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83_シンプルに説明するのは難しいですよねー。

「ということで、これからすることを具体的に説明していくわけじゃが」神様が言いました。

「あ、続くのですね」あかねさんが応えました。


「めげませんぞ、ええと、まずは遊ぶ舞台設定の解説じゃが、前回も言った通り、剣と魔法の幻想世界じゃな。政治体系はふわっとした感じの王制とかで、一部直接民主主義な場合もあったり、共和制っぽいところもあるかもしれんが、まあ、シナリオのネタくらいしか気にしなくてもよろしいんじゃよ」

「あーそのあたりはそのくらいゆるくていーんだ」タケルさんがコメントを言います。

「まあ、政治関係のお話が絡んでくる時にしっかりと設定を決めればいいじゃろう、という設定で。結構適当な大きさの大陸があって、その中に適当に国が複数ある感じかの?」

「いい加減ですね」トムさんが言います。

「必要になるまではあまり細かく設定しない方が、話を作りやすいからの。まあ、地球で言うところのヨーロッパくらいをイメージしておけはそれほど遠く離れてはおらんぞ」

「ああなるほど、年代で言うと、どのくらいでしょうかね?」トムさんが確認します。

「紀元前3000年あたりから、紀元後1700年くらいがごちゃまぜじゃな」

「スパン広いな!」タケルさんが突っ込みました。


「その地球という概念がよくわからないのだが」魔王が困惑しています。

「今度、小中学校くらいの教科書を持ってきますよ」トムさんがフォローします。

「文化侵略とかにならなねーか?」意外と真面目に心配しているタケルさんです。

「すでに、うっすらと繋がっていますから、今更という感じではありますね」あかねさんが肩をすくめて言いました。


「扱っている時代背景が広いのは、様々な社会体系とか文化圏を国や地方という単位でいい感じでミックスして楽しもうとしているからじゃの。まあ、なんちゃって西洋文明という風味を好き勝手に楽しもうという、コンセプトであるわけじゃな。よくあるやり方じゃ」神様が説明を続けます。

「西洋っぽければ、なんでもありなのですか?」トムさんが確認します。

「オリエントでもエジプトでも、中華風でも、南米風でもありじゃが、今回の基本は、スタンダードな西洋風のファンタジーじゃな」

「無節操だなあ」タケルさんが呆れた声を出します。

「欲張りともいうの」神様が返します。


「物語の登場人物となる、君たちの作るキャラクターというのは、職業が冒険者となるわけじゃな」神様が言います。

「ええと住所不定無職とどう違うのでしょうか?」トムさんが尋ねます。

「そのあたり前に説明せんかったかの?まあいいわい。その冒険者というのはじゃな、ダンジョンという特殊な施設に赴いて、湧いて出てくる怪物を倒してその素材を剥ぎ取って売り払って生活費とかにしたりじゃの、なぜか落ちている宝箱から拾った、財宝とかを換金して、懐を豊かにするような職業をいうのじゃよ」

「ええと、犯罪チックなのはどうも気が進まないですね」トムさん腰を引かせたような態度で言いました。

「合法だから!そういうのが許される場所が、ダンジョンなの!迷宮ともいうんじゃぞ!」神様が突っ込みました。


「そっちの話はわかりやすいな」魔王は言いました。

「リアルで存在するからの」神様がこたえます。

「この世界でのダンジョンとか怪物とかの設定どうなっていましたかね?」トムさんが尋ねます。

「担当の神様が作っておったな。題目は人々の進化を促すための試練とかじゃったかの?もしくは資源調整とかいう側面もあったわけじゃが」神様がこたえます。

「魔王の国側が作成した人間を効率良く収穫するためのダンジョンとかもあるぞ、まあ、今は稼働しておらんが」魔王が言いました。

「認識をすり合わせませんか?」あかねさんが、会話に参加しました。


「まず、物語に参加する架空の登場人物の設定じゃな。これは冒険者という生き方をしている者たちじゃ。冒険者とは、ダンジョンと呼ばれる特殊な施設に赴いて、怪物を倒したり、罠を回避したり、しつつそこにある財宝を持って帰ってそれをお金に変えて、生活をしている者たちのことを言うのじゃな」神様がまとめて言います。

「不安定な職業のように聞こえますね」トムさんが突っ込みます。

「一攫千金を狙える山師に近いかもの。だからこそ、冒険をする者とか呼ばれておるのかもしれん。ダンジョンについての設定じゃが、基本ある程度の範囲を区切って存在する、ある一定の法則に従う特殊な空間という認識で良いじゃろうな。その成り立ちには種々の原因とか思惑があるわけじゃが、主な特徴としては、まず怪物という謎生命体が謎発生するという現象、いつの間にか設置されている謎宝箱とその中身の謎財宝、同じくいつの間にか設置されている謎罠の存在であろうかな」

「謎おおっ!」タケルさんが突っ込みます。

「ダンジョンの再奥には謎の親玉怪物的な存在がおっての、それを倒すと、その迷宮を完全制覇したことになるわけじゃ」さらに謎を畳み掛ける神様です。

「いやさらに押すのかよ!」律儀に突っ込むタケルさんでした。

「完全制覇すると、特別な謎財宝が手に入ったりするぞ」もう一回押してみました神様でした。


「なるほど、模擬的な戦闘と、探索のゲームなわけなのだな」魔王が納得します。

「物語を作る要素がどこかに行っているような?」トムさんが尋ねます。

「そこは、作り上げた登場人物の性格付けとか人間関係とか、背景設定などで楽しむパターンじゃな。シナリオの中に英雄譚要素をはめ込むのも一つの手じゃ」

「?どうやるのでしょうか?」あかねさんが尋ねます。

「ただ、迷宮と呼ばれる領域に潜って怪物を倒して、財宝を得るのではなくて、その動機を別に設定したりじゃな。例えば、王様が迷宮の支配者である魔法使いに、その象徴である魔法の護符、効能はまあなんでもいいのじゃが」

「家内安全とか?」トムさんが言います。

「御守りか?まあいいじゃろう、その家内安全、無病息災の効力がある王家に伝わる特別な護符を、奪われた上に、取り返してみたければ取り返してみろ、と挑発されて、膝下の城下町に大きく深い迷宮を創り出してみたりしたとかいう設定のもと、栄誉とか栄達とか莫大な報酬とかを目標にした冒険者達が挑むとか、の背景を作るわけじゃな。で、その上で、個々の登場人物の性格とか歴史的背景とかを設定して、物語を形作るわけじゃ」

「どこかで聞いたような設定だなおい」タケルさんは結構その手の文化に造詣があるのか、冷静にツッコミを入れます。

「まあ、有名じゃからの、狂った王の訓練場とか。そのままテーブルトークRPGの題材にもなっておるしの」さらりとかわす神様でございます。


「困難に直面している、弱者を助けるというシュチュエーションで、迷宮に潜ることになるとかもあるの。怪物の魔法的な何か、呪いとかいうがの、これで眠り続けるお姫様を助けに、迷宮の奥の呪いを解く道具を求めに冒険に旅立つとか、特殊な道具それも極めて危険なものを、完全に破壊するために、それが可能な場所である迷宮の奥に赴くとか、世界が滅びるのでその原因の邪な神を倒しに迷宮に行くとか、じゃな」

「迷宮ばかりだな」魔王が指摘します。

「単純に超強い怪物を倒すだけのお話も作れるぞ、生贄を求める悪役の怪物を立ち寄った英雄候補が知恵と勇気と暴力で根絶するとかの」

「使用しているワードがどこはかとなく不穏だなおい」タケルさんが指摘します。

「戦闘は外さないのですね」あかねさんが言います。

「わかりやすいからの。まあ、直接倒さずに、どうにかして超越した存在を彼方へと去るように仕向けるとか、出てくるのを防ぐとか、とにかくその場から逃げ出すとか、という盛り上げ方もあるがの。そればかりだと無力感が積み重なるし、破壊的な欲求が満足されんしの。ごちゃごちゃ考えずに悪いやつを吹っ飛ばすということに快感を感じる者は結構多いのじゃよ、別に悪いと言っているわけじゃないぞ?むしろゲームで発散できるのなら、積極的にしてほしいくらいじゃな」


「説明を聞いている限りでは、迷宮という領域にこだわらなくても良いのではないか?」魔王が冷静に指摘します。

「その通りじゃし、実際に探索接敵壊滅奪取というルーチーンにこだわらないテーブルトークRPGのシステムを多いぞ。基本何らかの障害とか達成する目標とかがあって、複数人で協力してそれを解決するという流れで、何らかの精神的充足感を得るという、芯がぶれなければ、何でもありじゃ。適度に解決する見込みのある困難に対して、感じたストレスを、最後には綺麗に発散することで、快感を得るとか言っても良いかの?共同作業とか、認識を同じくする他者との一体感的なものを楽しむとか、あー、簡単に言えば、気のある仲間が集まってワイワイやってるだけ、でも楽しいという側面もあるかの?」神様が答えます。

「ではなぜ貴神はダンジョンを中核にしようと思ったのでしょう?」トムさんが尋ねます。

「それが原初である、もしくはあったからかの?テーブルトークRPGの黎明期にそれが生まれたのであるから、ある程度の敬意を表す意味もあるの。後、迷宮という限られた領域で遊ぶのは、シナリオを制御しやすくて、やりやすいのじゃよなー」

「最初に迷宮あり、ですか。ええと、制御しやすいというのは?」トムさんがさらに尋ねます。

「ゲームに参加して、各々が担当する登場人物がおるじゃろ、これが好き勝手に動く範囲を制限できるわけじゃな。何しろ、迷宮というところに入れておけば、前後左右、それに加えて上下くらいにしか動かしようがないからの」

「?どこで動くにしてもそのくらいではないのか?」魔王が指摘します。

「そうでもないぞ?好きに動かされると真っ先に町の盛り場、酒場とか娯楽施設とかに入り浸るという登場人物もいたりするかの。後、勝手に王様へ喧嘩を売りに行ったりの、だいたい返り討ちにあうわけじゃが」

「いやそんな無軌道な人なんて……いそうですね」トムさんが自分で自分の言葉を否定します。

「いたのじゃよ。なんというか、想像の及ぶ範囲なんでもできそうだ、と一度気がつくと、とかく目立とうと、他人とは変わったことをしたがる性格の者は、どこにでも普通に存在するからの。きっちりとそれを導いて、まあ、完全に否定すると、遊びがなくなるので面白くないのであるが、他の参加者に迷惑がかからない程度というレベルじゃが、本筋に戻す事ができるのなら、そのような遊び方も悪くないわけじゃが、だいたいにおいては、ゲームの進行役であるところのマスターの能力を超える事がままあるわけじゃな」

「それは困った人もいるものですね」トムさんが言います。

「自由人のお前が言うなという感じじゃがな」

 心外な、という表情をするトムさんと、納得する周囲の面々でございました。


「ああなるほど、目的を単純化するわけだな」魔王が何かに気がついたように言います。

「それも大きな動機じゃな。何でもできますよ、となると、物語を作り慣れない参加者にとって、何をしたらいいのかわからないということになりかねないからの。謎の通路とか部屋の連なりを探索します、怪物と遭遇します、それを倒します、財宝を見つけます、手に入れて、街に戻ります、みたいな、目前のやることをきちんと提示してやることで、それを防ぐわけじゃな。選択肢を挙げて行動をある程度制限することで、遊びの負担を少なくするわけじゃ」

「ああなるほど、システムを効率化してリソースを確保するわけですね。で、確保したリソース、集中力とか、想像力とか体力とかを他の一番楽しみたいところに回すと」魔王が解説を試みます。

「まあ、戦闘そのものが楽しい、倒した結果得られる偶然性の高い財宝に一喜一憂するというスタイルの方もおるがの。その場合でも戦闘そのものが単純化されていて、ストレスを感じないようになっているのはプラスに働くわけじゃからして。単なる作業になってしまうと、面白みに欠けるという意見もあるし、だからと言って、ゲームとしての駆け引きを主眼に置くと複雑さを増すという、二律背反な現状なわけじゃが。簡単で奥が深いというのが理想じゃな」

「それはどのようなゲームにも言えるのでは?」あかねさんが指摘します。

「どこに重きを置くかというのは常に頭に入れておくべき要素じゃの。複雑なルールがある方が簡単にゲームそのものに深みっぽいものを与えることができるわけじゃし。まあ、本当にこのルールはいるのか?というようなまでに複雑怪奇になってしまったシステムも過去にはあるし、現在でも結構な割合で生まれてきてたりるの。軽量化の努力をしないというのは、まあ一種の信念と言えなくもないわけじゃが、ユーザーにとっては迷惑であることも多いのー」

「話がずれてきているような、核心をついているような……」魔王が困惑顔になります。


「自由度が高いように見せて、実際には行動を結構制限させるというごまかしの技術というか、バランスが大事なのじゃろうな」

「ぶっちゃけやがったかこいつ」タケルさんが言います。

「テーブルトークRPGというのは、普通の人間がやるゲームじゃぞ。思考する速度も数も、同時に展開できるセンサの種類も質も、処理できる情報の量も、情景を浮かび上がらせる想像力も、それなりのリソースを使用しなければ最低限の所までたどり着くのも難しい問いうことを、まずは認識しておくのじゃぞ。無限の選択肢を目の前に提示したらば、その選択に、無限のリソースが必要になるのが普通の人というものじゃ。けれども、自分自身の意志というものもそれなりに大切にしている価値観もあるからの、あからさまにこちらから制限させると、そもそも楽しく遊ぶという前提が崩れてしまうわけじゃ。つまるところ、どのようなルールで遊びますよと最初のうちに明言しておく必要があり、しかもそれには、十分なリソースをかけて、双方ある程度共通の認識を持つ必要があるということじゃな。それを手助けするのが、ゲームのシステムであり、その他ゲームにまつわる各種コンテンツの趣旨であるのじゃよ。少なくともそれを目指して作成することが求められておるのではないかなと、思うわけじゃ」

「結構面倒くさいように思えますね」トムさんがバッサリと指摘します。

「まあ、そこを感じさせないように、最初から例に従ってやっていけば良いようにしているシステムも多く生まれてはきておるよ」

「なるほど、進歩はしているのですね」あかねさんが感心します。

「それこそ、人の知恵じゃなぁ」


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