84_シンプルなルールが説明しやすいとは限りません。
「まあ、このゲームのルールを作ったのは神なわけじゃが」神様が言いました。
「まさしく、わしがルールブック、というやつでしょうか?少し意味合いが違うような気もしますが」トムさんが指摘します。
「神様がルールをお創りになった、というと、宗教感覚が半端ないですね」あかねさんも指摘します。
「というか、実際に一つ世界を作ったみたいだよな」タケルさんがさらに指摘します。
「ああ、まあ、身も蓋も無いはなしじゃが、テストプレイ用に本当に世界作っちゃった、てへぺろ、ということをしたからのう」舌を出しても可愛く無い神様だもの。
「創られた方は、どう反応したらよろしいのでしょうか?」魔王が頭を抱えています。
「大丈夫じゃよ、メインの創造神は、別のが担当しておるけん。……結構、いや、比較的まとも、いや、それほど倫理観とか正しくはなかったが、仕事のでき自体は……たまにポカもしとったし、最終的には涅槃の彼方へ消えおったが、まあ、とにかくなんだか、終わりも……グダグダであったな、おかしいの、フォローの言葉が出てこんぞ?」首をひねる神様でございました。
「僕が吹き飛ばした神様がメインの担当だったのですか?」トムさんが尋ねます。
「中核ではあったの」
「なんで私は、世界の成り立ちから行く末まで手のひらで転がしているような存在と同じテーブルについているのだろう?」深淵な謎をとく探索者のような顔になる魔王さまでございました。
「ゲームに使用する、あなた方プレイヤーが操る、分身であるところの登場人物、キャラクターには、数値でその特徴を表しておる。結構メジャーなシステムじゃな」
「唐突に説明が開始されていますね」トムさんがいいながら、神様から配られた、用紙に目を通します。
「キャラクターの特徴を表した、数値のうち、身体や頭脳の様子を数値で表記したものを、その人物の能力値というんじゃ」
「見覚えありますね、四つあるコレですね。ええと、ちから、すばやさ、かしこさ、がんじょう、と、私がテストプレイした時に見た表記そのものですね」トムさんが言います。
「本人が実際に使用していた能力値という言葉の力って結構パンチ力があるな」タケルさんが突っ込みます。
「続けるぞい、前にトムさんに説明したが、各能力は各々、
・ちから (パワーのことです筋肉と言ってもいいですね)
・はやさ (素早さです、手先の器用さも含ませました)
・かしこさ (頭の良さです、魔法を使うときにも関わります)
・がんじょう (体力とかタフとか言われるやつです)
というざっくりしたものじゃ」
「本当にざっくりしてるなおい、というか、どこかで見たことあるぞこの名前!」タケルさんが突っ込みますキレキレですね。
「某国産ロールプレイングゲームをリスペクトしておる点は否定せんがの」
「そうだったのか」普通に驚いているトムさんでした。
「さらに、この能力値からヒットポイントと、マジックポイントが自動的に計算されるわけじゃ、ええと
・ヒットポイント、HPと略します、は 、ちから+がんじょう
・マジックポイント、MPと略します、は、かしこさ
の数値じゃの」
「そのあたりの名称もリスペクトしている結果かな?」トムさんが尋ねます。
「まあの、別に名称をひねる必要も思いつかんかったしの」神様が答えます。
「基本それぞれ多い方が優秀な肉体とか精神を持っているということになるわけですね」トムさんが確認します。
「そうじゃの、だいたい一般人の専門家で、能力値の一番高い数値が10から15くらいになる、というのが目安じゃの。で、物語が始まる時の数値はこうなるのじゃ。
職業:戦士
レベル:1
・ちから 4
・はやさ 1
・かしこさ 1
・がんじょう 4
・HP 8
・MP 1
みたいな感じじゃな」
「職業とかレベルとかまた説明しなければならない単語が出てきたようだが?」魔王が確認のために指摘します。
「そうじゃの、職業というのは、その登場人物の方向性を決定する要素じゃな。全体的に何が得意かを表しておって、どのように成長するかを決めるカテゴライズでもあるの」神様が説明します。
「生まれた時から決まっているのでしょうか?」ちょっと気になるのですが、といった感じであかねさんが尋ねます。
「誕生した瞬間をどこに捉えるかで解釈が違うかの。まあ、物語に登場するまでどのような人生を送ってきたかによってつくられる、初期の状態を表しているとするのが一般的かの。将来、重い武器を振り回して、怪物とかを物理的に殴りたいという夢を抱いて、訓練してきた人間が、物語を開始するにふさわしい能力を持っている、とか思ってくれて良いのではないかの?」
「それはそうか、乳幼児がいきなり、冒険の旅に出たりはしないものな」タケルさんが納得します。
「それはそれで面白そうじゃがな。まあ世の中には生まれる前からどのような血統でとか設定をランダムに決定するようなシステムのテーブルトークRPGもあるからの、0歳児から物語を始める遊び方もできそうではあるの。最初の試練は無事に生まれるところからじゃろうか?」
「いやそこは誕生しないと、話が始まらないだろーよ!」タケルさんが突っ込みます。
「登場人物の設定を煮詰めるだけで満足するようなゲームもあるからのー」ちょっと遠い目になる神様でございました。
「延々と、キャラクターだけを作り続けるのですか、それはどこが面白いのでしょうか?」純粋に疑問の表情を浮かべるトムさんでありました。
「話を戻すと、職業はこのシステムでは3種類あるのじゃ」
「少なくないですか?事務職、管理職、営業職とかですか?」トムさんが確認します。
「どこの会社じゃ、そうじゃなく、こう幻想世界、とかファンタジーな感覚じゃな。戦士、魔法使い、盗賊じゃ」
「どこの空飛ぶ野牛製RPGですか!」的確に突っ込むタケルさんです。
「大丈夫、魔法戦士はおらん、そこは勇者と銘打っって見たぞい、今回は使わんが」胸を張る神様です。
「わるびれんなー」タケルさんが呆れています。
「まあ、一般名詞じゃしの。他に旨い表現もないことはないが、特に盗賊は犯罪チックじゃから、偵察兵とか遊撃手とか、工作員とかも考えたのじゃが、どうもしっくりこんでなー」
「あー、わかるのが悔しい気がするぜ」タケルさん、神様と何か通じ合っているようです。
「職業の中に僧侶とか、巫女とか、それっぽいのはいないのですか?」リアル巫女さんである、あかねさんが尋ねます。
「神様関係は、現実で十分満足しとるからの、というか、フィクションでも利権争いが発生しそうじゃし、そうかと言って、うかつに丸っと架空の神を設定すると、実際に爆誕しかねんからのー」
「リアル神様がテーブルトークRPGを作成する予想外の弊害が今明らかになったんじゃねーか?」タケルさんが辟易として突っ込みます。
「テストプレイ時にぽこぽこと神様が生まれてしまいそうになったからのー」遠い目になる神様でございました。
「それぞれの職業を説明していくぞい、
戦士:頭まで筋肉、と言ってしまうと弊害があるが、概ね間違った印象ではない。重たい武器を振り回す筋肉に、頑丈で重たい防具を身に付ける筋肉、どんな脅威にもへこたれない筋肉の持ち主であることを表している。古き良き時代には頭脳は子供、体は人外、という蛮族コナンという名前の戦士が代表格であったが、昨今では力はパワーだが合言葉の黒いギリシャの主神がその座を奪っている(これも古いネタ)。実際には器用に武器を操るためにも幾らかの敏捷性が必要であるので、早い段階である程度”すばやさ”のパラメータに数値を振っておいた方が良い。すべての武器防具を使用できる、戦闘のスペシャリスト。幼い時からそれらの訓練に明け暮れていたために魔法を使う頭脳は衰退している。理性的に振る舞えないわけではないことは明言しておく。ただ意図的に置きざりにしておけるだけである。
魔法使い:摩訶不思議な現象とおはようからおやすみまで見つめ合っている生き方が大好きな人達。逆に言うならそれにストレスを感じるような方は生き残っていない、結構過酷な過去を持つことが多い職業。過去の偉大な魔法使いには、これまた、絶対に敵対してはいけない世界最強のウエイトレスの姉がいるとの噂もあるので、実はそれほどすごい職業ではないのかもしれない(古いネタです)。肉体的には貧弱だがそれを補って余りある不思議パワーがみなぎっている。MPを消費して魔法という技を使用する、破壊的、暴力的な方向へ行く魔法使いを黒魔法使い、逆に創造的、治癒的な方向へ行く魔法使いを白魔法使いとも呼ぶが、本質は同じ。他に赤青緑のイメージカラーな魔法使いもいる。幼少から魔法の使い方ばかりを練習してきたので、武器防具の使用は限定的。性格に難が多い人物という印象はそれほど間違っていない気がする。
盗賊:犯罪者というわけではなく、身のこなしが鮮やかで手先が器用で、どの場面でも結構役にたつ、逆に言えば、突出した能力のない職業とも言える。君は強いから、一人で生きていける、と寂しいことを言われることもしばしば。迷宮の罠をくぐり抜ける能力に抜きんでいて、彼、もしくは彼女だけが生還するパターンも多い、その場合死神とか呼ばれることも。つばのある帽子とムチがトレードマークで蛇が大の苦手な教授っぽいイメージがつくことが若干救いになることもある。犬の名前では?はっは、何か勘違いしているようだね?コミカルに行くなら某3世的な怪盗へ舵も切れるし、美形で行くならダブルO要員とか気取って、日本の往年の名スターと一緒に温泉に入っても良い。いろいろとできることを増やしていこうとした生い立ちの結果、ある程度の装備と、ある程度の魔法を使う能力を維持している。天性のトリックスター、自他の所有物について境界が無いトラブルメーカーな一面も。
といった感じかの?」
「ツッコミどころが多すぎて、対応しきれないのだが!」タケルさんが吠えています。
「はっはっはっ、それが狙いよ!」開き直っている神様でございました。
初期パラメタは以下の通り。
戦士→ちから:4 すばやさ:1 かしこさ:1 がんじょう:4 HP:8 MP:1
魔法使い→ちから:1 すばやさ:2 かしこさ:6 がんじょう:1 HP:2 MP:6
盗賊→ちから:2 すばやさ:3 かしこさ:3 がんじょう:2 HP:4 MP:3
「こうしてみると、能力の合計値が10で振り分け式なのですね」トムさんが指摘します。
「わかりやすいからの、主に作り手側の都合じゃが」神様が答えます。
「人間しか登場人物に選べないのですか?」魔王が尋ねます。
「そんなことはないぞ、好きに種族を名乗って結構じゃ。ただ、ゲーム的に有利不利はないがの、まあ、フレーバー、香り付けというやつじゃ。羽があって空を飛べるのでーとか、謎の破壊光線を目から発射できるのでーとか、はなしじゃな。でもまあ、あまりに有利すぎなくて、弱点も同時に併せ持つなら、要相談かの?」
「エルフとかドワーフとかホビットとかも名乗れるのか?」タケルさんが尋ねます。
「エルフとドワーフは問題ないが、確かホビットという名称は著作権が絡んできたような覚えがあるから遠慮してほしいかの?同じくスズキドゲザエモンも却下じゃ、いや仲間内のプライベートで遊ぶ分には、そのあたりどうとでもなじゃろうな。それに、目くじらを立てておると二次創作とか軒並みアウトになってしまうような気もするしの」
「指輪物語で創作された種族だそうですね、確かにその設定をそのまま持ってきて物語に使用するのは、誠実ではないでしょうね」トムさんが言います。
「話題にするのはいいのですか?ええとその著作権的には?」あかねさんが確認します。
「原典が明らかになるように説明されているなら、引用的には大丈夫なはずじゃよ。そうでないと、感想を語ったりすることもできんわけじゃしな。あくまでもまるで自分のアイデアのように使用するのがいかんのじゃろうな、少なくとも著作権というものに保護されている間くらいは敬意を払って慎重に使用するべきじゃとは思うぞ?」神様はちょっと真面目に語りました。
「このシステム結構パロディが多いような気がするが、それはどーなんだよ」タケルさんが突っ込みます。
「微妙にずらしておるから大丈夫じゃ。さらには同人作品で身内で楽しんでいるだけじゃしの」
「神自ら同人活動、という字面は、かなり突っ込みどころがある気がするな、おい」タケルさんが突っ込みます。
「俺って、趣味的な活動で作られた存在なのかー」遠い目をしてしまう魔王でございました。