06_シンプルな怪物(モンスター)
「ということで、また一晩神殿で過ごすと、経験点が頂けたわけですが、すごかったですね巫女さま?」
「はい、魔法の束縛を、ああ利用するとは、正直想像の埒外でございました、勇者さま」
「やはり、新しいことに挑戦すると、経験点が加算されやすいみたいですね」
「どこまで行ってしまうんでしょかね?」
「まあ、身体はともかく、精神が治らなくなると困りますから、そのあたりは注意していきましょうか?」
「続けるのは、決定事項なのですね。はい、覚悟は決めましたとも」
「怪物との戦闘よりも真剣に見えるのは気のせいでしょうか?」
「累積経験点が34になりましたね。とりあえず今日も戦闘を繰り返して、コイン稼ぎと、レベル上げにいそしむことにしましょうか?多少マンネリではありますが」
「そこで朗報じゃよ、勇者どの」
「王様?何かご用ですか?」
「何、神様からのお仕事が、発生したので伝えに参った」
「いやそこは玉座の間とかに呼び出しましょうよ?」
「今玉座の間では、王妃が梅干しの仕込みをしているので、スペースがないのだよ」
「すごく斬新な使用方法ですね」
「『お仕事:畑を荒らすあばれイノシシの怪物を退治しよう。
(報酬:ぼたん鍋 経験点:16点+イノシシの経験点10点)』
ですか、なるほど美味しいですね。あばれイノシシのレベルは10ですか。どのくらいの強さなのでしょうか?」
「イノシシの強さは、王妃様がよくご存知ですね」
「そうなのですか?巫女さま?」
「よくさばいていましたから」
「ワイルドなご婦人ですね」
「ということでお話を聞きに来ました王妃さま」
「はい王妃です、マルガリータと呼んでもよろしくてよ?」
「ええと、そのあたり、この国のロイヤルファミリーとの距離感は相変わらずどのように取れば良いのかよくわかりませんが、ともあれ、あばれイノシシ 10レベルの怪物の情報を聞きにきました」
「まあ、ビジネスライクね。いいですよ、 ちから はやさ がんじょう は結構強いですね。とくに ちから は、15くらいありますよ。さらには、専門技能の 突撃:50% という、体ごと突っ込んでくる攻撃では、 ちから の値が、30扱いになりますから、それは喰らわないようにするべきでしょうね」
「それは強そうです。ええと魔法は通用しますか?」
「所詮元はイノシシですし、かしこさ はほとんどありませんし、有効ですよ」
「なら、問題なさそうですね、ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして。そうそう、あばれイノシシを倒した後の戦利品、私のところに持ってくれば、美味しく料理してあげるからね、頑張りな!」
「うわ、肩を叩かれてしまいました。というか結構強いちからですね。わかりました、その時は、持ってきますので宜しくお願いします」
「まあ、結果は予想通りなわけでございますけれど、どうです巫女あかねさま?」
「正直、あばれイノシシが哀れになるレベルですね。勇者トムさま」
「戦闘開始直後に、魔法の束縛を使用すると、 はやさ が0になって動けなくなりましたものね、戦闘記録を確認しても、
・あばれイノシシが現れた。
・勇者の選択 たたかう。
・勇者は、魔法の束縛を唱えた。
・あばれイノシシの はやさ が 12から0に減少した。
・あばれイノシシは動けない。
・……エラッタ出しますね。
・次の戦闘からは、はやさが0になっても怪物と勇者は行動できることにします。
あとは、結構 がんじょう も高いし、HPを多いので、時間を短縮するために、魔法の矢の連打して、おしまいでございました。いや美味しい仕事でございました。経験点は合計で26点いただきました。
累積経験点が、60点になりましたね、あと4点で、7レベルですね。
MPの現在値が、8になりました」
「神様からエラッタが出ましたね、やっぱり強力すぎたようですね、束縛は、勇者さま」
「 はやさ が0になると動けなくなるのは、やはり強すぎますよね。魔法が効く相手だと、数手で完封できますし」
「怪物と勇者以外には、そのままの仕様なのですね?何故でしょう?勇者さま」
「昨晩の痴態が神様に受けたからじゃないですかね、あかねさん」
「……あの神様、本当に、ひどいですね。趣味に走った、いい仕事をしますね」
「同意はしておきます」
「コインは10枚ですか、このコインの数は怪物のレベルと等しいのでしょうかね?ついでに経験点もレベル分入るみたいですね」
「シンプルさを追求していますけど、少し実入りが少ないですね。特別な怪物を用意して、報酬を増強している可能性もありますけれども、どうでしょうね勇者さま?」
「そのあたりのバリエーションは欲しいですね、神の手帳にて要望を上げておきます」
「能力値も、レベルと同等の平均に、レベル分のボーナスを振り分けしたくらいですかね?レベルが分かれば、大体数値が想像できるのは、便利ですね、巫女さま」
「どこまでもシンプルにというコンセプトなのでしょう、勇者さま」
「あばれイノシシの死体ですが、光って消えなくて、一つの水晶みたいなものに変化しましたね、これは何でしょうか巫女さま」
「これは、怪物のアイテム化とか素材化という現象ですね。透かして見ると、文字が見えませんか?勇者さま」
「どれどれ、なるほど見えますね、ええと、あばれイノシシのお肉、ですか、これは結局何のですかね?」
「この素材水晶は、その素材を利用できる職業の方に渡すと、適切に処理してくれるのですよ、戦闘の度に、怪物を解体して、素材を確保するのはシンプルでありませんので、こういう形で簡単に処理するようにした、とのことですね、我が神によりますと」
「なるほど、では、これは彼女に渡せばよろしいのですね、巫女さま」
「ということで、王妃さま、あばれイノシシのお肉、素材水晶で手に入れましたのでお持ちしました」
「おお、勇者よ、美味しいお肉を手に入れるとは素晴らしい、ですね。王妃である私は、王室でも指折りの調理師でもありますので、まこと見事に、ご馳走を作成してあげましょう」
「うわあ、すごく嬉しそうな顔をしていますね、王妃さま」
「私、純粋にお肉好きですし。あと、怪物のお肉、素材水晶になると、熟成とかちょうどいい加減になっていますから、調理しやすいので、助かるのですよ」
「ちょっと、調理過程を見てもよろしいでしょうか?純粋に気になります」
「いいですよ、
まずは、部位ごとに水晶を分裂させます。内臓も的確に処理をすると食べられてますからね。
毛皮も分けておきますが、その手の職業ではないのでこれは最低限の処理ですね。あとで防具屋さんに持って行きます。
燻製にする部位とかも外して、肩、やらロースやら、このあたり使用します。このように、必要な素材を水晶からまないたの上に、必要な量だけ戻しまして、血抜きもされているのですぐに切り分けられます。ええ、熟成具合もいい感じですね。
水晶のままですと、半永久的に保存できますから、便利ですよ?
素材に戻すことは、専門の技能を持っている職業でなければやれませんけど」
「ええと、マルガリータさまは、王妃ではありませんでしかね?」
「王妃である前に、家計を預かる主婦であり、前提として調理師ですから、私は」
「いろいろ突っ込みどころが多いですね、このロイヤルファミリー」
「玉座の間で、ちゃぶ台を囲んで、牡丹鍋とかこれは本当にファンタジーな世界なのでしょうか、認識が大きく揺れつつあるのではないかとか、思ってしまう勇者です。物語とかほとんど読んだことがないので、よくわからないのですが、これは何か違うのではないのでしょうか?」
「細かいことは良いのですよ、今は、ただ、この肉の魅力に溺れるべきでありませんか?勇者さま」
「まあ、巫女の あかね さんがいいなら、それでいいのですが、あ、日本酒もあるのですか?いいえ一応未成年ですので遠慮しておきます」
「こちらでは、成年設定は自己申告だからの、何歳からでも、「私は大人です」って言ったらまかりおるぞ?勇者よ」
「そうなのですか王様。そのあたりはアバウトなんですね」
「鍋をつつきながらの話題としてはどうかとは思うのですけど、この世界の怪物て、なぜに単独で、勇者に襲いかかってくるんでしょうかね、巫女さま」
「ああ、それは、テーブルトークRPGの神様が、今回、勇者さまが、単独で旅をする設定ですので、合わせて、ちょうど良いように調節している結果だそうですよ、いわば神の御技ですね、勇者さま」
「左様ですか。いや、数で押されたら結構苦労しそうだなと思っていたので、懸念が払拭されて、お肉がさらに美味しくなりました」
「そうですね、ただ、別の神様の領域に巻き込まれたりすると、その法則が乱れる可能性もありますね」
「いきなり不安な情報ですね」
「まあ、テーブルトークRPGの神様は勇者トムさましか、対応していませんから、複数の勇者さまとか異世界転生、転移組をまとめて多数管理している他の神さまたちの影響力とは、段違いのレベルで、深く関わっていますので、むしろ、その相手側の法則を曲げてしまうことの方が、ありそうではありますよ?」
「そう聞くと、すごい神様みたいに思えますね、あの神様が、ねえ巫女さま」
「少数精鋭という概念でありましょうね。テーブルトークRPGの神さまが、応援する勇者トムは独りだけなのです」
「……まあ、寂しさとか孤独な状況とかは、安全の為に我慢しますよ。今は、あかね さんもいますし」
「ありがとうございます」
「あらあらまあまあ、いい雰囲気ですね、王様」
「そうだねぇ、若さとはいいものですね、王妃様」
「食事が終わって、神殿に戻ってきましたね。そうそう、巫女様、HPとMPは一晩休むと全回復するのですね」
「ええ、おいたをしなければ、そうですね」
「……眠りましょうか」
「……ねむらせてくださるのでしょうか?」
「太陽が黄色ような気がします、大丈夫ですか、あかね さん」
「……流されているのでしょうか?急流下りが好きになりそうです トム さま」
「まあ、いろいろとして、楽しんでレベルが上がるのでしたら、問題ありませんね。累積経験点も2点増えて、62点になりましたし」
「さすがにもう、新しく試せそうなことはなさそうですね、トムさま」
「そんなとんでもありません。まだまだ知識はありますので、少しずつ、疲れがたまらない頻度で試しましょうね?あかねさん」
「トムさまの笑顔が、少し怖いですね。ちょっと楽しみです」
「エラッタ対応が終わっているみたいですね、魔法の束縛 後もウゴウゴと動いていますね」
「しかし、オオガラスが地面をのたくっているのは、シュールですねー、勇者さま」
「さすがに、最低速度になると飛べないみたいですね、それでいて、鋭い嘴の攻撃とかは普通に届くとか、違和感のあるビジュアルになっていますけど?」
「私も初めて見ました、地を這うカラスなんて、勇者さま。しかし、能力値の差が、大きいですから、ダメージになっていませんね」
「そうですね」
「あ、これはしまったですね、ダイスで、100を振ってしまいました」
「きゃあ、血が頭から吹き出てますよ!勇者さま」
「頭が、嘴で貫かれたように痛い、いや、貫かれているわけですが、回復、回復。
・怪物の攻撃を回避する判定で100を振ってしまうと、大失敗です。
・がんじょう の値も、鎧などの防御点も無視され、0と換算します。
・怪物の攻撃は、最大の値が自動的に選択されます。
なるほど、”01”での大成功があるので、これでバランスを取っているわけですね、見事な一撃でございました。格下でも油断だけはしないほうがよろしいですね。……HPをこまめに回復をしておく必要がありそうです。まあ、HPを多めにしておけば、何度も連続して100を振らなければ大丈夫ですけどもね」
「……なんだかフラグを立てたような気がしますよ、勇者さま」
「旗がどうしたのですか?巫女さま?」
「レベルも1つ上がりましたし、MPも少なくなてきましたから、今日はここまでにいたしましょうかね?
職業:勇者
レベル:7
累積経験値:83 (次は128でレベルアップします)
・ちから 17
・はやさ 17
・かしこさ 17
・がんじょう 17
・HP:34/34(回復魔法で全快しています)
・MP:5/17(魔法を使用したので減っています)
順調ですね、コインも21枚手に入りました。
今までの合計獲得数は、52枚ですね。半分国に納めるので、26枚使えるわけですか、最初の50枚と合わせて、
現在の所持コインは76枚ですね。
素材水晶も、オオガラスの風切り羽根、とか、スライムの核、とか落ちましたね。これはどこかで、使用できるのでしょうか?」
「国、随一の道具屋か、同じく随一の武器屋兼防具屋兼鍛冶屋に持ち込めば、何かしらの材料になると思いますよ、勇者さま、まあ、随一というか、唯一なわけではありますけれども」
「はい、わかりました期待しないで、後で赴くことにいたしましょう」