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79_動機はシンプルな方が好まれる傾向にあり。

 「自分の心が自分でもどうしようもない、とか神様に断言されてしまうと、絶望する方が多そうですよね」巫女のあかねさんがそう述べて、会話が再開されます。

「そう述べる神様自体が自分の欲求を制御できていないので、諦めのつくのではないでしょうか?前にも述べましたが、人間よりも接する情報量が多い、膨大でありますので、さらに自我といものが薄いといいますか、被影響力が高いとも言えるかもしれませんね」淡々と勇者を兼ねた神様なりかけのトムさんが述べていきます。

「立場的にも能力的にも高位にあるやつが、それ以上にくろーしてるんだから、お前も納得しとけや、っていうのは、結構乱暴な理論だぞおい?」神様の後継者であるところのタケルさんがぶった切ります。

「そういうような悩みとかは、遠い昔にもうやった後じゃしな、わし」テーブルトークRPGの神様がケラケラと笑いながら、かき回します。


 「自我というものが存在しないという事実は、多くの人々には受け入れがたいものだと推測しますよ?」あかねさんが指摘します。

「別に受け入れなくてもいいですよ。そういう思考が湧き上がることも抑えきれないでありましょうし。そもそも制御できない事例でもありますし」ケロッと言い放つトムさんです。

「まあ、議論しているわけじゃーねーからなぁ。俺らはそう認識しているぜっていう意見に過ぎないわけだしな」ニヤリと意味なく笑いながらタケルさんが言います。

「認識している存在が、神様っつーのが、引っかかるんじゃろーな。まあ、なら神様であることを証明してほしいとか言われるわけじゃが」テーブルトークRPGの神様が、長く白いヒゲに触りながら続けます。


 「どうして自身が自身である、つまり他者と私というような区別をしてしまうような生き物を創ったのでしょうかね?神様は」そう言えばそういう疑問もありますねというような、軽やかに、あかねさんが問います。

「もう消えてしまったこの世界の創造主の気持ちは、わかりかねますが、同時に真実に近い回答もそれなりに分かってしまうのが、神様になりかけている証拠なのでしょうかね?」トムさんが自問自答します。

「いーや、それほど難しいことでもないよな、その答えって?」タケルさんがちょっと呆れたように言います。

「一言で表せるの、つまりは、創る気になったから創ったのじゃろうて、つまりは趣味じゃな」テーブルトークRPGの神様が、なんでもないように答えます。


 「趣味ですか、絶句したいような回答ですね」苦笑するあかねさんでございます。

「まあ、そのように観測できるという程度ですけどね。そもそも、時系列に沿っていないのですよ。既に結果として、こういう形の生き物が存在していることが決定、観測されてしまったので、後からその理由が創られていくわけでしょうね、何度か同じような話をしましたけれども」トムさんが語り続けます。

「原因も過程も結果も同一存在というやつだからなぁ、神様的な視点から見ると」わかったようなことを言い放つタケルさんでございました。

「すべてはそこにあり、どこにもそれはあり、ゆえに一切どこにも無い、じゃったかの?全て飲み込んで、虚空へと放つ、無為の産物とかなんとか言っておったやつもおったの」遠い目をするボケた老人風の、テーブルトークRPGの神様でありました。


 「同一点に全てが存在しているのであり、それをどう見るかで世界が成り立つとかいう理論でしたか?」あかねさんが古い知識を思い出そうとします。

「そうだね、ありとあらゆる何かは、全て同時に存在しているわけであり、どうしてこれはこうなっているのかという問いかけは、根底からナンセンスなもの、ということですね。なぜなら、全てあるのですから、現象はそのうち何を見ているかの違いにしかすぎないわけでしょうね」何となく手で球を形づくるトムさんでございます。

「じゃあ、どうしてその方向からそれを見ているのかという疑問が出るだろ?でもそれもなぁ、全ての見方をしているその一つにすぎないわけであって、それだけがここにあるわけじゃないのだよな、どこかには全てあるわけで、特別な何かではないわけなんだよなぁ、他のそれが認識できないという見え方までが、セットになってるーつー感じ?」ちょっと頭が悪そうな説明を試みる、タケルさんです。

「まあ、自由に観察点を変更できないのなら、運命とか言ってもそれほど変わりがないというと、身も蓋もないわけじゃがな」台無しにしていくスタイルのテーブルトークRPGの神様でした。


 「世界の観察方向を変更できるのが神様というものなのでしょうか?」神様の定義をさらに深めようとするあかねさんでございます。

「入力された情報の影響によって出力される情報の方向性によるのでありましょうね、平たく言うならその気にさせるような趣味に合致させられるような動因が発生したら、世界は変わるでしょうね」肯定するトムさんです。

「その情報の影響というのは複数に見えちまう神様どうしの、干渉つーか、やりあうような?喧嘩みたいな?状況も環境のうちなんだよなぁ。こう趣味のぶつかり合いみたいな?」ニュアンスは伝わるでしょうか、というような面持ちで、追って発言するタケルさんです。

「情報の流れで行動を決定づけられる、装置のような何かが神様の本質に近いんじゃろうかの?」こう言えばわかるかの?という顔で伝えようとするテーブルトークRPGの神様でございました。


 「情報の全くない世界とかはどうなのでしょうね?このどうなのでしょうというのは、そういう世界にいる神様がどのように感じるかという意味ですが」あかねさんが新たな疑問を提示することに成功しました。

「入ってくる情報が何もないのでありましたら、それは出ていく情報も何もないでしょうね、であるなら、そこに神という概念は生まれないでしょう」何を聞いているのでしょうかね、この可愛い生き物は、というような目をしてトムさんは答えます。

「もし情報が無いということを情報として得られる神様がそこにいたとするよな?つまりそれはその神が、情報があったことを知っているという経験を持つってことだ。でだ、いつかそれをどこかで手にいれたということは、いつどこでもそれを手にいれることができるということであり、それができるのがまあ、神様ってもんなんだよな、なんで問題は無いわけだ」やや小ぶりの胸の前で腕を組みつつ、少し偉そうに答えるタケルさん。

「無いを知るには有るを知っておかねばならず、そして時系列は神にとって無視できる要素じゃからな。ゆえに、情報が全く無い世界に一柱神がおるなら、それは趣味に他ならないわけじゃろうて」なのでなんら問題は無いの、と意見に同調するテーブルトークRPGの神様です。


 「唯一神という立場を取られている神様もおられるようですが、そういう環境は作られるのでしょうか?」あかねさんがちょっと突っ込んできます。

「そういうように観察される世界もまた当然のようにどこかには存在していますね、全てあるうちのどこかですから、作られるとかどうとかでなくて、どこかにはあるのですよ」危なくなる前に事態を収拾しようと試みているトムさんでございます。

「こう、な、特定の情報の群れに対しては結構デリケートな話題らしいぜ、それ。化学反応次第では大爆発案件じゃねーかな?」ちょっと及び腰になってるのは様式美を大事にしているのでしょうかタケルさん。

「まあ、そういうのが好きである、神様が観察されることも当然あるわけじゃが、それがそうであるならもう議論とか湧き起こらんわけじゃしな、そうなっとらんならまあ、察しろ、というやつじゃろう」玉虫色の答弁を試みようとして、失敗している感触があるのが、テーブルトークRPGの神様であります。


 「結局、人には自由な意思がない、ということに絶望してしまえばいいのでしょうか?」あかねさんがさらりと、人類に止めを刺しに行きます。

「逆に考えるならば、自分でもどうしようもないくらいの思いを抱いても、絶望する必要はないとも言えますね。どのような情報の重なりや、反響があったのかは本人にもわかりませんでしょうが、それでもその結論に至ってしまったならば、それはもうどうしようもない現実ですので。それが倫理に反していても、すると決めたなら絶望する必要はなく、必然であったと誇れるであろうし、どれだけ否定的な情報が入力されてきたとしても、おおよそ善意とか誠意とか、優しい気持ちになってしまっても、それを押しとどめる必要がないと、開き直れるのは、これはまあ、幸せであると言えるのではないかな、と想像するんだけどね」トムさんが語ります。

「どーしてこんな考えに至ったんだ!って憤るよりは、なるほど、これが、そうか!って、腑に落ちて納得して、進んでいけるのは、まあ、本人には幸せなのかもな」タケルさんが頷き、続きます。

「わかっちゃいるけどやめられない、じゃの、ならいいんじゃないかの?」無責任に勧めてしまうのは、テーブルトークRPGの神様でございました。


 「さて、閑話はこのくらいにしましょうか、そろそろ本題に戻りまして、世界がどのように変質してしまったのか、観察してみてはいかがでしょうか?」あかねさんが議論の場を初期状態に戻そうと試みます。

「ずいぶん前に言いましたが、古い神様の結界を破壊されましたので、この世界は今かなりゆるい設定に変質しています」さらりとそれに乗っかって、話を進めるトムさんです。

「破壊したのはおめーだがな」鋭く突っ込むタケルさんですね。

「風通しは良くなったの、こう非日常が日常になった感じかの?わしも観察されやすくなったしのう」テーブルトークRPGの神様は好意的です。


 「幻想とされていた世界の住人たちとか、法則とかが、歩いて行ける距離に近づいたのでしたか?」あかねさんが表現を模索しています。

「そうですね、それで合っています。大規模な質量の移動は不可能ですが、個人かそれに準ずる環境で、それほどの物理速度が伴わなければ、好きに、不思議な世界へ訪れますし、来訪もされますね」にこやかに、あくまでもにこやかに語るトムさんです。

「惑星単位で閉じていた経済圏を大きく崩さない、つーのが意図だよな?」正直そこのところは助かった感があるけどな。と続けるタケルさんであります。

「幻想世界がわへの影響もあるじゃろうしの、こう文化侵略的なやつ?とか?」と、テーブルトークRPGの神様が、発言すると、お前がいいますかね?という視線と発言が、トムさんとあかねさんからされますね。


 「シャヨ国に、コンビニとか進出させていた神様に言われたくないのですが。まあ便利でしたが」あかねさんが呆れて言います。

「農業技術を中心に、こちらの世界のあれそれをしれっと取り込ませていましたよね、あと、お約束に代表される文化とか?今更気にしても仕方ないのでは?」トムさんが白い目を向けます。

「おいこら、何テキトーやってんだよ、異世界の神よ!ああぁん!」こちらの世界の神様後継者であるところの、タケルさん凄まれてますね。

「出自をたどると、こっち発祥の神様じゃよ、わし。まあ、あの世界はちょっと特殊じゃったからのー」さらりと流すテーブルトークRPGの神様でございました。


 「そういえば、ゲイリー・ガイギャックスというのでしたか、あなた様の本名?は」あかねさんぽつりと言います。

「そんなことも言ってましたね、英語圏の名前でしたが、前世は人だったんですか?有名な人だったニュアンスは感じているんですが」トムさんが首をひねりつつ質問を投げかけます。

「そうだ!そこんところもはっきりさせてくれねーかな!本人だったら、サインが欲しいしな!」俗なことを堂々という神様後継者でありますな。

「彼の概念も吸収しておるよ、個人としての記憶はプライバシーに配慮しておるがの。そう名乗ったはジョークじゃよ」サインは勘弁な、と言いながら、答えるテーブルトークRPGの神様でございました。


 「それでは、そのような世界に変質してしまったわけですが、私の勇者であるところのトムさまは、これからどうされるのでしょうか?」あかねさんが今後の予定を尋ねます。

「神様になる気はまだ起こりませんし、夢の中で訪れた世界?あかねさんがいる世界にも自由に行き来できるようになりましたから、もう暫く節度など気にせずに、好き勝手やって楽しもうかと?」当然ですね、という答えを返すトム様です。

「いや、好き勝手にはさせねーけどよ、つーか節度は守れや!」熱り立つタケルさんでございます。

「わしは、システムの監修を続けるかの?異世界からの、逆転生とか転移に伴うルールとかあると面白そうじゃしの、時代は現代異能者がブームとも聞くしのう」テーブルトークRPGの神様が微妙に古いのか古くないのか判別が難しい戯言を放っています。

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