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プロローグ前編「この世は弱肉強食。それが世界の理」



『この世は弱肉強食。強者はより強者へ、弱者はより弱者へ。それが世界の理』



 だそうだ。


 だが、俺には、


「それって『強者の視点』で作られた言葉でしょ?」


 などと文句の一つも言いたいがそれはできない。


 なぜかって?


 それは…………俺が『圧倒的な弱者』だからだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「おらぁ! いつまでも寝てんじゃねぇ!」



 そう言うと男はバケツに入った『泥水』を、目の前のボロボロに殴られ、さっきまで失神していた男に思いっきり浴びせた。


 失神していたのは、俺……圧倒的弱者の『榊大介さかきだいすけ』だ。


「あ、うあ……あ、うぅ……あ……」


 俺は男たちに『やめてください』と言おうとしたが、ボコボコに殴られ続け晴れ上がった顔と、前歯が二、三本折れた口ではまともに言葉にすることができなかった。


「人に物言うときはよ~……ちゃんとしゃべろやぁ~~~!」


 ベキャッ!


 男は手に持っていた『金属バット』で、俺の頭に手加減無しのフルスイングの一撃をお見舞いした。


 その瞬間、俺は頭の中で『鈍く砕けた嫌な音』を最後に意識が遠のいていく。


 意識が遠のく中で、何か……頭の中に『声』のようなものが聞こえた。



『あなたのその『大いなる勇気』が私にあなたを選ばせました…………おめでとう』



「え? ど、どういう意……味……」


 そうして、榊大介は十六年の生涯を終えた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 時間は、それから二日前の放課後に戻る。



 授業を終えた榊大介は、手際よく教科書をしまい、家路に着いた。


「今日は、待ちに待った漫画の『新刊』の発売日だし! 駅前の本屋に直行だっての!」


 いつもは学校から十分程度で着く自宅へ録画したアニメを観るため一直線に向かうのだが、今日は好きな漫画の新刊の発売日ということで駅前の本屋へと向かっていた。


「ありがとうございました~」


 本屋にてお目当ての新刊の漫画をみつけた榊大介は、店員の挨拶を背中越しに受けながら浮足立ちで家へと向かった。


 しかし、ここで榊大介はふと『ある光景』が目についてしまう。それは、


「い、嫌っ! やめ……むぐっ?!」

「よし、いいぞ。口塞げ、口塞げ!」

「急げ、急げ! ひひひ……」

「おら、はやくドア開けろ、この野郎!」


 繁華街の建物と建物の隙間から見える向こう側の道路で、三人組の不良が必死に抵抗しているOLっぽい女性を無理やり車の中に連れ込もうとしていた。俺はこの駅前の繁華街はよく使っていたから知っているが、この不良たちが襲っているあの向こう側の道路はちょうどこの夕方の時間に人通りが少なくなる。おそらく、そいつらもそれを知っている地元の不良なのだろう。しかし、


「こ、こんなまだ明るい内から拉致るって……ヤバ過ぎるでしょ、こいつら」


 彼は、もちろん喧嘩などこれまでしたことがないので、駅前にある交番へ知らせようとした。しかし、


「い、今、俺がここから離れたら……彼女、すぐにみつかるのかな……? 映画やアニメでは作品にもよるが、大体は二~三日監禁されてみつかるパターン……だよな? で、そのみつかるまで彼女はたぶん強姦されて……下手したらみつかったときには死んで……」


 彼はいつもの癖である『被害妄想』で彼女のこの後の展開を予想し絶望する。


「ダ、ダメだ! 俺が今、行かなきゃ! で、でも、どうやって止めれば……」


 彼は映画やアニメで培った知識を元に考え、そして、


「よし! まずはここで『110番』をして警察に連絡。そして、その警察が到着するまでの時間を稼げば……行ける!」


 彼は、目の前に今にも拉致られそうな女性の姿につい焦り、そのような結論に達し行動するのだが、その選択が間違いだったことを後に気づくこととなる。


「よし! 警察に電話したぞ! あとは時間を稼ぐために何とか……何とかするぞ!」


 まず、この時点で彼が犯した間違いが一つ、それは……、



『その不良たちが常識の通用しない相手』



 だったということだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「や、やめろっ! な、何やってんだ、お前ら!」



 これまで喧嘩を一度もしたことがない榊大介は意を決して、まさに女性が車に乗せられる寸前で不良たちに声をかけた。


 本人的には『ドスを利かせた』つもりだったが、しかし、これまで喧嘩したことがない相手のそんな声を喧嘩慣れしている相手が一度聞けば、彼が『ビビっている』ことはバレバレだった。


「あ~ん、何だ、てめえは……?」

「正義の味方気取りキターー!」


 不良たちは相手がヘタレであることをすぐに察し、余裕綽綽で榊大介に向かって歩いてくる。


「け、警察を、い、今、呼んだぞ! 捕まりたくなかったらその女性を……は、離せっ!」


 榊大介は勇気を振り絞って不良たちに言葉をぶつける。


「はっ? 警察? マ、マジかよっ!?」

「や、やべえ! 逃げるぞっ!」

「急げ、捕まっちまうぞ!」


 榊大介の言葉に不良たちが一斉に反応し、その場から逃げようとした。


(や、やった! うまくいきそうだっ!)


 榊大介は内心でガッツポーズを握りしめた……その時、


「な~~~~んちゅわって!」

「……え?」


 すると、榊大介の目の前に突然、不良の一人の『足』が飛んできた。


 バキッ!


「ぐはっ!」


 不良の飛び蹴りが榊大介の顔面を思いっきり捕えた。


 不意の飛び蹴りに榊大介は受け身を取ることもなく、コンクリートの壁に打ち付けられる。


「え? え? え? え……?」


 元々、喧嘩を一度もしたことがない榊大介にとって人から蹴られること自体初めてであり、そのリアルな『痛み』で彼は軽いパニックを起こしていた。


「おい、こいつ見ろよ……何かパニッくってるぞ?」

「きゃはは、マジかよ。あ、もしかして、あれじゃね? これまで喧嘩なんてしたことないんじゃね、こいつ?」

「な~るほど。でも、それで正義の味方気取ったって、こいつある意味、すげーな! すげー…………バカ。きゃははは」


 そう言いながら三人は俺を殴り続けていた。


「待て、待て。こいつ、警察呼んだらしいからよ、こいつも連れていって遊ぼうぜ」

「お、いいね~。正義感気取って人助けするなんてことがどれだけ『愚かな行為』だったか教えてあげないとな」

「俺、こういう弱いくせに出しゃばってくる奴大っ嫌いだからよ……何でもいいから早くこいつボコボコにしてーよ」


 ボコボコにしたいと言った男は榊大介を強引に掴み、車の中へと放り投げた。


「お、おい! あの女、いねーぞ! 逃げやがった!」

「畜生、マジかよ!」


 俺が殴られている間に女性が逃げたということを聞いて、少しは頑張ったかいがあったとホッとし……、


 ボキッ!


「あぐっ!?」


 俺はいきなり右手から激痛が走り、その痛みのあまり車の中で悶絶した。


「てめえのせいで、女、逃げたじゃねーか……この、野郎っ!」


 ボキッ!


「あ"あ"あ"あ"ぁ"~~~~~~!?!??!?」


 激痛の正体は不良が俺の右手の人差し指と中指の骨を『折った』ためだった。


(う、嘘だろっ……!? な、なんで、そんな簡単に人の指、折れんだよ……こいつら、イカれてる)


「……気が変わった。おい、こいつ、拉致って死ぬより辛い目に合わすぞ」

「お! 『リンチ場』ね? いいね~」

「俺もこいつみたいな口だけの奴ムカつくからちょうどいいわ」


 三人ともそう言うと、俺の口と目、手足にガムテープをグルグルと巻いていった。


「!?!?!? う"う"う"う"う"う"う"う"~~~!!!!?」


 俺はここで初めて『自分の過ち』『事の重大さ』に気づく。それは……この不良たちが『マトモ』じゃないということだ。


 考えてみればそうだ。こんな夕方とはいえ明るい内から、人通りが少ないといっても繁華街からこんな近いところで女性を拉致しようとする奴らだ………………マトモじゃないのは当たり前じゃないか!


「う"う"う"う"~~!!!!」


 榊大介は必死になって暴れ、そして、背にしている車のドアノブに何とか手をかけ外に出ることに成功する。しかし、


「う"、う"、う"う"……」


 すでに目と口、そして手足をガムテープで縛られていた榊大介はすぐに道路に倒れてしまう。そして、不良の一人がゆっくりと車から降りてきて、その倒れた榊大介の頭を鉄パイプで殴り、車に乗せその場から立ち去った。



はじめまして、ブラック無糖と申します。


設定もそこそこにイキオイで投稿始めました。


ノリだけで書いていますのでお気楽にお読みいただければ幸いです。


よろしく、おなしゃすっ!

('◇')ゞ



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