。


「マジかよ!?しかも超大型のダンジョンか、問題ないがこれは……」


問題ないとは言えそれは俺にとっての話。一般人なら即死するような怪物だらけのダンジョンが人が多い札幌にできてしまった。


「さっきの揺れはダンジョン生成時……いや違うな。これはダンジョンがその場に出現した時の揺れか」


生成時と出現時、これらの差はダンジョンがその場で産まれるか、他の場所からダンジョンが移ってくるかで変わる。今回は短い地震だったため出現時の方となる。長かった場合はその長さによって震度がある程度分かるのだ。


そしてその場に出現中したということは既に中にには生成時とは違いモンスターが既に存在するのだ。スタンピード起こるかもしれないので早く対処しなければ。


即座に判断した俺は片っ端から装備を、亜空間から取りだし身につける。人の目なんか関係ない、空を飛べばいいからだ。オマケに顔を見られても問題ない、魔法のフードがある。認識程度簡単に変えられる。


ダンジョンの入口がある部分に到着するとそこには多くの野次がいた。それもそうだろう、突如として巨大な扉が出現したのだから今の日本人は見過ごさないだろう。片手にスマホを持って写真を撮ったり動画を撮る者。扉に触れたり蹴りつけたりするものも居る。しばらく様子を見ていても人は減る様子がなく、むしろ増えている。


挙句の果てにはテレビ局まで来てしまった。早く対処しなければならないのにこいつらが邪魔で対処が出来ないのだ。剣を片手に持ってる俺は警察官に肩を掴まれながらも前へと進む、警官を引きずりながら。


「どけお前ら!死ぬぞ!」


試しにそんなことを叫んでみるも多くの人は可哀想な奴を見る目でこちらを見てくるので無駄だと判断。やはり強行突破か。


次に民衆は俺の後ろを見てぎょっとしていたが、どうでもいい。


「おい!君!早く止まりなさい!ちょっ、何だこの力、応援を呼べ!」

「5人がかりで止められないって本当に人かよ!」

「警官共手を離せ」

「だったら止まりなさいよ!」

「手を離せ、3度目はない」

「それはこっちのセリフだって!早く止まってくれ!その手に持ってるの置いて!早く!」

「もういい!確保ォッー!」


襲いかかる警官の間をすり抜け扉の前へと立つ。周りの野次馬共は剣を少し振って散らす。が、逆効果だったのか自撮り棒らしきものを持ったニコニコとした青年が近寄ってきた。俺が危険人物だとわかんねぇのかこいつ、警官もそれを見てそちらも止めにかかるもギリギリ声が届く


「お兄さん!話!話聞かせて!」

「ちょっとあんた近寄っちゃダメ!危険人物だよ!」

「あれただのおもちゃでしょ!危険なんてないでしょうが!」

「あれ本物の刃物だよ、わかんないの!?」


無視、扉に手を触れ扉を開く。1人だけ通れる隙間を作り扉へと入っていく。先程まで野次馬共が頑張っていたのにピクリともしなかった扉を動かしたからかさらにぎょっとしていた。


「さて、と。警官共、ここを封鎖しとけ」

「あんたホントなんなの?これ何か知ってんの?とりあえず署まで来てくれる?」

「手遅れになってここにいる奴ら死んでも別に俺は構わないんだが?」

「あーはいはい、妄想はいいからこっち来てよ。めんどくさい」

「まぁこれが普通の反応だよな。とりあえずこの中に誰一人入れなければ文句はない」

「何なのこいつ、うぜぇ、殺してぇ」

「ならこれを見て判断してもらおうか」

「ちょっ何すんの!?公務執行妨害だよこれ!現行犯!早く確保してよ!たかが1人でしょ!」


警官の1人の首を掴み先へと少し進む。扉の先は草原となっており果てはもう見えないぐらい先にある、そしてそこには多くの角が生えた2メートル近い兔共が殺しあっていた。


「ヘルラビットか、しかもこの数はやばいな」

「え、なにこれ……え?」

「言えることはひとつ、現実だ」

「んなわけないでしょ!こんな大きさの兎が居るとでも!?」

「そもそもの話扉なんて突如として現れないが」

「誰かが置いたと思うでしょうが!って来てる来てる!こっち来てる!」


ピョンピョンと緩い感じで飛んできたヘルラビットという種類の兎は3回目辺りで急速に加速した、大体新幹線並みの速度だろう。冷静に首を剣で切り落として生命活動を止める。


「うわ……ぅぐ」

「あ、すまん。きついか。まぁこれでわかっただろう?ここには危険すぎる生き物が大量にいる。早く民衆をこの扉から遠ざけてくれ」


手で口を抑え無言で頷く男を扉に運んでやろうと振り向くと一人の女が激怒していた。なぜ勝手に中に入った?外の警察は何してやがる。


「あんた!なんでうさちゃん殺したの!」

「? 襲ってきたからだが?」

「ただじゃれあいたかっただけかもしれないじゃない!」

「じゃれ合いたいがために新幹線並みで襲いかかるか?」

「しかもこんなに可愛いうさちゃんがなんで殺されないといけないの!」

「有害だからだが」

「そんなわけないでしょ!動物は全員優しい心を持ってるの!野蛮人は黙ってなさい!」


……? なんだこいつ、喋ってることがほとんど理解できない。動物に優しい心?野生の動物なんてそんなモノは家族にしか向けんぞ。


さて、結果的に女がどうなったかと言うと……まぁヘルラビットに貪られている肉からは目を逸らすとしよう。


「な、なんで助けなかったんだ……?」

「無駄で邪魔だから」

「なんてやつだ」

「今のでわかっただろう。いい例になってくれたあいつは死ぬ理由だけは無駄じゃなかったかな」


さて、警官を外にやったので今殺したヘルラビットらしきものを見てみる。


「どうにもなんか違うな……」


本来のヘルラビットの狩りの仕方は追い詰めて追い詰めてねっとりじっくりと責め続けるヤバいやつで、それはダンジョン産であろうとも変わらない。なのにこいつは即座にこちらに襲いかかってきた、たまにそういうのはいるが……こうも全体的な数がそうすると習性かもしれないと気づく。


「鑑定」


相手やモンスターを確認するのに便利な能力、鑑定。これは異世界で常に目利きやらなんかやってたら習得した。転移特典なんか俺貰ってねぇしな、強いて言うならあの女神の分体か。


─────

種族:バルラビット

rank:8


食用に適した生き物や植物を見つけると即座に食べ尽くす。その食欲のせいでいくつもの森が消え、最終的には大陸ひとつをバルラビットで埋めつくした。

その大陸でバルラビットは共食いをし、全滅したが1部のダンジョンでは未だに存在する。ダンジョンに存在するバルラビットは主に肉食で植物を食べる事は滅多にない。

─────


「……思ったよりやばいヤツだった。ていうかこんなモンスターあの世界に居なかったはず……この世界固有のモンスターか?マジで……?」


いやいや、どんなモンスターでも関係ない。殺ることは変わらないんだが……さて、次はどうしたものか……とりあえず外に出てみようか。


現在のダンジョン警官により囲まれていた。先程の警官がなんかいってくれたのかは知らないがこれで一応の安全が保証されたのかな。次に問題なのは景観が中に入って死ぬ事件……かな。


「やぁ、君がここに入っていった人物かな?状況的にそうだし」


その笑顔を見た瞬間俺はすごく嫌な顔をしただろう。まぁ薄っぺらな笑顔で、なんとも腹黒そうな性格をしてそうな優男だからな。


「そうだ」

「これがなにか知ってるのかな?」

「勿論」

「なら署に来てもらおうかな。話はそれから」

「そんなくだらないことよりまずはここを攻略する。今から1週間ここに人を1人たりとも入れるな。これはお願いじゃない、命令だ」

「……命令?一般人が警察に対して?」

「事情知らない奴より、知ってるやつの方が指示を出した方がいいだろう?」


アホなことをしでかされる前に扉をとじたいんだよ。さっさと攻略しなければ……!


「確かにそうだが、それを決めるのは私だ。いいから署に来い」


腕を掴もうとする男を無視して後ろから飛び出してきたバルラビットを掴み地面へと押し付ける。それを見ていた男は目を見開いていく。


「……なんだその兎は、それに血だらけ?」

「バルラビット、この扉の向こうに数百という数が居る。そしてこいつらは人を食らう、大きさは見ての通り2m近いんだ。むしろ聞くがこんな生き物に対してお前ら警察は対処できるのか?」

「たかが大きいだけの兎だろう?なら拳銃で──」


押し付けた兎の反撃による蹴りを止める。その時に出た爆音は拳銃では決して出ない音だろう。


「暴れるな、死ね」


もし逃げられた場合を考え殺しておくか。貫手で首を貫き頭を抑えて捻じ曲げる。


「この死体を渡してやる、解剖してみろ。それでそいつがどんだけやばいかが分かるぞ」


驚いているところ悪いが俺はやらなくてはならないんだ。


「んじゃ、後はよろしく」

「あ、おい!待て!」


扉は閉めて念入りに封印っと……


これで攻略が終わらなければ出られない。




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