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68_シンプルに神様って身も蓋もありませんよね?

 「とりあえず、サクッと、お仲間は復活させましたので」女勇者のシルバディさんのそばに、装備一式含めて個体情報を再現したお仲間を再生しておきます。この辺りのルーチンは自動化されているようですね、裸で復活とかだと、気まずいでしょうからね。

「あ、なんと言いますか、あまりにも軽く復活できてしまって、なんといったらいいのかわからないのですけども?」シルバディさんが喜んでいいのかどうしていいのか、困惑の表情です。

「いや、復活できたのだから、そこは喜ぶべきではないかな、ハニー」きらんと、白い歯をきらめかせた、絃楽器、ええとギターの小さなやつですかね?ウクレレくらいの大きさですが、何かこう漫談でも始めそうな軽さですけど、結構な美形男子声で、女勇者に言葉をかけてますね。

「蘇ってもその性格は直らないのですね、パンプキンヘッド。もう一回死んでみやがりますか?」有言実行とばかりに大きな槍を南京頭と呼んだ男に、振り下ろそうとしているのは、なぜかメイド服の少女ですね。クラシカルな、きっちりとした丈ですが、激しい動きをしても大丈夫なように、いろいろと工夫をしてあるようですね、スリットとか、ズボン加工とか。そこまでいじるなら、素直にコンバットスーツでも着込めが良いのではないかな?」

「ハル、落ち着け。かぼちゃを砕いても中身はないから意味がない。それより、事態の把握が大切だ」丸である。球とか言ったほうがよろしいか?直径が1メートル半ほどの球体に申し訳程度に手足が付いている。髭と、遮光グラス入りのゴーグルがチャームポイントでしょうか?迂闊に転がるとどこまでも転がっていきそうな、体型であるが、声は渋い、とことん渋い、ダンディな口調が板に付いている、体は回避できない坂道洞窟で転がってくるような形をしていますが。

「あのえのそのえー?」意味不明な文章を口走っていらっしゃるのは、猫さんである。表情、骨格は少女でありますが、その耳はぴょんと頭上に掲げてありまして、ピコピコと不安げに小刻みに動いていますね、尻尾の眺めでゆらゆら揺れています、ええと猫の尻尾が揺れているのは警戒しているからでしたかね?白黒ブチ猫で、全体的に小柄でかわいいのですが、胸はそれなりに見えますね。

「うん、もー、そんなぶりっ子演技はいいのよ、モノクロちゃん。すきあらばぶっこんでくるから、若い子は油断ならないわ。と、こ、ろ、で、あの愛しのウー様は何処へ、ほら隠さずに出しなさいよ」これは、なんでしょうか?ご飯を炊く御釜ですかね?資料映像で昔の民具とか、社会科で見たような?に目鼻がついて、黒く細い手足がついて、品を作って、裏声でお話ししていますね。ええと、まさかそのままおカマさんということでしょうか?

 あ、演技を指摘された猫少女さん、目の奥に剣呑な光を湛えたまま、可愛く笑って言いますね。


 女勇者に、南瓜頭、丸に猫、そして御釜、人外しかいないように見えますね。いや、女勇者は人間ベースですし、南京頭もかぶりもの……じゃないのかな、体型が丸いだけで一応人類に含めても良さそうな、でも骨格おかしいよねー、白黒猫少女はまあそういう種族もいるんだるかなで納得できるけれども、

「御釜、お前はダメだ」

「蘇ったら、いきなり否定されたわ!」


 「ああ、なるほど、元は、ゲームのキャラクターなんですね」トムさんは、納得した声で感想を言いました。

「はい、私たちは日本という国で、新しくリリースされた、オンラインゲームのユーザでして」

 ざっくりと説明をされると、バーチャルリアリティを売り物にした、自由度の高い、MMO、Massively Multiplayer Online でゲームをして遊んでいたら、いつの間にか現実世界に帰れなくなってしまって、女神と自称するおそらくはゲームマスターから、ここでの死亡は現実での死と等しくて、元の世界に戻るためには魔王を倒さなければならない、と一方的に告げられてしまったということだそうです。


 「へえ、珍しい体験ですねと」感想を言いますと。

「いえとある業界では珍しくないそうで」と女勇者が応えたりしてくれたわけですが、

「嫌な業界ですね……」と返すと、なんとも言えない顔で沈黙してしまわれました。


 「自キャラの設定はかなり自由度が高くてな。ワシは、こう見ててもドワーフでの、体型を究極に球に近づけてみたわけだ」髭面が笑ながら、葉巻をくゆらせて、遮光グラスゴーグルがキラリと光ます。

「この南瓜頭もフアッションだよー、どう、イカしてるだろー?実は種族がジャックオーランタンなんだからなんだけどねー、HAHAHA!」見方によっては、非常にクールと言えなくもないですね。

「メイド服こそ至高の存在でありますれば、槍術はほんの手習いで」クールなメイドさんが、素人捌きとは思えないような動きでやりをしまわれます。ええとどこにしまっているのか全くわかりませんね?何かのトリックですか?

「猫の獣人がベースにゃん、語尾は仕様にゃ、否定的なご意見は、丁寧に無視させてもらうにゃん」語尾にハートまーくが付きそうですね。


 で問題はこれですが、何でしょうか、こう真っ向から世界観を否定しているような存在は。


「ひどいわ!あたくしは付喪神という種族よ!れっきとした、プレイヤーが選択できるキャラクターなのよ!見てのとおり、御釜の付喪神なのよ、どうこの黒光りして太ましいボディ、そそるでしょう?」

「x指定のゲームだったのですね」トムさんの、冷静な声が響きます。

「失礼な、小学生にもプレイできる環境でしたよ。ギリギリの線を狙っていたプレイヤーが、デスゲーム化の果てに化学変化を起こして、踏み越えただけです。目障りなら消しますが?」冷徹な表情と、手品のように手元に構えた槍を見せつける、メイドさんでした。

「もう、ハルさんてば、お固いのだからー」

「黙れオカマ」

「違うわよ。何度も言っているでしょう?私は身も心も乙女、な、の」御釜のウインクという珍しいものを見させてもらいました、別に見たくもありませんでしたが。

「そうだよー、ハルちゃーん。御釜さんは、こう見えても、夢見る乙女で、料理上手な、女子力高い系の素敵な人なんだからー」

「ありがとー、ピーヘッドちゃん。お礼に今度また煮付けにしてあげるわー」くねくね蠢いています、ええと、御釜の淵から覗いているのは触手のようですね、もしかして照れているのでしょうか?

「きゃー、美味しく食べられちゃうよー、うれしー」よ、喜んでいるんですね、なんというか深い世界ですね、とトムさんは戦慄と共に、受け入れようと努力しかけて、瞬時に、その必要はないな、と冷めた目でスルーしました。


 「ええと、勇者うちのパーティメンバーがこんなので、正直すいません」真摯なまでに謝罪するシルバディさんです。

「真剣に謝られても、なんと返していいのやら困るのですが……」困惑の極みみたいなトムさんでありました。


 基本前衛を女勇者であるシルバディさんと、シンエンの騎士であるまん丸ドワーフ九さん、武装メイド……なんだろうそれ?と聞くと最近は珍しくもない職種だそうです……のハルさんが支えつつ、かぼちゃ頭が敵方の性能を阻害させるいわゆるデバフ担当で、神官であるブチ猫のモノクロさんが味方の強化と治療、御釜さんが、錬金術という技能で、遠距離ダメージや、各種パラメタ異常への対応やら、細いところを対応している、らしいと、なんとなく流れで説明を受けるトムさんでありました。性格とか言動はともかく、レベルと、プレイヤー能力はかなりの高さで維持されている、のだそうです。


 「信じられないですね」トムさんバッサリと切り捨ててみます。

「いえ、魔王に一番近いパーティというか、クランですので、本当ですよ!なぜか、初対面では全く信用されませんが」

「なぜでしょうかねー」

「不思議ですわよねー」かぼちゃ頭と、御釜が、顔を見合わせて、上半身を傾けて、声を合わせて言いました。

「元凶が何を言うか」冷たい目と口調なのはメイドさんです。

「いや、お前さんも大概、変だからな」丸いドワーフが突っ込みます。

「まともなのは勇者と私だけにゃん」

「黙れ腹黒」ごつい声ですね御釜さん。



 「それで、これからどうなるのでしょうか?」女勇者のシルバディさんが、尋ねました。

「そうそうそれそれ、いつもの女神ってどうしたんだよー?」

「性悪ロリっ娘の声がないと、なんだか物足りないわー」

「あ、あわわ、私何も言ってないから、言っているのは、いつもの二人だからー」

「口は災いの元というけれども、本体を含めて厄しかないのは、どういうことなのでしょうね、やはり一片も残さずに消さなければならないのでしょうか?」

「物騒な口調と、獲物はしまえってハルさん。話が進まない。……ここまでして、反応がないところを見ると、何かあったのかな?」


 「何やかんやありまして、あなたがたの担当をされていた女神は消滅してしまいました」


 一瞬間が空きまして、次の瞬間、その空間は歓喜の声とか叫びとか、床を打ち鳴らす音とかに支配されました。


「命を燃やして、歓喜の念を表していますね、ほんとなにやったてたんですか女神さんは」いえ詳細にわかりますけど、うん、喜ばれるのも無理ないですね、と、因果律シナリオを読みながら、納得するトムさんであります。


 「しかもあれを消してくださったのは、このトムさまなのですよ!」興奮したようにシルバディさんが追って言いました。

「「「「「天上級の感謝を!!」」」」」

「流行ってるんですか?それ」


 「ええと、これからですが、どうしましょうかね?」トムさんがちょっと困惑して言います。

「どうとは、何でしょうか?トムさま」

「様付けは……まあ状況的に見て仕方ないですかね?まあ、それほどへりくだる必要はありませんよ、直接的には関わりのない存在ですから」

「恩人ですから、敬意は表させてください。お聞きしますが、トムさまはどこまでできるのでしょうか?」女勇者さんが尋ねます。

「仕様的には、どこまでもできそうですかね?契約的とか、周囲の調整とか外交的な面から見ると……、結構無理っぽいこともできそうではありますが……」

「お、おお。ええと、具体的にはどれだけのことができのだろうか?」丸いドワーフが、四角く尋ねます。

「逆に聞きますけど、どこまでして欲しいですか?」

「ゴロゴロと怠惰な生活をしている間に、すべてまるっと収めくれて、悠々とした残りの人生を保障して欲しいですね!」元気に言い切るかぼちゃ頭です。

「できますよ、すぐにやりましょうか?」

「堂々と情ない提案をしないでください」静かに切れるメイドさんです。「……て、できるのですか!?」ワンテンポ遅れて驚いたりしています。

「上げ膳据え膳の上、欲望の赴くまま怠惰の極みのバーゲンセールのような生活を送り続けてですね、目標を見失ってすべてが虚しくなり、周囲の刺激に対して全く反応できなくなるくらいまでのレベルで、精神的にお亡くなりになるまで、きっちりサポートさせていただくことも可能ですが?」にこやかに。

「いや、そこまででなくてもいいです、ええと、ほどほどがいーかなー」ちょっと冷や汗をかいているかぼちゃ頭さんでございました。


 「もしかしてもう魔王を倒さなくてもいいのですか?」シルバディさんが真剣な顔で問いかけます。

「はい、こちら(トムさん側)で処理しても構いません……よね?」

「誰に聞いているのです」

「ええとハルさんでしたっけ、今回のトラブルを含めて、この世界の何やかんやをどうにかしようとしている神様です、私をこの世界に連れてきてくれた存在でもありますね」

「神様って複数存在するのですね」女勇者がつぶやきます。

「よく考えたら、現実世界でもGMは複数いますものね」御釜がフォローします。


 「つまり、神さま本人?ではないわけですね、トムさまは」

「最初に言っておいたでしょう。お使いですよ、天使とかいうと理解しやすいですかね、もしくは眷属ですかね?まあ、制限つきで神さま=GMの権能が使用出来るイレギュラーな存在とか思っていれば、それほど外れていないような気がいたします」


 「と、連絡取れましたね、ええと、あなたがたを含めて、MMOのゲームに巻き込まれていて、まだ生き残っているプレイヤーを現実世界に戻すことについては問題ありません。全員が帰還することを選択して、魔王退治を諦めるのでしたら、その場合は、トムさんが処理しておいてください、って、私がするんですか?丸投げですね、私神さまの下請け会社ではないのですけど……」

「えと、いいんでしょうか?」

「……別途、私に対して報酬が出るようなので、問題なさそうですね、このあとで契約書てきなものを切っておきます」さらりと言い切るトムさんでございました。


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