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001「記憶……持ったままなのね?」



(うわっ?! まぶしっ!! なんだ、なんだ~~~?!)

「おぎゃ?! おぎゃあ!! おぎゃあ、おぎゃあ~~~?!」



「おめでとうございます、奥様! 元気な男の子でございますっ!」


 何やら人の声が聞こえたが、何を言っているのかさっぱりわからなかった。



(えっ? 何? 何? ちゃんと日本語で喋ってどうぞ。日本語でオケ!!)

「おぎゃあ? おぎゃ、おぎゃ、おぎゃあおぎゃあああ~~~!!」



「あらあら、なんて元気な赤ちゃんだこと……よしよし、私があなたのお母さんですよ~……」



(えっ? 何、このエメラルドグリーンの髪をしたキレイな人は? 何か言ってるみたいだけどわからない……何か……お母さんって言ったような…………あ、そうか! 俺、転生したんだっけ?! ん? でも……あれ? 俺、生前の記憶残っているんですけど! え? それって生まれた時はみんなそうなの? 何、どういうこと? 大丈夫? 俺?)

「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ………………っ!!」



 山のようにある質問を俺は声を大にして周囲に向かって叫んだが、その問いに誰も答えてくれることはなかった。


 そりゃそうだ、赤ちゃんだもの。


 言葉知らないもの。『おぎゃあ』としか叫べないもの。


 あ~、もしかしたら赤ちゃんって生まれたとき、俺と同じように『答えが返ってこない質問』を叫んでいるのかもな~……なんて、そんな事を頭の中で考えていると、もの凄い睡魔に襲われた為、俺はそのまま眠ってしまった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



――この異世界に生を受けてから三年の月日が流れた。



 俺は生前の榊大介さかきだいすけの記憶を残したまま、この世界で両親に名付けられた『ダイオウガ・エスティオット』として転生した……らしい。『らしい』というのは、まあ、確かめようがないからだが、まあ、おそらく転生したということで間違いないだろう。


 ということで、俺はこの『エスティオット家』の次男として人生を歩むことになるのだが、俺の歳は現在…………三歳だ。


 まだ、歯も生え揃えっていない為、しっかりとしゃべれないが……『中身は子供、心は元・男子高校生』ということでそれなりに地球で生きた十六年の知識や知恵を持っている。


 しかも、まだ赤ちゃんということもあるからだろうか、いろんなことが簡単に吸収できる……ていうか、一回学習したたけで一発で身に着くことができた。何それ……赤ちゃん時代凄すぎぃ!


 例えば『言葉』なら、二歳になる頃には難しい本を読んだり喋ることができるレベルにまで習得していた。一応、言葉を習得したが如何せん、二歳ではまだ体のほうがきちんと発達しておらずまともに喋ることができなかった。だが、それでも俺はやっと『自分の意思を伝える手段』を手に入れた。


 ちなみに、この世界の言葉や文字を習得したおかげで多くの歴史書などを読んだことで自分がどういう世界に来たのかを理解できた。


 まず、この世界は『フエルユーゴ』という惑星で、そこで生活をしているのは『人間』『エルフ』『獣人』そして……『魔族』。また、地球と同じように動植物も存在するが、それ以外に『魔物』も存在する。『魔物』と『動物』の違いはどうやら『人間を食べる目的以外で殺すかどうか』で分けられているようだ。


 ちなみに、俺は生まれてからずっと言葉を習得したら手を付けたい『学問』があった。その学問とはズバリ……『魔法』だ。



 そう、この世界には『魔法』が存在する。



 転生する前に老人が言っていた転生先の異世界が『漫画やアニメのような世界』ということが真実ならば『魔法』があるだろうと願望にも近い予想をしていた。そして、実際、生まれてしばらくして目が見えるようになってくると、両親やメイドが日常生活の中で明かりをつけたり、火をおこしたりするときに当たり前のように魔法を使っていた。その光景を初めて見たときは『心がぴょんぴょんするんじゃあ~』状態だったことは言うまでもない。


 というわけで、自分の意思を両親やメイドに伝えるべく、俺は黒板のような小さい落書き板にチョークのようなものを使ってこう書いた……、



『お父様、お母様、どうかボクに魔法の本をお与えくださいませ』



 二歳のお子さんではあり得ない素晴らしい表現力を持って意思を伝えた俺は、両親とメイドに「この子は悪魔に憑かれたのでは?」と、驚きを通り越して『悪魔憑き』を疑われ大騒ぎとなった。幸い、高名な医者や魔術師に見てもらい、『この子は悪魔に取り憑かれてなどいない』と太鼓判を押されるまでは両親やメイドには大変ご心配をおかけしてしまいました。


 結果的に、俺の行動は両親もメイドも『この子は天才だ』というところに着地した。


 以降、俺はまともに喋れるようになるまで紙に『あの本が欲しい、この本が欲しい』と催促した。その中には大人でも読まないような魔法の専門書もあったが、『この子は天才だから』ということで両親やメイドも特に変には思わずむしろ『ダイお坊ちゃまはかしこいですね~』と、どんどん俺の勉強を後押ししてくれた。


 そして、三歳になった頃には普通に言葉も喋れるようになったり、走ることもできるようになった。そこで今度は学習した魔法の『実践』を軸に毎日を過ごすようになる。また、魔法以外に『剣術』『武術』もこの頃から勉強するようになった。


 それにしても『魔法』だけでなく『剣術』『武術』も、本で一度読むだけで完璧に吸収するという恐ろしいほどの自分の『吸収力』に驚いたが、それは知識だけでなく、実践となる魔法の発現や剣術、武術の技術も一度試すとすぐに完璧に吸収することができた。


 特に剣術、武術を教えているのは、燃えるような褐色の目と、金色の長い髪……わかりやすく言うと『ライオンヘヤー』が特徴の父『ライオウガ・エスティオット』だ。


 父は、剣術・武術の技を一回教えただけですぐにできるようになる俺を見て最初はすごく驚いたらしいが、すぐに『この子がどこまで強くなるのか試してみよう』と思ったらしく、父は熱心に俺に剣術・武術の技術を教えてくれた。ちなみにそれから二年後の五歳になる頃には俺は父からすべての剣術と武術を習得した……が、父との組手では体力差もあり勝つことはなかったが、組手では本気の父と手加減無しの真剣勝負ができるくらいには成長していた。


 最初は約二メートルもある父と同じくらいの実力がついていることに『俺、もしかしてチョー強くね?』と思ったこともあったが、本人曰く『体が大きいだけであまり戦果を挙げることはできなかったパッとしない兵士だったがな。まあ『でくの坊』というやつだ……ガッハッハッハ』と自分の才能の無さを特に隠すこともなくむしろ豪快に笑い飛ばしながら教えてくれた。確かにうちの父は『辺境地の領主を任されている下級貴族』という位置なので、父の言うように『見た目よりも実力はあまり……』ということなのだろう。


 しかし、俺はそんな自分のことを隠さずに豪快に笑い飛ばす父が大好きだった。


 そんなわけで、自分の現在(五歳)の実力が父と同じくらいだとすると、『辺境地の領主を任されている下級貴族』の父の実力は、実際『一般的な大人より少し強いレベル』くらいなのだろうと推測した…………が、母親から『昔、ライは武術剣士だったこともあるのよ』という話を聞いたので、それを加味して『一般的な大人よりまあまあ強いレベル』というところに落ち着いた。


 とは言え、実際、組手をしている時の迫力や剣術・武術の技術は俺の主観では凄いように思えたのだが、父が『戦果を挙げることができなかった』という言葉を聞く限り、一線で活躍する武術剣士はもっと凄いということになる。そう考えると、この国の武力レベルはとても高いのだろうなと当時の俺はそう認識していた…………まあ、格闘技もやっていない素人の俺が言うのも何だけどね。


 そんな『一般的な大人よりまあまあ強いレベル』の父と互角で組手ができるのはそれはそれで凄いことだと思うし、少なくとも、五歳でこの実力なら同い年の子に負けることはまずないだろう……十分チートだと思う。


 まさに、この異世界に転生したおかげで得られた『吸収力』さまさまである。



 な~んて。



 当時はそんな感じで思っていたが、それは後になって『大きな勘違い』だったことに気づく。


 一つは『父親の実力』であり、もう一つは驚異的な『吸収力』が俺のチート能力だと思っていたことだ。


 今、思うと、『俺の『推測』って当てにならないことだらけだったな~』と、大変こっ恥ずかしいのだがそれはまた後の話である。



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