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73_知ってるか?天地創造ってシンプルに7日で終わるんだぜ。

 「というわけで世界再生に合わせて、世界改変が完了したわけですが」新しいコーヒーを飲みながらトムさん(邪神)は言いました。

「行間で世界を滅ぼした後に、復活させるとか。自重してほしい!」叫んでいるのは、制服姿の女子高生でありまして、名前はタケルさん(神様の卵)でございます。

「行間?なんの隠喩ですかね?」不思議そうに首をかしげるトムさんです、すらっとした姿勢が美しいですね。光の当たり加減も計算し尽くされているような感じの絵になります。

「というか、改変?て何よ!また変態的なことをしでかしているのではないですか!」ばんばんと机を叩きながら大きく突っ込みます。

「変態とは失礼な?いや褒められているのでしょうかね?」うっすらと笑いながら言ったりするわけです。

「褒めてはいない、呆れている、とも違う?驚いているというのが近いのか?」自分の感情が不確かになって、内省しているタケルさんでございます。

「神様見習いを驚かせられるなら、僕も大したものだね」

「邪神かっこかりが何を言うんだろー」呆れているんだよこれは。


 カランコロンと、ドアベルの音がします。そちらに視線を向けると、巫女装束の黒髪美人がすっと店内に入ってくるところでありました。

「来ちゃった、というのが伝統なのでしょうか?勇者様」華やかな笑みと共に、トムさんへと話しかけていきます。

「何かのお約束なのかな?いらっしゃい、珈琲でいいかな、あかねさん」

「おごりならケーキセットがいいですね、トム様」容赦のない笑みを浮かべて、席に着くあかねさん(トムさんの巫女)でありました。

「ええとこの美人な方はどなたなのかな」ちょっといい顔をしているのはタケルさんです。

「僕の奥様です」

「妻です」双方、薬指にはまった指輪を見せてみます。

「ちょっといい女の人かなと思ったら速攻でこれだよ!みんなこいつの顔に騙されやがって!こんな世界は間違ってる!」激しい怒りに震える独り身のタケルさん(ちょっと、かなり、同性愛者)でございました。


 「というかいつの間にこちらの世界でも結婚したことになっているのかとか、そもそもこっちの法律上そんなことできないよねとか、いろいろいいたいわ!」突っ込んでみました。

「何を言う、客人法の範疇ですよ?神隠し法とも言いますが、世界の隣人との交友を有効かつ円滑に行うための慣例を重視した法律、では、基本、さまよい世界の法律と常識の範囲ないで擦り合せることが一般的なんだぞ?その上で、あかねさんの世界では僕はもう結婚しても問題ない存在になっているのだから、堂々と、夫婦であると宣言させてもらうよ」立板に水でございますトム様。

「それはまあ……そうか……? ん? んんんん? おい、俺の認識まで改変しようとしてないか?!」

「あ、かなり単細胞だから、簡単に推し進めらられるかと思ったけれど、意外と賢いですね」トムさんは感心したように言います。

「単細胞生物って、結構強固な作りをしてたりもしますよ?」何気にひどいこと言っている巫女様でございました。

「しょ、初対面から酷くないか君」ショックな表情のタケルさんでありました。


 「説明をしろ」

「よいですよ、でもだいたいはわかってますよね?」

「お前の口から聞きたい、いや本当は聞きたくないが、確認せざるを得ない!」苦悩の表情とか、しているように見えます。

「結論はすでに述べていますが、世界を一度壊して、作り直した時に、改変しました。具体的には、私がテーブルトークRPGの神様に連れて行かれた世界と、こちらの世界を無理なく一続きにするように、界を編み直しましたわけですね」飄々と答えるトムさんです。

「理由は?」

「向こうと行き来するのに一々、こちらの世界を崩壊させかけたり、再構成させたりするのが面倒臭いから?ですかね?」なぜか疑問系で答えるのがトムさんであります。

「行き来を諦めるという発想は、うん、ないだろうなー」納得したように。

「やりたいことがあって、できるだけの能力を持っていて、それに費やすリソースも揃っている状態で、何を躊躇しろというのでしょうか?」不思議そうに指摘します。

「普通は、倫理観とか常識とか良識が邪魔をするんだよ、この変態!」罵声も疲れているようですねタケルさん。

「ちょと、親友に対して変態ってひどくないですか?なんだかだんだんと、少し気持ちよくなるじゃないですかどうしてくれるんです?」

「真性だー!」頰に手を当てて叫ぶタケルさんでございました。


 「旦那様が変態……」

「ええとすいません、ショックでしたでしょうか、あかねさん?」

「うっとり」

「こ、い、つ、も、か!」

「今夜が楽しみですか?」あかねさんの肩を抱いて、引き寄せるトムさんです。

「(頰を赤らめて無言で頷きます)」

「やめろ、生々しい!」

「……失礼、未経験者には刺激が強すぎましたか?」

「嫌がらせのためだけに押し倒してやろうか、この野郎!」

「いつでもウエルカム……いや失礼、無理かな?こう、存在的に?」

「存在から否定かよ!それはそれで失礼だな、お前は!」




 「あと、その他にもいろいろやらかしただろ、お前。ちょと触っただけで、感じるのが、妙なくらい奇妙に正常に世界がはまりきっているというか、計算された混沌が形作られている、矛盾か整合性を持たされているような感触が、どうにも気持ちが悪いのだが?!」

「けっこ細やかに感じられるのだなぁ。ステージが上がっているのかなタケルさんの?」ちょっと驚きの表情のトムさんであります。

「不本意であるが、さっきまでのやり取りと、前任者の神様が存在消滅を確定させたので、神聖が押しつけられてきている感じだよ!」

「私のおかげですね」

「お前のせいだ!」



 「前に、すぐそばにあるのに歩いてはいけない、と、異世界を表現した作家がいた、らしんですよね」

「お前、サブカルとか全く興味も知識もないくせにどこからそんな知識を引っ張ってくるんだ?ちょっと不自然なくらいだぞ?」

「その手のことに詳しいというか、積極的にネタとして使ってくる神様だったんですよ、テーブルークRPGの神様は」

「……それって、サブカルの神様じゃないのか?」

「どうも、テーブルトークRPG自体、サブカルチャーのカテゴリみたいでして」

「そうなのか?いや確かにそれっぽいが」

「おそらくサブカルチャーの下位神?司る範囲が違うだけで上下はないとかは言っていましたが、この国ではあまり市場が大きくないので、権能もそれに比例した強さでしかないとか、ぼやいていたようです」

「まあ、そうだろうな。歴史的にも海外のそれをカウントしても半世紀ちょっとくらいの文化だしな、俺は好きだが」

「うん前に聞いたことがありますね」タケルくんに答える、トムさんであります。

「愛していると言っても過言ではないね!」力強くテーブルトークRPGへの思いを告げるタケルさんでございました。

「こんなところに信者がいるのに、すれ違いというのは悲しいのですね?むしろこんな方が巫女になってくださったら、私も楽ができましたのに」あかねさんがちょっと残念そうに感想をこぼします。

「さすがに、異世界の神様見習いとか卵とかが、あの神様の巫女になるのは無理があるし、勿体無いような気がしますがね?」ちょっと笑いながらトムさんが言いました。


 「正直こちらの世界へしがらみがなければ、俺がテーブルトークRPGの神様に見出された勇者になりたかった」タケルさん、それは本気の目ですね。

「……今からでも頼みましょうか?」トムさんが提案します。

「お前からの紹介というのは果てしないく不穏であるから断る、というか、いることがわかったならいずれ自力で会いに行くからいい!」

「わかりました。そこまでの覚悟でしたら。こちらも、狂犬みたいな女神が襲いに行くから、首を洗って待っていろと、忖度した意見を丁寧に伝えておきます」

「なんで、俺が、理不尽に、註しに行く流れになっているかな!」

「ナチュラルに、挑まれキャラなんですよね、そしてあっさり、爆散するようなイメージがあります、テーブルトークRPGの神様」トムさんが人差し指を立てながら言いました。

「本当ですね、今更ながら、雑魚キャラ臭が凄まじいです、勇者さま」ねー、とばかりに同意するあかねさんでございます。

「大概酷いな!この夫妻!」


 「話を戻すと、近くにあるのに歩いていけない世界があるなら、隔絶しているのに歩いてしかいけない世界があってもいいじゃないかな、という雰囲気で設定してみました」

「大味だなおい」トムさんの説明に大きく突っ込むタケルさんです。

「それほど珍しい発想ではないようですよ、こう、神話とかだと死後の世界へ歩いて赴いたとか普通にあるパターンですし」

「え、私死後の世界の住人なのですか?」あかねさんが驚きます。

「例えですね。なんとなく、気がついたらお互い行き来していたという程度で、狙って大規模な移動とかはできないけれども、個人ベースなら行商も可とか。昔話で、隠れ里に迷い込んだ、くらいの、ふわっとした感触で交流ができる、みたいなー」

「うわ、本当に感覚言語で設定してるんだ」ちょっとあきれ顔のタケルさんです。

「……そこに、いつからかあるような行政システムとか、交流とかが、不自然なく存在するように組み込んでみましたので。なんというか不思議世界が日常となって、違和感を感じなくなった、優しい世界?ですかね?」微妙な表現を心がけるトムさんであります。

「わかるぞ、というかわかってしまうんだ。こうどことなく狂気が蔓延してしまうような世界なんだな、こう、夢に迷い込んだような。でも、すべからく夢だとは気がつかないような」

「そうそう、覚めない夢を見続けている世界なわけです。……大丈夫ですよ、別に不自然に思考を誘導しているわけでもなし、自由意志も奪っているわけでもなし、ただ、法則と常識と認識がある点を境にして、未来へ向かってと、過去へと遡って再設定されているだけですから。個々の方向性とか運命?関係性とかは、トータルでは熱量の増減はありません……、多分?おそらく?まあちょっとは覚悟しておけ?」

「邪神の関白宣言とかシャレにならんわ!」タケルさん再び大激怒でございます。


 「りんごが落ちるのを見た物理学者の力学からはちょっと外れていますが、舌を出したブロマイドが有名な相対性理論を唱えた学者さんが活動していた時代あたりから議論されている、量子力学的にはギリギリどうにかごまかしがきくようにしています、ので、生活に密着するような法則とか、見た目の宇宙とかの相関関係とかは、変化がありません。重力加速度とか光の速さとかも変化していませんので、今までの科学の積み重ねが無駄になるとか、そこを含めて改変したわけではありませんが、空間と時間においての矛盾点は幻想方程式とかをでっち上げて、説明がつくように改変しておきました。まあ、既存の物理学をひねくりまわしてもなんとかなるようにつじつまは合わせておきましたので、解明即世界の崩壊とかにはならない……といいですね?」

「おい」表情が引きつっているタケルさんであります。

「そのあたりは、常時カウンターウエイトを飛ばして、調整するようにスケジュールを組んでありますから、まあ、まっとうに人類が終焉を迎えるまでは、持つと踏んでいるわけです。というか、飽きるまでは持たせるつもりではありますが」さらりとトムさん。

「人類の、未来を任せてはならないものに、船の舵を握らせてしまったような気がする……」

「別にタケルさんが握ってくれてもいいですが?」

「難所だらけの、しかも海図もない未踏の海で、船頭をするほど自殺願望はない!だから、こちらに舵を譲るなら諸々の情報ごとよこしやがりなさい!」


「ゆーはぶこんとろーる」

「あいはぶこんとろーる、って遊んでる場合か!」

「ぐっとらっく」

「だからやめろというに、というか、それは座席ごと放り出される展開だ!」どこから現れた操縦桿を放り投げながら、タケルさんが吠えています。


 「無意識にマイナーなネタで遊んでしまいましたね。これも神の力を手に入れた弊害でしょか?」首をひねるトムさんと。

「本当に嫌な影響だな!」即座に突っ込むタケルさんでございました。


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